チョロイン可愛いな
チョロい=ヒロイン力
だと思う。
◇◆◇◆
「奏でちゃーん、来たよー」
俺は隣のクラスに行き、奏でちゃんを探す。
「あ、有利君! 私も今終わったところだよ」
暗幕で暗くなった教室の中から、制服に着替えた奏でちゃんが出てくる。
「奏でちゃんのクラスはお化け屋敷なんだね」
「うん、やってく?」
「……やめとく」
この程度なら多分大丈夫だと思うんだけど……まぁ、万が一ということもあるし。
「あはは、やっぱりね……それよりお腹空いちゃったよ、何処かで何か買わない? って、この時間だと何処も混んでるかな?」
「ああ、それなら1-1の屋台ならお客さん誰も居ないからすぐに買えるよ」
全員ドン引きでしたからね。ガラッガラですよ。
「ほい、有利君」
奏ちゃんが買ってきたフランクフルトを一本俺に手渡す。
「あ、ありがとう……あ、お金」
「あ、いいよ、別に。これくらい奢るよ」
俺は、奏でちゃんが買ってきたフランクフルトを受け取り、彼女に自分の分の代金を払って無いので、ポケット財布を取り出そうとするが止められる。
「え? でも……」
「いいよー、今朝おこずかい多目に貰ったから!」
「そっか……じゃあ、お言葉に甘えよっかな」
ここは、せっかくの奏でちゃんの心使いを無碍に扱うことはせずに、ありがたく受け取っておいた。
でも、次は俺がおごってあげよっと。
「いっただっきまーす……はむ、ん……んくっ……おいしい」
奏ちゃんはそう言うと、勢いよくフランクフルトにかぶりつく
カリッとした皮を噛み切ると、中からジュワっと肉汁が溢れ出し、それと一緒に噛み切った分のフランクフルトを飲み込んで、素直に感想を述べる奏でちゃん。
「……奏でちゃん、わざとやってる?」
その様子を見ていた俺は、奏ちゃんにそう尋ねる。
エロすぎるよ、奏でちゃん。
「わざとって……なにが?」
キョトンとした表情でそう言う奏ちゃん。
「いや、なんでもない」
……天然ってすごい。
……うまいな、これ。
……あ、クレープ屋台だ、いいな、甘いものも食べたいと思ってた所だし、これ食べたら行こうかな。
「買ってきたよ有利君」
奏ちゃんが、いつの間にかクレープを二つ持って立っており、片方を俺に差し出す。
「あ、ありがとう奏ちゃん」
俺は、お礼を言って奏ちゃんからクレープを受け……ん?
「って、いつの間に買ってきたの?」
「え? 今さっき……クレープ屋台の方見てたから食べたいのかなーって」
すげー気が効くのな……もはやエスパーレベルだぜ。
「あ、今度は俺が奏ちゃんの分も払うよ」
奢ってもらいっぱなしは悪いからね。フェアじゃないし。なにより俺のプライドがな。
俺は財布をポケットから取り出して、クレープ分のお金を奏ちゃんに返そうとする
「いや、いいってば」
だが、奏ちゃんはそれを右手で制して、笑いながらそう言う
「え、でも……」
「いいからいいから」
「……この次は俺がおごるからね」
奏ちゃんが頑なにお金を受け取ろうとしないので、仕方なく財布をポケットにしまう。
「さあ? それはどうかな」
……こいつ、絶対おごらせる気ないな。
俺にもプライドがあるのだよ……。
こうなったら、維持でも俺がおごってやるもんね。
あ、けど普通に買ったら、お会計奏ちゃんが俺の分まで一緒に払いそうだからなぁ
なら、お会計するときに、奏ちゃんの意識を別のところへ向けさせて、その隙に払っちゃえばいいよね
よしそれ採用
「(何考えてるか大体わかる……気がする)」
「それじゃあ、他の屋台も回ろうよ、奏ちゃん」
早速作戦始動だ!
「ん、そうだね」
◇◆◇◆
「喉渇いたな……」
何か屋台はないかなーと外に出てキョロキョロと探していると、奏ちゃんががボソッと呟く
「ちょうどあそこで飲み物売ってるから、俺ちょっと買ってくるね」
そう言って、俺は屋台の方に小走りで向かう。
「ん、じゃあ私も行く」
奏ちゃんも、そう言って俺の後について来る。
ちっ、着いてこなくていいのに……。
「いらっしゃいませ、何の味にしますか?」
「えっと、何があります?」
「イチゴ、メロン、ブドウ、バナナ、チーズです」
……チーズ? なんで?
「私はメロンがいいな」
「ん~と、じゃあ、俺はイチゴかな」
「メロンとイチゴですね。お会計は200円です」
「そういえば、奏ちゃん、甘いもの好きだったんだね」
俺は財布を取り出しながら、奏でちゃんの意識を反らす為にそう話しかける。
「ん? いや、そこまで好きじゃないんだけど、有利君一人だけだと食べづらいかなーって思って」
え? マジで? てことは、俺のためにさほど好きじゃないのになのに、我慢してクレープを食べたってことか?
「はい」
それは悪いことしたな……なんか申し訳ないな
「丁度いただきました……どうぞ」
「ん、ありがとう」
んー、なんか、気を使ってもらってばっかりで悪いな。
「有利君、何ボーッとしてるの?」
「ふえ!? あ、お会……計……」
「もう払ったよ、はい、イチゴジュース」
奏ちゃんが、俺にピンクの液体の入った容器を差し出す
しまった! 奏ちゃんの気をそらして、その隙にお会計するつもりだったのに、俺の方が気を反らしてしまった……。
「……ありがとう」
俺はお礼を言って、ジュースを受け取る。
「なんでむくれてるの?」
奏ちゃんが不思議そうな顔をして聞いてくる。
「むくれてないよ……」
「……そう?」
俺がそう言うと、奏ちゃんは少し間を置いてからそう言い、それ以上は言ってこなかった 。
ちくしょう……なんでこうなるんだ……。
チョロいっつか、アホの子だわ。




