デートって言えないような気がしてきた。
だって、デートなんてしたことないんだよ俺は……
そもそも初恋だってまだだしな!
このカッキイ
美しい背の高ェ
足の長い愉快で
知的でチ○ポのデケえ俺様が……何故モテないんだ。
有利side
イヤーうまかった。ありゃたまらん、よだれズビッ! なんてね。
二人で牛丼を食べ切り、代金を支払い店を出る。
メガ盛り牛丼……なかなかのサイズだったぜ。大食い番組でしか見たことねーべあれ。
しかし、奏ちゃん……結構な量を食べるね。半分以上食べたんじゃないかな。
「さて、食べたしリュックでも見に行こうか」
「せやな」
と、奏ちゃんにそう言われ頷くと、歩いて目的地の大型量販店に向かう。
「色々あるね」
「そうだな……これだけ多いと逆に迷うよな」
色々見たいからと来たものの、種類が多いと逆に絞れなくなるやつ。
これは選ぶのに時間かかるパターンだわ。
「そうだね……どれがいいのかよくわからない」
「登山だけじゃなく、ちょっと出掛けるときとかにも使えるようなのがいいな」
街中で背負っててもおかしくないようなやつ。師匠みたいにオサレなのがいい。
いや、それだとオサレすぎて逆に浮くか…………やっぱり、ここはシンプルに行くべきか。
承太郎もシンプルなのが強いって言ってたしな。
あと、少しカジュアルなのがいい。
色は……黒か青っぽいのがいい。
……あ、これがいい。これにしよう。
俺はたまたま目について気に入った、シンプルな黒いリュックを手に取る。無駄な装飾品はない実にシンプルなリュックだ。
うん、格好いい。これが一番格好いいな。
「奏ちゃん、俺は決まったよ」
俺はそのリュックを持って、奏ちゃんの所に向かう
「あ、有利君……これ、有利君によくないかな?」
と、奏ちゃんはそう言いながら、猫耳フードのついた紫のリュックを渡してくる。
え……? ま、マジっすか? ガチで言ってるんですか?
俺にその猫耳フードのついた、女の子は背負ったらスッゴい似合いそうな、可愛いリュックを俺に装備しろと?
まぁ、装備するだけならいいか。
……一度装備したら外れない、呪われた防具じゃないよな?
しかし、期待に満ちた目の奏ちゃんを見ていると断りづらいし……。
買わなきゃいいんだよ。買わなければどうということはない。
教会に行けば呪いも解いてもらえるしな……って、なんで呪われてること前提なんだよ。
「背負うだけならね」
と、俺はそう言って、奏ちゃんからリュックを受け取り背中に背負う。
「フードも着けて……やっぱりスゴい可愛いよ有利君!」
無理矢理フードも被せられる。俺は男なんすけど……可愛いってより格好いいって言って貰えませんかね?
というか、なんで猫耳フードまで被る必要があるんだ。
だが、この背負い心地……中々いいじゃないか。
い、いかん、危うく買うかどうか考えそうになってしまった。
「有利君、可愛いからスゴい似合うね。それにしちゃいなよ」
……やけに猫耳フードを押してくるな。いや、けど買わないぜ
「いや、俺はこういうシンプルなのがいいかなって思ってるんだけど」
「そんな勿体ないよ……それに、それ値段大丈夫なの?」
値段……? そういや見てなかったな。まぁ、三千円くらいだろ。
と、思いながら値札を見る。
「四……万円……マジで?」
俺、見る目あるな……ってそうじゃない、流石に四万は予算オーバーだわ。
「リュックって四万もするんだ……」
と、少し驚いたようにそう言う奏ちゃん。俺もビックリだよ。
「…………」
……どうしようか、他のリュックはこれと比べるとなんか微妙だしな
「有利君……買うの?」
「いや、流石に高すぎるよ」
「そっか、じゃあその猫耳だね」
「え?」
ちょっと待って、いつの間に二択に絞られてんの? 俺の希望と真逆だからなこのリュック。
「えっ!? 違うの?」
なんでそこで驚く……どれだけ俺に猫耳フードリュックを買わせたいんだよ。
「いや、俺はもっとシンプルなのがいいかなって思ってさ……それに、こういう猫耳フードは奏ちゃんみたいな子にこそ似合いそうだし」
「いや、私は女子だし……そういうのはあまり似合わないよ。どっちかっていうと、有利君が持ってきたやつの方が似合うよ」
「そんなことないって、ほらほら」
俺は、リュックを下ろして奏ちゃんに押し付けながらそう言う
「え……ええぇー……」
と、戸惑いながらもリュックを背負う奏ちゃん。
「フードも被ってさ」
似合ってる似合ってる。やっぱり可愛い女の子がつけた方がいいね。
「ちょっ……もぅ有利君……私はもっとシンプルな女の子らしいのでいいよ」
そんな勿体ない……
「奏ちゃんがそれにするなら、俺も猫耳フードリュック買おうかな」
「これにする」
即答かよっ!
「いや、冗談」
「じゃあ、レジに行こっか有利君」
冗談だからな……という俺の台詞を遮ってそう言う奏ちゃん
マジかよ……俺も……これ買うのか?
黒の猫耳フードリュックを手に取り、チラリと奏ちゃんの方に視線を向ける。
奏ちゃんは、嬉しそうに紫色の猫耳フードリュックを持って待っていた。
冗談ですって言えねぇ…………しかたないか……
そうして、俺は黒の猫耳フードリュック、奏ちゃんは紫色の猫耳フードリュックを購入し、無事帰宅したのであった。
家に帰ってしばらくした後、そのリュックを前にして少し後悔した。
あのときに冗談半分であんなことを言わなければよかった……と。
まぁ、買ってしまったものはしょうがないし、買い物自体は楽しめたので諦めはついたが。
今日のデートの結果。
買い物は楽しめたが、買い物自体は失敗した。
奏ちゃんside
リュックを買い、家に戻って来た私は少し後悔していた。
有利君とお揃いなのはとても嬉しい。
けど、女の私がこれを持っていくと変に思われそうだ。
「…………有利君とお揃いでプライスレスだからいいかな」
今日のデートの結果
買い物は楽しめたが、買い物自体は失敗した。
有利とお揃いでプライスレス。
そうか、あまりにも完璧過ぎるから、周りが近寄り難いんだな。納得だわ。




