表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/74

あべこべだから、主人公は立ち位置的にはヒロインになるのかな?

「部屋からラップ音が聞こえるんだけど……」

「HEY YO YO YO!!」

「いや、そっちのラップじゃねーよ」

「え? 妖怪がラップ対決してるんじゃないの?」

「どうしてそうなった」

フリーフォールにバンジージャンプと恐怖を売りにしているだけあって、様々な絶叫アトラクションがあり、俺達はフリーパスの優先的にアトラクションで遊べる権利を使って、片っ端から制覇していった。


「バンジージャンプってはじめてやったけど、面白いな」


バンジージャンプを初めて体験した俺は、そう言いながら歩く。


あれスッゲー楽しいな。機会があればまたやりたいな。


「有利君初めてだったの? 後ろ向きに跳んだからてっきり慣れてるのかと……」


「だって、そっちの方がスリルあるじゃん」


正直前から飛ぶのが怖かったから、後ろ向いて跳んだだけなんだけど……まぁ、そっちの方がよっぽど怖かったけど。


「お化け屋敷の時とはえれぇ違いだな……あんなにビビりまくってたのによ」


「うるせーよ」


バンジージャンプは覚悟を決めれば一瞬だけど、お化け屋敷はずっと恐怖が続くじゃねーかよ。しかも、どこから襲ってくるかわからねーしよ。


「喉乾いたな、俺ちょっとなんか買ってくるわ……皆何がいい?」


かなり遊んで、喉が乾いた俺は皆にそう聞く。


「俺はなんでもいい」


「アタシは別にいらないかな」

「私も喉は渇いてはいないな」


そう言う来栖さんと麗奈さん。


「あ、私も一緒に行こうか?」


「ん、一人でいいよ。奏ちゃんは何がいい?」


奏ちゃんが手伝いを申し出てくれるが、一人で足りるので大丈夫だと断る。


「……えっと、じゃあ、オレンジジュースとかでいいよ」


「オッケー、買ってくるよ」


俺はそう言って、売店に向かう。


「近くにはないか……少し遠いな」


辺りを見回して売店がないか探したが、近くにはなかった為、地図を開いて一番近い売店に向かう。


「すいません、オレンジジュース三つお願いします」


売店まで来た俺は、売り子のお兄さんにそう言う。


「600円になります」


俺はお金を渡して、ストローの刺さった、プラスチック製の蓋付きのコップに入ったオレンジジュースを受けとる。


「えーと、こっちだっけ?」


記憶を頼りに、来た道を引き返しながらそう呟く。


「ねえ君、一人?」

「可愛いね、高校生?」

「私達と遊ばない?」


少し歩くと、数人の女性が俺に話しかけてくる。


んお? なんだ、ナンパか? よいぞよいぞ。

しかし、タイミングが悪い。

今は一人で遊びに来てるんじゃなく、皆を待たせてるからな……悪いけど、付き合えない。

街中で一人の時なら別だけどさ。


「すいません、ちょっと連れがいるので」


俺はそう言って、その女性達の脇を抜けようとする。


「えー? いいじゃん、アタシらと遊ぼうよ」

「そっちの方が絶対に楽しいからさ」


しかし、そう簡単には逃がしてもらえず、行く手を遮られた上に周囲を取り囲まれてしまう。


参ったな……どうしようか。ナンパされたことないから、どう対処していいかわからん。


漫画とかだと、ナンパされた時ってヒロインはどうやって対処してたっけ?


…………ダメだ、あいつら全員主人公に助けてもらってやがる。参考にならねぇわ。


「えーっと……友達を待たせてるので、通して貰えませんか?」


俺は女性にそう言って横を通り抜けようとする。


「そんな事言わずにさ、いいじゃない少しくらい」


しかし女性は、俺の行く手を遮り、さらには俺の肩に腕を回してくる。


……逃げれぬ。どないしましょ。


いやね、俺もお姉さんと遊びたいですよ。美人さんですしね。

けど、今は友達と遊びに来てるんで、そっちを優先させてもらえませんでしょうかね?


