私は今日、旅に出ます。
時間があれば続きも書きたいんですけど、書けるかもわからないので今回は短編という形で……ごめんなさい(´・ω・`)
いつか聞いた言葉だったと思う。
いつ聞いたのかはよく覚えてない。
でも最近、私はよくこの言葉を思い出す。
“人は一人では生きられない”
その言葉を思い出す度、私の胸はいつも締め付けられたように傷みだす。
きっと、もう限界なんだと思う。
本当はママとの約束を守らなきゃいけないけど、もうそのママもいない。
だから……もういいよね。
もう、たくさん我慢したから……だから少しぐらいの我がままを言ってもいいよね?
私はそう言って、もう動かなくなったドラゴンの亡骸に抱き着いた。
生きていたころの暖かな温もりはもうない。口も開かないし、私を撫でてもくれない、私の育ての親にして生みの親でもある優しいママ。
今日がもしかしたらママに会える最後の日になるかもしれない。
だから、ママにはちゃんと言っておきたかった。
喧嘩別れみたいなことだけはしたくないから、ちゃんと伝えよう。
約束を破って人間の街に行くということを。
「ママ……あのね、私ママとパパが私のママとパパで幸せだったよ。ママがドラゴンでパパが人間だったから、私がハーフになっちゃったんだって、いっつもママとパパは謝ってたけど、私はママとパパが私のママとパパでよかったって思ってる!!」
言ってるうちに目が熱くなっていくのがわかった。
「でもね、パパがいなくなって……ママが死んじゃって……それからずっと一人でいたけど、もう十分頑張ったよね……? だから、私は人間の世界に行ってみたい。ママとの約束を破ることになるけど、ママが恋したパパと同じ種族の人間を見てみたいの。それに……ママが人間が嫌いなのは知ってるけど、もう一人でいるのは辛いんだ……だから……!」
涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げてママを見る。当然、返事はない。
だけど、微かに「わかったわ。貴女の生なんだから、貴女の好きにすればいいのよ」とそう言ってくれている気がした。
――――その日、私は人間の街に向かって旅立った。
振り返ると、生まれてからずっと住んできた小さな洞窟が見えた。
ママが昔、気まぐれで作った小さな洞窟。
そこにパパが迷い込んでママと恋に落ち、私が生まれた。
それから、三人でご飯食べたり、遊んだり、時には喧嘩したり……いろんな思い出が詰まった私達のお家。
そんな洞窟の周りには今も尚、小さかった頃の私の為にママが作ってくれた人払いの結界が張られている。
その結界は家を出れば私にも効果を発揮するだろう。
だから、もう帰ってくることは出来ないかもしれない。
それでも、私は前へと進む。
きっとこの先に楽しい……あの頃のような未来があると信じて。