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偶々なのか、割と年中無休を謳っているイコンモールだけど、今日は珍しく臨時休業だった。
でも、ここで引き下がるモミジ先輩じゃなかった。
「侵入するわよ!」
モミジ先輩は、いつになく目をギラギラと輝かせて白い歯を見せて笑んだ。
正直、僕はこんな狡賢そうな恐ろしい女の子、見たことがない。
すると、背後から再び聞き覚えのある声が降ってきた。
「何処に侵入するって?」
流石に僕らは心臓が止まりそうになった。
そこには、気配を消して僕らの後を付けていたらしいマモル先輩の姿があったのだ。
「ま、マモル先輩……っ、付いて来てたんですかっ?」
「どうもお前ら、怪しいと思ってたんだよな」
「キーッ! 尾行するなんて最っ低!」
モミジ先輩は古いギャグ漫画のように地団駄踏みながらプンスカと頭を噴火させた。
「巡査さん、僕ら今回のミイラ事件とこのイコンモール、何か関係があるんじゃないかと思って調べてるんです」
これ以上、誤魔化すのは無理だと判断したのか、加枝留くんがマモル先輩に例の写真を見せて言った。
「ミイラの押し入れの壁に描かれているマークと同じものをこのショッピングモールで見掛けたんです」
「押入れの落書きなら俺も勿論見たが、そんなただの落書きのマークに大した意味はないだろう」
すると、遠目から写真が目に入ったらしい桔音くんが徐に言った。
「そいつは『燉一教』の紋章だ」
「ドンイツキョー?」
「所謂、カルト宗教だ。僕ら魔術師達の闇の世界では知られた存在だ。目障りではあるがな」
「カルト宗教……?」
聞いたことないけど、未だにそんな怪しいのがいるんだ。
「信者はただの一般人だろうが、教団のトップが炎の魔術師として頂点に君臨するサム・スギルという名の魔術師だ」
サム・スギル……、さむ・すぎる……、寒すぎる……?
その名前ダジャレなの?
「お、おい。さっきから何の話をしてるんだっ?」
話についていけてないマモル先輩を無視して僕らは話を続ける。
「え、そんな凄いヤツなの? ちょっとキツネ野郎、こちとら用心棒がアンタで大丈夫なんでしょーねぇっ?」
「おい女、誰に向かって言っている。僕は天才魔術師だぞ。魔力はトップレベルだ」
「その燉一教っていうカルト宗教の紋章があったってことは、ミイラの犯人もイコンモールも教団っていうことですね」
「そ、そういうことだね加枝留くん……ってことは、『シラタク』も信者なのかな?」
「やだっ! 変なこと言わないでよコバンっ! イメージ崩れちゃう!」
「お、おい! お前ら! さっきから俺を無視して話を進めるなっ!」
さっきからマモル先輩が五月蠅いけど、とにかく今はこれ以上、人に見つからないように早いとこ中に侵入しないと……。