10
暗くてよく見えないけど、何もないガランとした畳の部屋は確かに不気味かも。
僕は心霊写真が撮れるように祈りながらフラッシュでカメラのシャッターをパチパチ押した。
すると、アパートの隣の家から、すごい剣幕でオジサンが飛び出してきた。
「おいそこのガキども! 何をしている!」
いきなり怒鳴りつけられて僕は慌てて窓から身を離してカメラを背中に隠した。
怖いオジサンが出てきて、モミジ先輩も加枝留くんも吃驚して身を固くしている。
「あ、あの、中の様子が気になって、ちょっと覗いてみただけですっ」
火に油っぽいから、写真撮ったことは黙っとこ。
「不法侵入だぞ!」
どうやらこのアパートの持ち主らしい。
「ちょっと何でそんな怒ってるのっ?」
モミジ先輩は青ざめたまま僕に耳打ちをした。
「知りませんよっ、とにかく謝りましょう!」
僕も小声でモミジ先輩にそう告げるとオジサンに謝ろうと頭を下げようとした。
すると、僕らの周囲がパッと黄色い明かりで照らされた。
「何やってんだ?」
聞きなれた声がして僕らは光射す方を見た。
明かりの正体は自転車のフロントライトで、丁度、夜のパトロール中のマモル先輩だった。
「犬飼先輩っ!」
救世主のような登場に、モミジ先輩がいつも以上の黄色い声を上げた。
警察官の登場とあって、オジサンはちっと舌打ちをしていた。
「無人のアパートが気になって中の様子をちょっと見ていたら大家さんが来て……」
第三者の、しかも警察官の先輩が現れたことで僕はホッとしながら事情を説明した。
「そりゃお前たちが悪いぞ。だから寄り道せずに早く帰れって言ったろ」
「う……」
モミジ先輩は悔しそうだったが反論できず、言葉に詰まっていた。
「すみませんでした」
僕らはマモル先輩に促されて、オジサンにアパートで悪さをしたりするつもりはなかったことを伝えて謝った。
警察官を前に、オジサンもそれ以上は僕らを責められず、渋々許してくれた。