「えっと、また今度にしてもらえませんか?」


それなら俺も遊べるからさ。


「えー? じゃあ連絡先教えてよ」


携帯を取り出してそう言う女性。


やっぱ、そうなるか……。


あんまり個人情報は教えたくないんだが……教えなきゃ解放してくれなさそうだな。


しゃーない、LIMEのIDだけ教えるか。


俺は少し考えてそう決めると、ジュースを片手で抱えるようにして持ち、ポケットから携帯を取り出す。


「LIMEでいいですか?」


「オッケーオッケー、全然いいよ」


そう言いながら、LIMEの画面を開く女性。


「有利君!」


「……ん、奏ちゃん」


俺も携帯のロックを解除して、LIME のアプリを開こうとしたとき、奏ちゃんの声が聞こえたので、顔をあげて声のした方向に目を向けると、奏ちゃんが走ってくるのが見えた。


「あの! 私達、友達とまわってるので、そういうのはやめてもらっていいですか?」


奏ちゃんは走ってくると、そのまま女性と俺の間に割り込んでそう言う。


……なんか、こういう展開よく漫画とかで見るんだけど、立ち位置逆じゃないっすか? 


奏さん、俺の位置ヒロインポジなんだけど、俺はヒロインじゃなくて主人公なんだけど。


「はぁ?」

「いいじゃん、その子ちょっと貸してよ」


女性が、突然割って入ってきた奏ちゃんに苛立ちを覚え、詰め寄りながらそう言う。


「無理です!」


しかし、奏ちゃんはそれに動じずキッパリとそう言う。


「アタシらもさ、暴力とか嫌いなんだよね~」


そう言いながら、奏ちゃんの肩を掴む女性。


おいおい、待てよ。こんなところで喧嘩でもするつもりか? バカなのか?



「へぇ、奇遇だな、アタシも暴力とかそう言うの嫌いなんだよね」


突然、後ろから女性の肩を組んで、威圧するようにそう言う来栖さん。


来栖さんも来てたんだな。

つか、迫力すげぇ……俺に向けられてる訳じゃないけど、めっちゃ怖いっす。


「ほ、ほんとそうだよね~。暴力とかこの世から消えてなくなればいいのにね~」

「そ、それなー」


来栖さんのその鋭い眼光と、迫力に気圧されたのか、女性は作り笑いを浮かべながらそう言う。


「ご、ごめんねー。友達と遊んでたのに邪魔しちゃって」

「ま、またねー」


そして、作り笑いを浮かべたまま、逃げるように去っていく女性達。


睨みだけで退治するなんて……来栖さんすげえ……。流石ですわ来栖様。


「有利君、大丈夫だった!?」


ナンパしてきた女性達が居なくなると、奏ちゃんがすごい勢いでそう聞いてくる。


「ああ、大丈夫」


俺はなにもされてないからな。


「そっか、よかったー……絡まれてたから危ないと思って」


「まぁ、危なくはなかったと思うけど……というか、なんでここに?」


俺はどうして奏ちゃんがこんなところにいるのか尋ねる。


「なかなか帰ってこないから、ちょっと心配して、それで探してたんだ」


「そうだったんだ。おかげで助かったよ、ありがとう」


わざわざ探しに来てくれるなんて、ええ子やでホンマ。


「いいよ。それより、有利君がなんともなくてよかったよ」


ほっと胸を撫で下ろして、微笑みながらそう言う奏ちゃん。


くっ……可愛い過ぎるだろっ! その笑顔!


「そろそろ戻ろうぜ。他の二人も待ってる」


携帯をいじりながらそう言う来栖さん。多分龍之介か麗奈さんに連絡してるんだろう。


「そうだな」


俺はそう返事を返す。


「私は目玉オヤジだYO」

「そんなオヤジいやだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