1. 転生
最低でも週一更新を目指します。
(どこだ...ここ...)
意識がもうろうとしている。
五体満足に体があることは分かったが、金縛りにあったかのように動かすことができず、どのような体勢でいるのかすら把握できない。
目の前に写るのは光をすべて遮断したかのような暗い闇だった。
(どうやら無事に死ねたみたいだな)
自らの行いが成功したと考え安堵していると突如として首の痛みに襲われた。
あまりの痛みに悲鳴を上げようとするが、口がパクパクと動くだけで、言葉を発することができない。声帯が振動しなくなってしまったような感じだ。
激痛のおかげで意識がクリアになり、痛みを必死にこらえ情報を整理する。
(首を吊って死んだはずだが、まだ死んでなかったのか。それならこの痛みも納得がいく。)
しかしすぐに違和感を感じて思考を張り巡らせる
(いや違うな首に巻いていたロープの感触が一切ない。もし仮に感覚がマヒしていたとしても、首吊りの途中なら首が圧迫されて、血流が回らなくなり考えることすらできなくなるし。)
冷静に自分の置かれている状況を推察していると、誰かの声が聞こえたような気がした。
首の痛みに悶えながら、できる限り集中して耳をすました。
「...て」
今にも力尽きそうな弱々しい声は断片的にしか聞きとれない。
(誰の声だ。いったい何を言って...)
「誰か助けて!」
先程弱々しい声の持ち主とは思えないほどの大きな叫び声だった。
それを聞いた直後に自分の意識が途絶えた。
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目を開けるとそこは、自分が今まで見たこともない装飾で彩られた天井だった。
自分の審美眼は無きに等しいが、かなり高価な物で作られていることは理解できた。
(あれ...まだ生きてるのか。自殺し損ねたな...)
まだ死んでない自分に落胆しつつ、自らの置かれている状況を確認する。
(今いる場所は特定できないが、豪華そうな天井と敷いてある毛布から察するに、高級住宅のベットに寝かしつけられているのだろう。)
先程までとは違い首の痛みが引いていて、縛られていた感覚も無くなり、体を動かすことができるようになった。ただ喋ることができず、今の仰向けの状態から起き上がることはできないようだ。
仕方ないので横回転し、うつ伏せの状態から手を使い起き上がろうと考え、体を傾けようとしたとき、偶然自分の体が視界に入った。そのとき体の異変に気がつく。
(えっ!?ちょっと待って、なんか体がが縮んでいる上に全裸なんだけど!?)
異常なまでの体の変化に今までの平静さを失ってしまう。自らの状況を飲み込めず慌てふためいていると唐突にドアが開く音が聞こえ、複数人の足音が早足でこちらに向かってきた。そして二人の男女が心配しながら自分の顔を覗きこんでくる。
男の人は髪の毛の無駄という無駄を全て剃ってしまったかのような坊主頭で髪の色は茶色に見えた。少しつり目なのだが優しそうな雰囲気がする。
女の人はかなりの美人で、髪は金髪のふわふわのロングヘアーで、たれ目でおっとりとした印象を受ける。
もう一人いる存在するが、遠くから自分の姿を観察しているため詳しいことは分からない。おそらくメイド服の女性だと思われる。
そして顔を覗きこんできた女性が泣きそうになりながら自分に話しかける。
「良かったわ!目を覚ましたのね私の赤ちゃん!」
(まるで意味が分からんぞ!!)
こうして彼の第二の人生は始まった。