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そして僕らは、そのままマモル先輩に導かれるようにその場を後にした。
内心、僕はオジサンにカメラの存在を気付かれなかったことに安堵していた。
取り上げられたら怪奇新聞の記事が書けなくなっちゃうとこだった。
「しっかし、お前ら一体、あんなところで何やってたんだ?」
自転車を押しながら僕らに合わせて歩くマモル先輩は、呆れたような口調で訊ねてきた。
「無人アパートで心霊写真を撮ろうと思ったんです」
「心霊写真?」
「僕らオカルト同好会ってのに入ってるんです。それで新聞を書いてて……」
「まったく……たまたま俺があそこに居合わせたから良かったものの……もう馬鹿な真似はやめろよ?」
マモル先輩は見送りは十分と判断出来る区域まで僕らを送り届けると、そう言い残して颯爽と自転車を漕いで去っていった。
「フン! 何よ! 子供扱いしちゃって!」
モミジ先輩はマモル先輩の背中に向かってあっかんべーをしていた。
「それより、ごめんね? 加枝留くん。折角の入部初日でこんな目に遭わせちゃって……」
何だか申し訳なく感じて、僕は新入部員の加枝留くんに謝った。
「別にいいですよ。スリルがあって面白かったですし」
加枝留くんは相変わらず眠たそうな眼をしているが、口元はうっすらと笑んでいるように見えて穏やかな表情だった。
「す、スリル……?」
確かに、白鳥拓海を目撃して立ち入り禁止エリアに入ってみたり、無人アパートの管理者のオジサンに怒られたりと、割と濃い時間を過ごしたような気がするけど……。
「青ガエル、アンタ結構いい度胸してるじゃない。合格よ!」
モミジ先輩は偉そうに腕組みして言った。
一体、何の合格ですか……入部試験なんて設けてませんが。
「じゃ、明日早速、朝一に写真部に顔を出して今日の写真の現像をお願いして、午後の休憩時間と放課後の時間を使って新聞作成の打ち合わせをしましょう!」
僕は部長らしく、明日の計画を部員の二人に話して解散を宣言した。
「分かりました。では猫宮くん、鹿島先輩、また明日、よろしくお願いします」
「ふふん! 打倒、ミス研よ!」
加枝留くんとモミジ先輩はそう言ってそれぞれの帰路へと解散した。