夏祭り、旧き良き思い出だよ。あ、そうそう、夏祭りといえばK君が……おっと、これ以上はやめておこう。
いやー、……型抜きで二万円稼ぐ奴始めてみたよ。
K君は本当……何者なんだろうか。
普通はせいぜい三千円が限度さ。
「待ちたまえ弟よ!」
「……おう?」
夏祭りに行こうとしたら、姉ちゃんに呼び止められた。
「夏祭りにいくんだよね?」
「うん……そうだけど」
「もしかして、気になってる女の子と二人きりとかかな」
「っ……べ、べつにそういうわけじゃ……」
くっ、勘が鋭いのは相変わらずか……。
「マジか、ついに私の愛しい弟にもそんな相手が……嬉しいやら寂しいやら……そろそろ結婚したいけど、気になる男の子が居ない私を追い抜いていくのね」
床に崩れ落ちてそう言う姉ちゃん。
姉ちゃんも頑張って早く結婚しろよ。
「だから、別にそういうんじゃ……」
「まぁまぁ、皆まで言うな……このおねーちゃんが協力してあげようじゃないか」
「別にいいって」
「ああ、待って! お姉ちゃんに協力させてよ、恋のキューピットにならせて」
「わかったから、腕に抱きつかないで」
胸の感触が気になる。いやー、身内贔屓を除いてもいいおっぱいだわ。
「ありがとう有利君! というわけで、まずはその服を何とかするべきだよ!」
「……服?」
……結構おしゃれにしてると思うんだけどな。この赤の七分袖のカーディガンとか割りとお気に入りだったりするけど。
「夏祭りなんだから、浴衣着なきゃ女の子は落とせないよ! ……もう、落としてる気がしなくもないけど」
ボソッと最後につぶやく姉ちゃん。
「浴衣か……確かに悪くないけど、持ってないよ?」
「と、思うじゃん? 甘いんだなぁ、見るがいいこれを! ちょっと取ってくるから待ってて」
姉ちゃんはそう言うと、自分の部屋に戻り浴衣を持って降りてくる。
「…………いつそんなものを用意したの?」
うちにはそんな浴衣なんてなかったはずだが……。
「ボーナスで買ってきた!」
サムズアップでそう答える姉ちゃん。なぜ俺のを買ってきた? 姉ちゃんのボーナスなんだから……
「もっと自分の事に使いなよ!」
「いいじゃん! これ着せて写真とりたかったんだもん! カメラ使いたかったんだもん!」
「……ああ、あのカメラな」
最新式カメラ買ってきたぜ! って言ってたけど結局使われることのなかったあのカメラな。
「わかったよ、着るよ」
俺はその浴衣を手に取ると、自室に戻る。
「あ、これ着付けの本ね」
姉ちゃんはそう言うと、浴衣の着付けの本も渡してきたのでそれも受け取って部屋に戻って着替える。
「まぁ、夏祭りといえば浴衣ってのはわかるけど……って、あれ? 帯長すぎないか? どうなって……あれ?」
文化祭の時は一人でできたんだけどな。演劇部の衣装と本物は違うのか? ……どうすればいいんだ?
俺は姉ちゃんから渡された着付けの本を見ながら、四苦八苦しつつ帯を結ぶ。
「……俺の知ってる浴衣と大分違う気がする」
女物……じゃないんだよな。いや、女物に見えなくもないんだが。
柄は藍色の渋い感じなのと、帯の位置が低いお陰で男物に見えるが、これ帯の位置を少し上げれば女物だな。まぁ……いいか。似合ってるし。
「姉ちゃん、着替えてきたよ」
着替え終わった俺はそう言いながらリビングに向かう。
「さすが私の弟! 似合ってるよ!」
姉ちゃんは俺が着替えてる間に用意したであろうカメラで何枚も写真を撮りながらそう言う。
「ん、写真はもういいだろ? そろそろ行かないと待たせちゃうから行ってくるよ」
「いってらっしゃい……あ、荷物はこれに入れて、合流する前にリンゴ飴のひとつでも買っていくとポイント高いよ」
巾着袋を私ながらそう言う姉ちゃん。
「だから、別にそういうんじゃないっての」
俺はそう言って家を出る。
◇◆◇◆
……あ、リンゴ飴の屋台だ。
待ち合わせ場所に向かっていると、たまたま……たまたまリンゴ飴を売っている屋台を見つける。
いや、別に奏ちゃんは好きだけどさ、確かに付き合えたら嬉しいけど、別にそんな点数稼いで頑張ろうとか思ってるわけじゃ……
………………………
「リンゴ飴ひとつください」
「まいどっ」
いや、これは……あくまでも、ただ俺が食べたかったからであって、別にそう言うつもりはないからな。
文化祭のイベント時の来栖さん
たまに、せこい屋台に当たると殴りたいレベルでムカつく。
え? テスト?
まったく知らない範囲が出てきたよ。死んだね。




