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夏祭りってどんな屋台があったか思い出せん。ついこの間行ったばかりなのに。

ちょっと聞いてくださいよ。

昨日ね、テストあるから朝早く張り切って行って、学食で朝食でも食べようかと思ったら財布を忘れてさ。

暑い中チャリで財布を取りにいくはめになったよ。



 

「奏ちゃんおまたせー」


 リンゴ飴を買ってすぐ、奏ちゃんとの待ち合わせ場所に向かう。


「あ、有利くん、全然待ってないよ……浴衣かわいいね(リンゴ飴持ってるところとかもう最高だよ)」


「ああ、うんありがとう」


 かわいい? 格好いいじゃなくてか?


 と内心疑問に思ったが深く考えずにお礼を返す。


「奏ちゃんは浴衣じゃないのな」


 正直見てみたかった気もするけど、仕方ない。


「まぁ、女子で着るのは珍しいからね」


「そうなんだ」


 言われてみれば、前の世界だと男も浴衣とか着ないもんな。

 俺も、祭りで浴衣とか着るの幼稚園の時以来だわ。


「とりあえず、一緒に回ろっか?」


「ん、そうだな……あ、龍之介の屋台行きたい」

 

 冷やかしに。


「あ、いいね私も行きたいし」


 奏ちゃんも頷いてくれたことだし、二人で龍之介のやっている屋台へ向かう。


「けど、本当賑やかだね」


 俺の隣を歩く奏ちゃんがそう呟く。


「まあ、年に一度の夏祭りだもんね」


 と苦笑をもらしながらそう言う俺。


「いくぜ! 俺のターン! お小遣い(ライフ)を千支払い、くじ引きを四枚ドロー!」


 右を向けば決闘者がくじ引きに興じていたり。


「俺の後ろに立つんじゃない!」


 左を向けば伝説のスナイパーが射的をしているので、後ろを通れずちょっとした通行止め状態になっていたり。

 

「ほう、これがリンゴ飴というやつか……この色、まさに赤い彗星たる私のためにあるような食べ物だと思わんかねラ○ァ!」

「あまりお金ないんですから買いませんよ大佐」

「ええー! 買って買って、赤い彗星のリンゴ飴買ってー」


 また右を向けば通常の三倍早い人が部下に駄々をこねていたり。


「ジョ○ョ! 俺はこのお面を買うぞ!」

「や、やめるんだデ○オ」

「もう遅い! すでにこのディオ、店主に代金を支払った! 俺は人間をやめるぞ!」


 また左を向けば、お面ひとつでかなり盛り上がっている二人組がいたり。


 もうツッコミきれない。


 

「あ、龍之介君の屋台見えたよ」


 少し歩くとそういって龍之介のいる屋台を指差す奏ちゃん。


「お、本当だ……よう龍之介! 冷やか……遊びに来たぜ!」


 俺は龍之介に手を降りながら走っていく。


「冷やかしなら今すぐ帰れ」


 こっちを見向きもせずにバッサリとそう言う龍之介。

 辛辣だなまったく。


「おいおい、お客様にそんな態度でいいのか?」


 財布から百円玉を三枚取り出して見せびらかしながらそう言う。


「そうか、ほらよ」


 龍之介は、とくに反応せずにエアガンを投げて寄越す。

 

 もうちょいなんか反応してくれないと、滑ったみたいになるじゃんか。

 ってか、商売道具投げんなよ。


「奏ちゃん、どっちが多く落とせるか勝負しようぜ!」


 俺は銃口にコルクを詰めながらそう言う。


「いいよー、負けないからね」


 奏ちゃんも龍之介からエアガンをもらいながら頷く。


「じゃあ、負けたらなんでも言うこと聞くっていうルールで、よしやるぞー!」


 そう言って構える俺。奏ちゃんが驚いているがスルーの方針で。


 とりあえず……狙うはPS4だぜ。


 俺は腰を落として肩の力を抜き、よく狙ってから引き金を引く。


 銃口から勢いよくコルクが発射され、まっすくとPS4へ向かっていく。

 よし、これは確実に落とした! PS4は俺のものだ!

 

 そう思った矢先、コルクが空中で消える。


 なんで? どうして? ガオガオブー。


「有利」


 どうして空中でコルクが消えたのかと首をかしげていると、龍之介が話しかけてくる。


「なに?」


「お前の探し物は……こいつか?」


 そう言って、龍之介が握った手を開くとそこからコルクが出てくる。


「こいつ……」


 あのまま当たれば商品が落ちると分かって、空中でコルクを掴みとったというのか……なんて早さだ。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね……いや、俺も見えなかったけど。


「っていうかそれ妨害だ!」


 店主だからってそんな横暴が認められていいのかー!? 


「安心しろ、お前にしかやらない」


 真顔でそう言う龍之介。


「なお酷いわ!」


 むしろ友達なら、落としやすいように移動してくれてもいいんじゃないかな?


「落とせるもんなら落としてみな」


 悪い笑みを浮かべてそう言う龍之介。


 この野郎ぉぉぉぉ……見てろ! 絶対に落としてやっからな!

 

「あ、PS4落ちた」


 と、決意して次弾を装填しようとしたところで、奏ちゃんが隣でぽろっと呟く。


「「え?」」


 俺と龍之介の声が重なり、ふと的の方を見れば先程までPS4が置いてあった棚にはなにもなく、本体は地面に落ちていた。


「……おいおいマジかよ」


 龍之介が驚きに充ちた表情でそう呟く。


「えっと……ゴメン、中身無事かな?」


「ああ、多分な」


 地面に落ちた箱を拾い上げて袋に入れる龍之介。


「……たしか、落とせるもんなら落としてみろとか、さっき誰かが言ってたような気がするなぁ?」


 ここぞとばかりに挙げ足を取りにいく。


「てめーが落としたんじゃないだろ」


「うん!」


 その通りですが、なにか?


「そんな堂々と返事するなよ……ほら、おめでとさんって、今持ってても荷物になるからここで預かっとこうか?」


 商品の入った袋を奏ちゃんに渡そうとするが、途中でやめてそう言う龍之介。


「いいの? じゃあ、お願いしようかな」


「あいよ」


 龍之介はそういうと、商品の入った袋を店裏にしまう。


「まさか一発目からメインをとられるとはな」


「私もまさか落ちるとは思わなかったよ……ところで有利くん」


「ん?」


「負けた方がなんでも言うこと聞くんだよね?」


「……ナンノコトダロウ?」


 僕、ソンナコト……イッタカナ?


「安心しろ、言質は取ってる」


 椅子に座ってそう言う龍之介。


「おぅふ……」


 ……逃げ場がなくなったぜ。

でも、その日テストなかったから学校に行かなくても良かったんだよね。

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