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くまが喋ろうが所詮くま

作者: たろ

前書き?ないよ

「ぼくとおともだちにならない?」

くまが唸った。

何を言ってるのか俺にはわからない。

「ねぇ、ぼくとおともだちになろうよ」

決して喋ってなんかいない。

夢に違いない。

それか気のせいだ。

「もうそーゆうのいいからさ、はやくあそぼうよ」

………俺はどうやらおかしくなったらしい。

くまがこんなに流暢に日本語を喋るわけがないんだ。「コロスぞ」

っ!

やっぱりこれは夢じゃない。

何故かって?


…フッ

命の危機を感じているからだよ。

こんなリアルな死の瀬戸際、夢だと思って死んじゃって実際は現実の出来事でしたなんてことが許されないこの状況。なんとしてでも生き延びねば。

逃げても追いつかれてしまうだろう。

ここは大人しく従っておくほうがよさそうだ。

「OK、OK、分かったよ、何して遊ぼうか」

「んーとね、おにごっこ」

「いやあのね、身体能力の差が明らかなんだよね、もうちょっと違う遊びとかないかな?」

「じゃあねぇ…おすもう!」

「それもキミの圧勝が決まってるでしょ」

「じゃあおじさんはなにがいいのさ」

「んー、そうだな…。あ、勝ち負けがなければいいんだから………ねぇ、おじさんの仕事を見せてあげようか」

「え、しごと?やだよ、ぼくやまからおりたことないもん」

「大丈夫、確かに普段は山の麓にある仕事場に行ってるけど山の中腹あたりに山小屋があるだろう、あれもおじさんの仕事場なんだ」

「へえ…それならだいじょうぶかな」


それから二人は山小屋へと赴き、おじさんの仕事を見ました。おじさんは普段は某大手食品会社の部長で年収3000万、副業(趣味)として木工細工をしているいわゆる勝ち組なのでした。


最初はなかなか難しい木工細工に飽きてしまったくまと遊んでいたおじさんですがやがて腰を悪くしてしまい、一緒に遊ぶことができなくなりました。

おじさんが山へ行く回数もだんだん減り、いつしかおじさんが山小屋へ行ってもくまは現れなくなりました。やがておじさんも山へ行かなくなりました。


数年がたち、おじさんはおじいさんになりました。

退職し、暇な日々が続いたある日、ふと山のことが気になりました。

山小屋はまだあるのか、誰かが使っているのか、あのくまはどうしているのか。

気になってしまい夜も眠れません。

いてもたってもいられず、おじいさんは山へ入りました。必死になって歩き、登り、お昼頃になり、ようやく山小屋へとたどり着きました。

山小屋は長く使われていなかったにしては綺麗な状態、中へ入るとおじいさんの作品ではないものがいくつかありました。

誰かがここで作品を作っていたのかな、と物思いにふけっていると、誰かが扉をトントンと叩くではありませんか。

扉を開けるとそこには小さなくまがいました。

でもあのくまではありません。

似てはいるものの、あのくまではありません。

するとくまはこんなことを言いました。

「あなたがおとうさんのいっていたおじさんだね」

このくまも喋るのか、という驚きはなく、ある言葉が気になりました。

「お父さん?っていうことは…」

「はい、むかしおせわになっていたくまはぼくのおとうさんです。おとうさんはいまはうごけないのでぼくがかわりにきました」

「動けない…?私をお父さんのところに連れていってはくれないか?」

「ぼくもそのつもりできました。さあ、はやく」

そうして山の奥深くまでいくと、見覚えのない大きな岩がありました。岩には大きな穴があいており、この中にいるとくまは告げます。

暗い穴を進むと、やがてぼんやりと明るい大きな広間のようなものにたどり着きました。

周りには無数のくまがこっちを見ています。小さなくまは1番奥にいるくまを指差し、こう言いました。

「あのくまがぼくのおとうさんです。」

おじいさんは走り出しました。足も腰も痛みますがそんなことは気になりません。

おじいさんが駆け寄ると、くまはこう言いました。

「あぁ、もう、おじさんはせっかちだなぁ、ぼくはここからにげやしないんだから」

そう言いながら、くまはおじいさんを抱きしめました。


積もる話や思い出話をしていると突然おじいさんの様子がおかしくなり始めました。

「どうしたのおじさん!」

「今まで色々無茶をしてきたからねぇ、そろそろお迎えがきてもおかしくはないと思ってたんだけど、まさか今とはねぇ」

「おじさん!だめだよ!ぼくとあそぶんだよ!」

「キミはいつまでも私のことをおじさんと呼んでくれるんだね、私はそんなキミが大好きだよ」

そう言っておじいさんは深い眠りにつきました。

もう、覚めることはない、眠りに。

くまは大声をだして泣き叫びました。

おじいさんを両手で抱きながら。

その日を境にくまは言葉を発さなくなりました。

いつも影から見ていたあのおじさんと話すために身につけた言葉。おじさんと話すためだけに覚えた言葉。もうおじさんはいません。最後に言いたかったことも言えずにおじさんは目を閉じました。

言わなければならなかった言葉。それを伝えるには。

それから年に数回だけ、くまは言葉を発するようになりました。

夕日の沈む頃、ぼそっと、周りに聞こえないくらいに「ありがとう」と。

起承転結の転は思いっきりやりきりたいよね。

そんな感じ。細かい設定なんかは決まってはいますが、それは気になる人だけ聞いていただければ。あとはご自由にどうぞ。

ではでは、最後まで読んでいただきありがとうございました。-たろ

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