以降はあべこべ小説からバトルスポーツ小説になります。
球技大会当日
「頑張ろーぜ、来栖さん」
体操着にジャージ、そしてテニスのラケットを持った俺は、テニスコートでパートナーの来栖さんにそう言う。
「まぁ、楽なの選んだけどやるからには優勝を目指すさ」
やる気は十分やな。怪我をしない程度に頑張ってな。
「そうだね、けどルールは大丈夫?」
「ああ、ちゃんと本を読んで勉強してきた」
ラケットをくるくると回しながらそう言う来栖さん。
「そっか、じゃあ安心だね」
「それじゃあ、空条来栖ペアと、モブAモブBペアの試合お願いします」
名前……まぁ、間違いじゃないけどよ。
審判の子に名前を呼ばれ、コートの中に入る俺と来栖さん
「あ、来栖さんのサーブからだよ」
俺はそう言って来栖さんにボールを渡す。
「ああ……わかった」
「それでは試合を始めてください」
審判の子がホイッスルを鳴らしてそう言う。
「……喰らえ!」
来栖さんは、ボールを高く放り投げると、ラケットを後ろに振りかぶった状態で溜めを作り、ボールが落ち始めると同時に地面を強く蹴り、上半身捻りも加えて、全体重を乗せた強烈なサーブを放つ。
目で追えない程のスピードで放たれたサーブは、空を裂き、真っ直ぐと飛んでいく。
相手選手の顔面に向かって。
「ぶべらっ!」
来栖さんのサーブに反応できず、顔面でまともにボールを受けた女子選手は、仰向けに倒れて気を失う。
「よし、あと一人だな」
ガッツポーズをとってそう言う来栖さん。
「ちょいちょい! 来栖さん!? 何してんの!?」
「ん? テニス?」
きょとんとした表情でそう言う来栖さん。
テニスじゃないから、テニヌだからそれ。
「あー、来栖さん、ルール勉強するときに使った本っていうのは……もしかして……」
「テニプリだが? ここ三日で漫画喫茶に行ってテニプリを全巻読んできた」
やっぱりか!
「テニスってのは、ようするに相手を再起不能にすればいいんだろ?」
「いや、違うよ!?」
「そう……なのか? けど、龍之介はそれであっていると……」
首を傾げてそう言う来栖さん。
龍之介ぇ! テメエ、何来栖さんに吹き込んでんだ!
俺はそう思いながら、コートの脇で試合を観戦している龍之介を睨み付ける。
「……」
俺と目が合うと、龍之介はナイスサーブだったなとでも言うように、サムズアップをする。
ダメだ。あいつもルールを理解してねぇ……ここは俺がしっかりとしないと。
「来栖さん……あのね、テニスっていうのはだね」
「ああ、わかってる」
ううん、ちがうの。何もわかってないの来栖さん。お願い聞いて
「違うんだ来栖さん、プレイヤーにダイレクトアタックをしていいのは遊○王だけなんだ」
「安心しろ、男には手加減する」
いや、むしろ男の方は気にせずに殺って構わん。女の子に手加減してあげて……ってそうじゃねえよ。安心できる要素がねーよ。
「テニスってのは」
「空条来栖ペア、早く次のサーブを」
テニスのルールを一から説明しようとしたが、審判の子に早くゲームを進めろと注意されてしまう。
「……うん、もういいや」
説明するのを諦めた俺は、来栖さんにそう言うと、元の位置について一人残った男子生徒に憐れみの目を向ける。
可哀想に……小鹿みたいに震えて……ごめんモブ君、俺じゃ来栖さんは止められない。せめて、打ち所が良い事を祈るぜ。
「喰らえ!」
無慈悲にも放たれた一撃が、男子生徒に迫る。
それはまさに無慈悲の咆哮のような一撃だったと……後のモブペアは語る。
「……以外と早く終わったな」
そりゃね……だって一方的にフルボッコにしただけですし……。
俺なんてボールに触るどころか、ラケットを振ることすらしてないからな。
「次の試合まで少し時間があるが……どうする?」
「サッカーの方を見に行くよ。奏ちゃん達と約束してたから」
「そうか、ならアタシはここで待ってるとしよう」
「わかった。じゃあちょっと行ってくる」
俺は来栖さんにそう言うと、奏ちゃん達女子がサッカーをやっているグラウンドへ向かう。
◇◆◇◆
「あ、ちょうどやってる」
俺がグラウンドに着くと、ちょうどこれから奏ちゃんと麗奈さんのクラスの試合が始まっていた。
「やあああああああ!」
ドリブルでディフェンス陣を突破し、ゴールを守る麗奈さんの元まで一気に突き進む奏ちゃん。
「この私からゴールを奪えるというのなら、やってみるがいい!」
両手を広げてそう言う麗奈さん。
「でやああああああああ!」
叫びながらボールを全力で蹴り、シュートを放つ奏ちゃん
「甘い!」
そして、麗奈さんは飛んで来たボールを殴り、弾き返す。
しかし、奏ちゃんは素早い反射神経で、弾き返されたボールを再びゴールに向かって蹴る。
「なんの!」
そして、再びそれを弾き返えす麗奈さん。
「まだまだ!」
さらにそれを蹴りかえす奏ちゃん。
サッカーの筈が、テニスのように延々と続くラリー。
……つーかなげぇ。
「あ、そろそろ試合始まるから行かないと……」
時計を見て、そろそろ自分の試合が始まる頃だと気付いた俺は、二人の試合を見るのをやめて、テニスコートに戻る。
有利sideend
奏ちゃんside
「シュート!」
「しまった!」
長いラリーの末、私のシュートが相手のゴールに入る。
やった! この戦いを制したのは私だ! 有利君見てくれたかな?
そう思いながら、私はギャラリーの中から有利君を探す。
「……って居ない!」
さっきまで居たのに、もう居なくなってる!
そんなー!




