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「桔音くん、お願い」
僕は扉を開けてもらうよう桔音くんに指示を出した。
前回のドア一枚とは違い、二重扉とシャッターが下りていたが、桔音くんは両手を前に翳して呪文を唱え、何もない壁から魔法の扉を出現させ、そこに僕らを招き入れた。
「お、おい! 何だこれ、どうなってんだ?」
信じられないものを目の当たりにしてマモル先輩は動揺した。
鬱陶しいけど、このままこの人、外に放置したら騒ぎになりそうだから、僕はマモル先輩を無理やり中へと押し込んだ。
魔法の扉をくぐって中に入ると、その扉はスッと消えていった。
何度見ても桔音くんの魔術には見惚れてしまうニャ。
「う、嘘だろっ? 夢じゃないよなっ?」
消えた扉にマモル先輩は呆然とした。
「これで犬飼先輩も不法侵入の共犯だからねっ! 観念してアタシ達に付き合ってもらうわよっ!」
モミジ先輩はマモル先輩に向かって勝ち誇った笑みで脅しかけた。
「うぅ……ちくしょう……なんも言えねぇ~……っ」
僕らはマモル先輩を黙らせることに成功した。
ついでに中にいるであろう警備員、監視カメラ、マモル先輩の無線機など、全て桔音くんの魔力で封じ込め、僕らは順調に階を進めていった。
まるでスパイ映画みたいでワクワクするニャ~。
そして難なく、例の秘密の扉へと辿り着いた。
改めてみると、何とも頑丈そうな鉄の扉に、赤い色で例の紋様が描かれている。
「間違いない、燉一教のマークだ。強力な魔力で扉を閉めているな」
桔音くんは尖った真っ黒い爪を持つ指で、秘密の扉の紋様をなぞるとニヤリと笑って言った。
「だが、こんな子供騙しのような魔力、僕に通用するもんか」
桔音くんは目を赤く光らせ、扉に右手を翳したまま呪文を唱えた。
すると、鉄の重い扉が強い力で吹っ飛ばされて派手な音を立てて倒れた。
僕らは思わず心臓が止まりそうになった。
今の音で誰かに気付かれてたらどうしよう……って。
でも桔音くんはそんなことお構いなしで全く気にしていないようだ。
「どうしたの? 早く行こうよ」
すんごい極悪人のような顔で笑う桔音くんに僕は冷たい汗が流れるのを感じた。