1
僕の名前は猫宮小判。
宵々町の神輿高校に通う高校一年生にゃ。
コンプレックスの小さい背丈以外の特徴と言えば、両耳をもっさりと覆い隠すボブヘアーくらいかな。
僕は生まれた時からずっとこの宵々町で暮らしてる。
宵々町の住人はみんなこの町が大好きで、大抵の人はこの町の学校に通い、この町で就職を目指し、この町で結婚し、生涯を終える……なんて言うと大袈裟かもしれないけど、実際そんな人が結構多かったりする。
そして、僕もそんな人生設計を立てている一人です。
「行ってくるニャ!」
僕は朝食を摂り終えると、青い学ランに袖を通し、学校に登校する為、早朝に家を出た。
朝練のある部活動がある訳でも、ましてやバス通学しないといけない距離でもない僕が、早朝に家を出るのには理由があった。
それは自宅から歩いて五分も掛からない距離にある、宵々第二公園にある。
公園に着くと、僕は早速、家から持ってきた猫用の煮干しが入った袋を鞄から取り出した。
すると何処からともなく猫が数匹現れて僕を取り囲むのだ。
さあ、いりこパーティーの始まりニャ。
「ほーら、お食べ」
僕はハトにエサを撒くように、地面に煮干しを撒いた。
すると猫達は美味しそうに食べ、なくなると更に催促するように僕の足に頭を擦りつけておねだりをしたりする。
可愛い猫たちに囲まれ戯れるこのひとときは、猫好きな僕にとっては至福の時間なのだ。
しかし、時には妨害も起こる。
「こらーっ! 野良猫にエサをやるなと何度言ったら分かるんだーっ!」
公園の近くに住む猫嫌いのおじいさんが、僕に石を投げながら鬼のような形相で追いかけてきた。
「いたっ! イタタタ! やめるニャ!」
猫も僕も一斉に逃げだした。
至福のひとときはこうして無残にも終わりを告げた。
「フン、猫に餌をやったぐらいで石を投げるなんて……まったく世知辛い世の中ニャ!」
僕はぶつくさと独り言を言いながら学校へと向かった。