……肉の両面焼きって知ってるか? (とあるラノベっぽく)
よく出来たギャグだわ。
「いつの間にか寝ていた……そろそろ準備をしなきゃな」
ちらりと時計を見るとすでに6時40分だった。そろそろ姉ちゃんも帰ってくる。今から用意すれば丁度いい時間になるだろう。
「さあ、クックバッドさん行きますよ」
俺は冷蔵庫から肉種を取り出すと、クックバッドのアドバイスを読み、ハンバーグの形を整えていく。
「我ながら、いいセンスをしている」
やはり俺は、すべてにおいて天才だな。
しっかりと空気を抜き、フライパンを温め、オリーブオイルを引いて、最初に一枚。練習をかねて焼いてみる。肉種は多いし、焦がしても俺が食べればいいし。
「まず片面を焼き、そして程よく焼けたらひっくり返す。そうすれば両面均等に焼けるだろ?」
と言いながらハンバーグをフライ返しでひっくり返す。
「まぁ、考えたこともなかったわ。なら、君が一度やってみせてくれない?」
と、一人芝居をしながら焼き上がるのを待つ。
「……そろそろいい感じかな」
見た目はいい感じに焼けたハンバーグを皿に移し、一口箸で切って味見してみる。
「うん。ハンバーグだ。」
ハンバーグだ……って感想しかでてこねえ。いや、旨いけどさ。まぁ、始めて作るにしちゃ上出来だな。
「ただいまー! ……お、なんかいい匂い……今日はハンバーグだなっ、エミちゃん!」
丁度お姉ちゃんが帰って来て、鋭い嗅覚でディナーのメニューを言い当てながらリビングに勢いよく入ってくる。
しかし、作っているのはエミではない、この有利だっ!
「あれ? 今日は有利ちゃんが作ってるの?」
不思議そうに、そう言いながらキッチンに歩いてくる
「おーよ、味見する? さっきちょっと食べたけど」
俺は今さっき焼いたハンバーグの乗った皿を、姉に渡しながらそう言う。
「するするー……あむ。おお! 旨い! 有利ちゃん天才」
姉は皿を受けとると、箸で一口大に切って食べると、味を絶賛し、ばくばくと食べ始める
「うん、知ってる」
俺が天才とか十年前くらいから知ってた。というか、全部食べるのか……まぁいいや、四枚焼けばいいだけだし
「ご馳走さま……おねーちゃんちょっと着替えてくるから、ご飯出来たら呼んでね」
空いた皿を流しに置き、そう言って自分の部屋に戻るお姉ちゃん。
「残りも焼いて、付け合わせにキャベツでも切るか」
俺は残り四枚を焼きながらキャベツを千切りにし、完成したものを皿に盛り付ける。
時間は7時前か……少し早いがまぁいいや。
俺は二人……と、その友達を呼びに行く。
「お姉ちゃん、晩飯できたぞ」
まず最初に近い方のお姉ちゃんを呼ぶ。
「今行く」
言い終わる前に出てくるお姉ちゃん。はえーよ。どれだけ楽しみにしてたんだよ。
「エミ、入るな。晩飯できたぞ。秋ちゃんもよかったらどう?」
エミの部屋にノックして入り、そう言う。
……エミ……秋ちゃんにエロ本を渡したなっ!? 処分しようというのか……エロ本をっ! それでいいのか!?
「マジッスか! パイセンの手作りッスか?」
秋ちゃんが期待に満ちた目でそう聞いてくる。
「パイセンの手作りッス」
その期待に応えてやろう。
「頂きます!」
食い気味にそう言う秋ちゃん。
「ん、じゃあ降りてきてな」
「了解ッス」
俺は、敬礼で答える秋ちゃんに微笑みながらドアを閉める
「ヤバイよエミ、先輩の手料理だよ」
「うん……秋、ちょっと落ち着こうか」
ドア越しから聞こえてくる会話を聞きながら、俺はリビングに降りる。
しかし、手料理一つでそこまで喜ぶか?
いや、俺視点で考えれば、美人な先輩の手料理ってことか……おう、嬉しいわ。歓喜するわ。
「有利ちゃん、なんか嬉しいことでもあったの? 顔がニヤついてるよ」
おっと、イカンイカン。妄想が顔に出てしまっていたか。
「特に何もないぜ」
俺はお姉ちゃんにそう言うと、席に着いて二人が降りてくるのを待つ。
程なくして二人とも降りてくると、椅子に座って皆で食べ始める。
「先輩! すごい美味しいっす!」
「おう、サンキュー秋ちゃん」
「お兄ちゃんスゴい!」
「うん、知ってる」
「流石有利ちゃん。なんでもできるのね」
「知ってるとも」
「先輩のハンバーグ本当に最高ッス」
「流石にそれは言い過ぎじゃ……」
「いままで食べたなかで最高だよお兄ちゃん」
「お、おう……」
「料理もできて顔も良くて、将来は立派な主夫ね有利ちゃん」
「ヤバイッス有利先輩」
「流石はお兄ちゃん!」
「略してさすおにッス先輩!」
「さーすおに!」
「さーすおにっ」
「さーすおにっ」
「イジメかっ!!」
船堀パロか? 劣等生か? どっちやねん!
「あー、他になんか話題ない? あ、中学とかどうよ? 今年受験だし、進路とかどんな感じなんだ?」
ツッコミも疲れたので、話題を変えてみる。
「「……」」
話題を変えたとたん、急に黙って顔を背ける二人
「どうしてそこで黙るよ」
「先輩……うちら馬鹿なんすから、その話題やめません?」
死んだ魚のような目でそう答える秋ちゃん。
妹……結構頭よかったけど……そうか、こっちじゃ逆にバカなんだな。
「ということは、お姉ちゃんは頭いいのか」
「YES I AM」
お姉ちゃんバカだったのに。頭良くなってるのか。よかったな。
「有利ちゃん、なんでそんなに優しい目で見つめるの?」
「いや……特に意味はない……エミ、勉強教えてもらったらどうだ?」
「……そーする」
顔を背けたまま、そう言うエミ。
「お姉ちゃんにまっかせなさーい……あ」
胸をドンと叩いてそう言うお姉ちゃんだったが、肘がコップに当たり、俺の服にお茶がこぼれる。
「……やっぱ、お姉ちゃんに教えてもらうのは止めとった方がいいかもな」
頼りない。
「うん」
今度は姉をしっかりと見ながら頷くエミ
「ええっ! そんなひどいっ!」
妥当な判断だわ。
俺ちゃんあれすげー好きなんだ。
肉の両面焼きスゲエエエ