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さて、総体編だ。これをよんで運動部に入ろうと思う人が出てくれると嬉しいな。

あのさ、羽のついてない扇風機ってあるじゃないですか?


夏に入って、そろそろ暑くなるから買ったんだ。

「よし、今日の練習は終わりだな……あ、来週は県総体なので学校は公欠だからな!」


 部活の時間に 一之瀬鶫(いちのせつぐみ)先輩がそう言う。彼女が水泳部の部長であり、月島七海(つきしまななみ)先輩は副部長だそうだ。

 妥当だと思う。


「有利君、有利君は何に出るのでしたっけ?」


 そう尋ねてくる月島先輩。この人は俺のファンって言ってたな……たしか、俺のファンクラブもあると前々から聞いていたのだが……実態はよく知らない。興味はあるけどさ。


「800mと200mの自由形ですよ」


 俺は月島先輩にそう答える。本当は1500mが良かったが……あべこべ世界では男子は800mが最長だというので、仕方なく800mを選んだ。

 

 しかし、悪いことばかりでもない。女子と男子が逆転しているということは……だ。全国の標準記録も男子はさほど速くないということだ。ま、だからといって全国には行けないけど。


「あ、私も200出るんだよ」


 そう言って話に入ってくる坂本先輩。そういえば、以前も自由形が専門って聞いた気がするな。


「そうなんですか……じゃあ、お互い頑張りましょうね」

 

 俺は愛想よく笑ってそう言う。


「おうよっ! あたしゃー、有利君の為に勝ってみせるよ!」


 俺の為じゃなく、自分の為に頑張って欲しいところだ。


「こら坂本うるさいぞ、まだ私の話の途中だ……というわけで、来週までに公欠届けを提出しておくように」


 一ノ瀬先輩がそう締めくくって部活は終わる。


「あ、有利君、一緒に帰ろうよ」


「いいよー」


 帰り道、たまたま一緒になったのでそのまま一緒に帰ることにする。


「奏さんは有利君と帰れてうらやましいですね……呪ってやりたいくらいに」


「「うわぁっ!」」


 駐輪場を、自転車を押しながら並んで歩いていると、どこからともなく現れて、奏ちゃんにそう言う月島先輩。麗奈さんといい月島先輩といい、神出鬼没な人が多い。というか、呪うとか……マジっぽくて怖いよ。


「そう言うなら、先輩も一緒に帰ります?」


 奏ちゃんが呪われてはたまらないので、俺は月島先輩も一緒に帰らないかと誘う。ついでにファンクラブについても聞きたい。俺がどれだけモテてるのか……とか。


「はい……と、言いたいところですけど、残念ながらこれから塾なので……受験生は大変なんですよね。この間も模試で散々な結果でしたし」


「そうなんですか」


「はい……数Ⅰ・Aを解かなければならないのに、間違えて数Ⅰを解いてしまったり、挽回しようと思って化学と物理を頑張ったけれど、頑張りすぎて選択問題を両方解いてしまったり」


 ちゃんとした模試は受けたことがないのでよくわからないが、月島先輩はもしかしたら……もしかしなくても天然なのかもしれない。てか天然だよな。ポンコツ系女子か……可愛いな。


「というわけで、一緒には帰れませんが……奏さん、帰り道で襲ったりしちゃダメですよ」


「……襲いませんよ」


 間があったぞ? 今の間はなんだ?


「襲ったりしちゃったら、呪いますからね」


「…………襲いませんってば」


 だから何だよその間はよ。


「じゃあ、そういうことなので、私は行きますね」


「あ、お疲れさまでした」


 手を振って走り去っていく月島先輩を見送りながらそう言う俺。


「帰ろっか?」

 

 月島先輩の姿が見えなくなると、そう言う奏ちゃん。


「そうだな」


 …………襲わないよな? いや、襲ってもいいんだけどさ。むしろバッチコイ


◇◆◇◆


「ただいま」


 奏ちゃんには襲われなかったぜ。少し残念だ。


「有利ちゃんお帰りー!」


 家に帰ると、姉ちゃんが玄関まで出迎えてくれる。しかし、なぜかビデオカメラと高級そうな一眼レフカメラを両手に持っている。


「ん、お姉ちゃん帰ってたんだな……って、なにそれ」


 俺は、今まで使っているところを見たこともない、新品のビデオカメラとカメラについて姉ちゃんに聞く。


「え? 何ってビデオカメラと一眼レフだぜ! しかも最新式!」


 どや顔でそう言う姉ちゃん。それは見ればわかる。俺が聞きたいのはなんでそんなものが家にあるのかということだ。


「新しく写真撮る趣味でも始めた?」


 特に趣味のなかった姉ちゃんが、なにかしら趣味を始めるのは良いことだから歓迎するけど……写真とか今までさほど興味なかった筈なんだが、なにがあったんだろうか。


「またまたぁ~、有利ちゃんてばとぼけちゃって……来週から大会でしょ? だからその勇姿を納めなきゃダメでしょ」


 なるほど、それでカメラを……いやいや、わざわざその為に買ったのかよ。


 俺のことを思ってくれてるのは嬉しいが、なにも、そこまでする必要はないって。そもそも姉ちゃん来れないし。


「姉ちゃん、大会は平日だからな?」


「うん、それが?」


 うん、それが? じゃないよ。


「仕事あるでしょ?」


「そんなもの休むよ! 有利ちゃんの方が大切だもん」


 いや、休んじゃダメでしょ! 全国大会の応援とかならまだしも、たかが県大会ごとき、応援で会社を休んでまで来るようなものじゃないって。


「けど、ついこの間さ、大事なプロジェクトの責任者を任された……って言ってなかったっけ?」


「うっ……」


 図星をつかれたらしく、少し気まずそうな表情になる姉ちゃん。


「責任者が休んじゃうと……支障がでるんじゃないの?」


「いやー……けど、皆だって仕事できるし……」


 明後日の方向を見ながらそう言って誤魔化そうとする姉ちゃん。だが、もう手遅れだ。


「あまりよく知らないんだけど……責任者が居ないと進まない仕事もあると思うんだけど」


「うぐっ……」


「会社の人に迷惑かけるのは、あまりよくないんじゃないかな?」


「ぐっはぁっ」


 俺の連続コンボにより、撃沈して両膝を床に着く姉ちゃん。


「姉ちゃん、仕事……頑張ろうね。俺も大会頑張るからさ」


「……わかった」


 しょぼんと肩を落としてそう言う姉ちゃん。

 ごめん姉ちゃん……応援してくれる気持ちだけでも嬉しいから。気持ちだけ受け取っておくよ。


 ちなみにビデオカメラとカメラで総額十万円近くするらしい……と、いう話をエミから聞いた。


 姉ちゃん、いくらなんでも金をかけすぎだよ。


 だが……まぁ、せっかく買ったのだ。このままお蔵入りしてエタることなく、いずれ活躍の場が来ることを祈ろう。


けど赤く光るだけで、風はこねぇし、なんか逆に熱くなってきたし……くそ、不良品掴まされたわ。


ふざけやがって……。



ブクマ外しの流行が来た。こっちくんなあっち行け


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