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扉の先には真っ直ぐな通路があり、その先にはエレベーターがあった。
関係者しか知らない秘密のエレベーターだ。
「と、取りあえず乗ってみましょうよ」
モミジ先輩はエレベーターのボタンをポチっと押した。
するとエレベーターの扉が開いた。
「お、おい。これを作動させたら流石に侵入がバれるだろ」
僕らが乗り込む中、マモル先輩は躊躇している。
「でももう動かしちゃったし、後には引けないわよ。なんなら犬飼先輩、一人でそこに残る?」
モミジ先輩は半眼でからかうように言った。
「い、いや待て、俺にはお前らを守る義務が……っ」
独り置いてかれそうになったマモル先輩は慌てて中へと乗り込んだ。
マモル先輩って意外と寂しがり屋だにゃあ……。
エレベーターのボタンは二つ……。
一つは此処の階で、もう一つはこの先に繋がる場所。
選択肢のないボタンを迷うことなく押し、僕らはエレベーターに身も運命も委ねた。
感覚的にエレベーターが下へ下へと降りて行くのが分かる。
このイコンモールは店内三階建て、地下駐車場と屋上を合わせても精々五階相当。
それでも随分長く降下しているように感じる。
恐らく地下へと向かっているのだろうと、口には出さないけど皆そう感じたに違いない。
両腕を背中に回したまま壁に凭れて退屈そうな桔音くんの緊張感のない口笛だけがその場に響いていた。
暫くしてチン! という音と共に扉が開いた。
一応、僕ら同好会とマモル先輩は身構えたけど、そこには誰もいなかった。
ただ、建物の中を通ってきたとは思えない剥き出しの地盤、洞窟の中のような世界が目の前に広がっていた。
暗くてひんやりとしていて蝙蝠が住んでそうな空間ニャ。
「どう考えても普通じゃないわよ、ここ~……」
いよいよこのショッピングモールが、カルト教団の拠点の線が濃厚となり、モミジ先輩は両腕を抱いて身震いしていた。
真っ暗だけど足元に蛍光灯が通っていて、歩行には問題ない。
この先、何があるか分らないし、僕らはなるべく音を立てないようゆっくりと警戒しながら歩いた。
ただでさえ、不法侵入だし、捕まれば何をされるか分かったもんじゃないニャ。
暫く進むと、前方でぼんやりとオレンジ色の灯が洩れているのが見えた。
そして岩壁に映る複数の人影のシルエット。
確実に人がいることに、僕らは一気に緊張が走った。
「……行ってみましょう!」
小声で僕は指示を出し、身を低くしてそこへ向かった。