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僕らはまるで小学生の登校班のように、はたまたロールプレイングゲームの勇者御一行様のように縦一列に、モミジ先輩、僕、加枝留くん、桔音くんの順で歩いていた。
先頭を歩くモミジ先輩は背後を歩く僕らを後目にチラリと一瞥すると、不満そうに独りブツブツと呟いていた。
「何でこうも小男ばかりが集まるのよ……ははん、類は友を呼ぶのね、コバン」
僕ら三人がほぼ同じような身長なのがモミジ先輩は気に入らないらしい。
……僕だって好きで小さい訳じゃない。
「オイ、オマエ。さっきから何をブツブツ言っている?」
後方から桔音くんの高慢そうな声が聞こえる。
「言っとくけどアタシは先輩なのよっ、敬いなさいよっ、これだからキツネ目の男にろくなヤツはいないのよっ」
先輩……それはちょっと偏見じゃ……。
なんだかんだで僕らは例の無人アパートに到着した。
日はすっかり暮れて、丁度、闇に紛れるには十分な状態にはなった。
桔音くんの家から歩いて十五分くらい掛かっちゃったな。
急がないと。
僕らは周囲を注意深く見渡し、あの管理者のオジサンが出てくる気配がないのを確認してからアパートに近付き、僕がカメラで撮った部屋の玄関に来た。
「さあキツネ目、出番よ。この扉を開けて頂戴!」
小声でモミジ先輩が桔音くんに指示を出す。
朝飯前だと言わんばかりに溜息混じりの嘲笑で桔音くんは人差し指をちょんと鍵穴に向けながら呪文を唱えた。
ドアノブからカチャっと音がして扉が自動的に開いた。
桔音くんの魔術に驚きつつも目撃されないように急いで僕らは中へと入ってドアを閉めた。
「……やったわ、侵入成功ね!」
中は真っ暗だけど電気を付ける訳にはいかない。
懐中電灯も勿論、アウト。
部屋から明かりが漏れちゃうと、外にいる人に僕らが中にいるってバレちゃうからね。
幸い、今夜は月が明るく、夜目が利く。
僕らは恐る恐る血痕が見えた窓側の畳の部屋へと向かった。