文化祭って、実際はあまり喫茶店やらないよな……基本屋台だよな。
やろうとしたけど、たしか……食べ物扱うから、喫茶店だと安全性が云々言われた気がする。
「あ、そうそう……一学期最後のイベントで文化祭があるけど、なにやりたいのある?」
文化祭か……定番どころでいうと、カフェとかお化け屋敷……はやめといて、他になにがあるかな? 当日が楽なので言えばなんか動画でも撮って延々とやってるのだけど、それじゃあ味気ないしな。
「来栖さんなんかない?」
一人ではなかなかいい案が浮かばないので、となりの席の来栖さんに聞く。
「なにもしない……ってのはどうだ?」
真顔でそう言う来栖さん。冗談なのか本気なのかわかりづらい……多分後者だと思うけど。
「無気力だなぁ……なんかやろうよ」
「……あー、じゃあ喫茶店」
「あ、定番なやつだな、けど大変じゃないか?」
面倒くさがりな来栖さんがやりたがるとは思わなかった……意外だ。
「いや、喫茶店でバイトしてるからそうでもない」
ああ、喫茶店の仕事には慣れてるってことね。しかし、喫茶店でアルバイトしていたとは知らなかった。
「意外な事実発見だ」
「知ってどうする」
「突撃しようかと」
ウェイター姿の来栖さんを一目拝みに行こうかと……絶対に格好いいじゃん。
「絶対に店は教えない」
「残念」
見たかったな……ウェイター姿の来栖さん。白のシャツに黒のスカート、そして黒のエプロン、そして何より服の上からでもわかるおっぱい。これを見ずしてなんとするか。
だが、店を教えてくれないのであれば無念……諦めよう。
「えーっと、そこ、喫茶店にしてもただの喫茶店じゃ味気ないわよ」
聞き耳を立てていた斎藤先生がそう言う。
「じゃあ、メイド喫茶とかどうです?」
俺は斎藤先生にそう言う。定番だけど以外と王道の方がうけると思うし……あ、この世界の王道だとメイドじゃなくて執事になるのか?
「どこから衣装を借りてくるんだよ?」
しかし、おれの提案は斎藤先生にばっさりと両断されてしまう。
「ああ、そうか……」
まあ、言われてみれば確かにそうか……衣装を用意しようにも予算も限られてるもんな。
「演劇部の衣装なら当日使わないのがいろいろとあるよ、和服とか」
と、一人の女子が手を上げてそう言う……彼女はどうやら演劇部の子らしい。
「じゃあ和風喫茶とか?」
俺はふと思い付いたことをそのまま口にする。
「いいな、それ採用」
斎藤先生は俺の案がいたく気に入ったらしく俺を指差してそう言う。
「えっ、いやいやまだ皆の同意とか得てないっすよ?」
「全員和風喫茶でいいなよしオッケーだな」
答える暇を与えてやれよ! 有無を言わさず強引に決めるなよ!
和風喫茶が嫌な人もいるかもしれないだろ?
「和風喫茶面白そうだねー」
「執事喫茶とか定番なものじゃない方がいいよね」
「ってか、執事きっさとかあたしら男装しなきゃならないしさ」
「それな」
って、皆ノリ気だな……まぁ、皆がいいならそれでいいんだけどさ。
「じゃあ、うちのクラスは和風喫茶ってことで……いやーいいね、こうさっさと決まると気持ちいいねー、じゃあ有利君、言い出しっぺということで実行委員よろしく」
「んな横暴な……」
「どうせ県で終わって暇でしょ?」
ひどい言い草だな……
「暇じゃないですから、練習とかありますから……それに不慮の事故さえなければ俺だって全国狙えるんですよ」
男の選手が減ってて、元いた世界よりも水泳の質が落ちていたので、俺でも運が良ければ全国狙えるくらいはあるんだ。
運がよければな……本当……運がよければ……
「じゃあ来年頑張ってね、今は文化祭の方をよろしく、どうせ文化祭期間中は部活はどこも開店休業状態だから」
え? そうなの? なんだ、それなら別にいいか。
「もう一人実行委員は……来栖さんお願い、バイト経験あるみたいだしできるでしょう?」
「いや、そのバイトがあるんスけど……」
「て言っても六時からでしょう? それまででいいから」
「……わかりました」
渋々と頷く来栖さん
お、来栖さんと一緒ならやる気出るな、文化祭が楽しみになってきたぜ!
「頑張ろうぜ来栖さん」
「大体のことは任せるわ」
「いやいや、一緒にやろうよそこはさ」
折角一緒に仕事できるんだし、親交を深めようじゃないか。
「……つっても、実行委員ってなにすればいいんだ」
「……さあ?」
実行委員なんてやったことないのに、なにすればいいとか聞かれてもな……なにすればいいんだろう?
さっぱりワカラン。誰か教えて。
結局フランクフルトとチョコバナナの屋台になったんんだけど、チョイスに悪意あるよな、本当。
フランクフルトはトッピングにマヨネーズ
チョコバナナはホワイトチョコがあったんだぜ?
狙ってるとしか思えないよな。
まぁ、実際狙ってやったんだけどさ。




