1:帝国崩壊
勝手知ったる帝国。
誰にも気づかれることなく研究所へと歩を進める。
特に何事も無く地下の研究所へと辿り着くと、セキュリティのかかった扉を無理矢理こじ開けた。
「……任務はどうした、いや、貴様……」
研究員は三人。いつもの白髪の老人と、若い男二人。
「任務?ああ、悪いな。失敗した。だが十二人の被験体達はちゃんと始末したぞ」
白髪頭は俺に気取られぬようにか、白衣の内ポケットにさり気なく手を入れる。
恐らく俺の首輪の作動装置を取り出しているのだろう。
「失敗?裏切者が抜け抜けと帰って来よって。後、口の利き方に気を付けろ、小僧」
そう言って白髪頭は俺に見せつけるように手のスイッチを押した。
「ぐわああ!……なんてな」
俺は首輪に両手を掛け、渾身の力を込めて引き千切った。
「ば、馬鹿な!……げはっ」
「グッ!」
両手の首輪の破片を若い研究員二人に投げつける。
非戦闘員の彼らが避ける筈も無く、額に直撃して昏倒した。
「貴様、首輪が、首輪を!」
白髪の男は今一つ要領を得ないことを叫びながら後退る。
その眼は驚愕、そして恐怖に見開かれていた。
「首輪がどうした?口の利き方が何だって?」
「ひ……ひいぃ!」
俺が近付いた距離だけ男は後退る。
足取りが覚束なく、何かに躓いて尻餅をついた。