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僕らは早速、学校を後にし、桔音くんの家へと向かった。
放課後だし、彼はもう帰宅しているだろう。
桔音くんはどの部活にも所属していない。
それどころか、どのクラスにも入っていない。
全てがシークレットで、存在自体が神輿高校七不思議の一つと化していた。
生徒会や教師、校長やPTA会長よりも権力がある、なんて噂まで飛び交うほどだ。
個室で個別授業を受けているという話はあながち嘘じゃなさそうだけど……。
「ところで桔音くんの家って何処か分かる?」
僕、何も知らずに出てきちゃったけど。
「稲荷という名前は宵々町では一軒しかありませんから」
加枝留くんは町内の地図帳を見ながら案内をしてくれた。
「ここですね」
到着したのは、住宅街の外れにある、古びたお城のような石造りの豪邸だった。
豪邸だけど、庭の木は枯れ果て、無数のカラスが留まってギャアギャアと不気味に鳴き、外壁にはまるで見張りのように一匹の黒猫が金色の鋭い瞳で此方をジッと見下ろしている。
屋敷を背景に、空がこの世の終わりのように真っ赤に染まっているように見えるのは、たまたま夕方に訪れたせいだろう。
来るものを拒むような檻のように細い門戸の前でインターホンを鳴らす。
「あ、あの、僕ら神輿高校のオカルト同好会の者ですけど……桔音くんいますか?」
インターホンに顔を近付けて向こう側にいるであろう無言の相手に声を掛ける。
暫くすると門が自動的に開き、一人の黒い学ランを着た少年が赤い本を抱えて姿を現した。
人間離れしたような青白い顔にやせ細った小柄な体。
釣り上った眉と、瞳孔の小さな目つきの悪い瞳で、常に口端を上げて嘲笑を浮かべている。
彼が、稲荷桔音くんだ。
「何の用だ?」
落ち着いた、しかし高圧的で偉そうな物言いは、彼の特徴でもあった。