12
翌日、僕ら三人は朝一番に古いカメラのネガフィルムを持って写真部を訪れた。
「すみませーん」
僕は、写真部の部室に入って、部長である日暮屯菩先輩に声を掛けた。
日暮先輩はきっちりとしたセンター分けの黒髪でもやしのような細身の長身に渦巻き眼鏡をかけている。
「うげっ! またお前達かっ!」
根はとてもいい人そうなんだけど、僕らオカルト同好会を見ると、いつも拒否反応を起こすのだ。
さしずめ同じクラスのモミジ先輩が大の苦手なのだろう。
なんとなく気持ち分かるけど。
「何よその態度―?」
モミジ先輩は怪訝な顔で日暮先輩の顔を覗き込む。
ますます怖がらせてどうすんですかモミジ先輩っ!
「ななななな何の用だねっ」
「あの、いつものことですけど、また写真の現像をお願いしたくて……」
僕は日暮先輩にネガフィルムを手渡した。
僕ら同好会と違って、この写真部は学校から承認を得ている正式な部活動で、暗室や機材も全て揃った高校の部活動としては本格的過ぎるくらいの凄い部なのだ。
そして僕らはある意味、お得意様のような関係だ。
まあ、ありがたくはないみたいだけど。
「お、お前らくらいだぞ! 毎回毎回、頼みに来るような厚かましい奴らはっ!」
写真部は自分達で撮った野草や野鳥、風景なんかを自ら撮影して現像して楽しむクラブであり、よその部の写真の現像の請負をする義務はない。
「ま、いいじゃないの~。そうケチケチしなさんなって!」
モミジ先輩は女王様のように机の上に座って、短いスカートで足組みをして言った。
「うっ……」
モミジ先輩に苦手意識のある日暮先輩は言葉に詰まらせながらも、その晒された太腿に頬を赤らめた。
ま、モミジ先輩、ルックスだけは抜群に良いからなぁ……性格は残念だけど。
「どれくらいで出来ます?」
「そ、そうだな。液や乾燥の機材もすべて揃っているし、昼休憩の間に取り掛かるから放課後にでも取りに来い」
「分かりました。ありがとうございます」
僕は日暮先輩に頭を下げた。
「じゃ任せたわよ! 眼鏡トンボ! 心霊写真っぽくなるように仕上げて頂戴!」
「誰がそんな細工するかっ」
モミジ先輩の言葉など無視して日暮先輩は写真部のプライドに掛けて、きっと綺麗で完璧な写真に仕上げてくれるだろう……僕ら的には有難迷惑だけど。