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「い、いや、まさかこんな大挙して押し寄せてくるとは……」
流石のシンラくんもこの事態は予想外だったのだろう……
冷や汗を流して途方に暮れた様子だった。
確かに僕らは宇宙人に会いたい一心で交信を続けていた。
でも心の何処かでは会えるわけないって思ってた。
奇跡的にUFOらしきものが一瞬キラッと光ったり横切ったりして、それで皆で楽しく盛り上がって満足して帰宅する……そんな何でもないような平和な日常を望んでいたんだ。
なのに実際は得体の知れないモノが大群で現れてくるとか、そんな怖過ぎる展開は望んでないニャ! そういうのは要らないニャ!
「ね、ねえ、あの円盤って宇宙人が乗ってるのよねっ? 呼んどいてなんだけど、奴ら『友好的』なんでしょうね!?」
不安になったモミジ先輩が青ざめながら空一面の円盤を指差してシンラくんに尋ねる。
「ゆ、友好的なハズ……だ、うん。だって、この僕に会いに来たんだからな……」
シンラくんはビビりながらも皆を安心させるように言った。自信なさげだけど。
「やだ、私怖い……今すぐ消えてほしい」
卯月さん怯えながらちゃっかり辛辣な主張してる。
「お。おーい! 我が友よ!」
シンラくんは勇気を出して円盤に向かって声を掛けた。
恐怖心を押し殺して精一杯の作り笑顔を浮かべて……。
いよいよ僕らは宇宙人とコンタクトを取るのか……?
そんなことを思った矢先だった。
突然、一機の円盤の下部から丸い光の球が現れた。
それはエネルギーを溜めているかのようにぐんぐんと大きくなっていく……。
「ちょ……ちょっと、あれ、何をしようとしてるのっ? 怖すぎるんだけどっ!」
モミジ先輩の恐怖がいよいよピークになって、口が「あわわわ」と戦慄いている。
「だ、大丈夫だ、き、きっとあの光の球体から、愛らしい天使のような姿をした宇宙人が姿を現し、我々の前に降臨し……」
シンラくんが苦し紛れの無理な予想を語り終わる前に、その光は無情にも宵々町の中心地にあっさりと投下された。
ドッカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー――ン!
「うわぁああああああああああああああああああああああッ!!」
本当に! マジで! ドッカ―ンという効果音だった!
強い光と衝撃破に僕らは反射的に顔を腕で覆って凌いだ。
鼓膜が破れるかと思った!
ヤバイ、これはマジでヤバイにゃ! 世界の終わりニャ!
僕らのせいで人類が滅亡の危機に!?
爆風が止むと僕らは慌ててフェンスに駆け寄り、町の様子を見た。
遠く中心地の方向にモクモクと大きな黒煙が上がっているのが見える。
「ヤバいですよこれ!」
加枝留くんが言わなくても分かるお決まりの言葉を吐く。
「わぁああああああああああああああ!」
僕らはパニックで叫びまくった。
宵々町がっ! 町の中心地がやられた! すんごい被害が出てるはず!
あの辺は多分イコンモール跡地の辺で、街のド真ん中ニャ!
みんな無事かなっ!? どうしよう、どうしよう! うわああああ!
「とにかくここにいたら危険です! 逃げましょう!」
加枝留くんの言葉で僕らは正気を取り戻して慌てて屋上から逃げようとした。
すると僕らの真上の上空に留まっていた円盤が屋上全体を白い光で照らしだした。
その白い光を浴びた途端、僕らの体は思うように前に進めなくなり、強い力で上空の円盤に引っ張られた。
「うわあああああああああああああ!」
身体が空に浮いている!
これが「UFOに攫われる」ということなのか!
現実に自分の身に起こるなんて思いもしなかった。
遠ざかっていく学校の屋上、そして眼下には宵々町の大惨事……悪夢だ。
光と共に円盤に吸い込まれていく中で、僕らは意識を失った……。