19
次に目が覚めた時、視界に映ったのはただただ真っ白な世界だった。
「ここは……?」
まだぼんやりとしている視界と頭でポツリと呟くと、横の方で返事が返ってきた。
「あ、気が付きましたか? 猫宮くん」
聞きなれた加枝留くんの声に安堵して首を横に動かすと、とんでもない光景が目に飛び込んできた。
横にいる加枝留くんは寝台の上に寝かされ、動けないように両手を頭上両端にベルトで固定されているのだ。
首を少し持ち上げて加枝留くんの更に向こう側を見るとモミジ先輩と卯月さんまで同様の格好で並んでいるのが見える。
加枝留くんと反対側の横隣にはシンラくんがいたが、やはり同様の格好だった。
嫌な予感がして僕は自分自身の状況を確認した。
僕もみんなと同じように寝台の上で両手ががっちりとベルトで固定されている。
足は何とか動かせるけどこれじゃ無防備に変わりない。
ナニこれ怖いっ! 怖すぎる~っ!
もしかして今から人体実験的なことをされるのっ? 臓器取られたり?
最悪の場合、殺される? ひぃいいい!
「ね、ねえ、ここってやっぱり円盤の中だよね?」
不安に押しつぶされそうで僕は誰かと喋らずにはいられなかった。
「だと思います。生憎この部屋には寝台以外何もなさそうですけど……」
加枝留くんの言葉通り、この部屋はただ真っ白い天井と壁と床、そして寝台しか無かった。
「ちょっと、私達このままどうなっちゃうのよっ」
モミジ先輩が不安の声を上げる。
すると突然、真っ白だった壁に四角い光の線が浮かび上がり左右に開いた。
どうやらそこは精巧に作られた扉のようだった。
「ひっ……!」
僕は思わず短い声を上げてしまった。
扉から現れたのは、眼球の無い黄色く光る眼と、緑色のイボだらけの肌を持つ異星人だった。
身長は2m程で後頭部はタコの様に長く猫背。
人間の様に二足歩行のようだけど、その手は地面に付くほど長く、枝分かれして触手の様にウネウネしていた。
はっきり言って気持ちが悪いニャ! 絶対友好生物じゃないニャ!
そんなのがぞろぞろと六体、列をなして現れた。
心臓が止まりそうな程の恐怖で僕らは縮み上がり、言葉を発することすらできなかった。
《ヨウコソ、地球人》
異星人は黄色い目を、三日月の様に厭らしく細めて僕らにも分かる言葉で語り掛けてきた。
直接、声を出している訳ではなく、正確には脳に意思を送り込んでいるような感じニャ。
だから彼らが〝人語を喋れる〟というのとは、ちょっと違うのかも知れない。
《我々ヲ、呼ビ寄セテクレテ、感謝スル》
異星人が僕らの脳に語り掛けてくる。
《コノ星ニハ、資源ガ豊富二、有リソウダ》
《我々ハ、コノ星ヲ、気二入ッタ》
《我々ハ、コノ星ヲ、手二入レルコトニシタ》
あぁ……嫌な予感は的中した。
どう考えてもこれは侵略を宣言してる……最悪だ。
この知的生命体の力は底知れず。
僕はさっきの、あの、すんごい破壊力の光の玉を思い浮かべた。
あれを何発も打たれたら、宵々町は物の数分で消滅するだろう。
詰んだ……完全に詰んだ……。
ジエンドォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!