すき屋か吉野屋……どっちにするか迷った。
友人のK君と回転寿司に行ったときです。そろそろ〆にパフェでも食べようということになり、それぞれパフェを注文しました。
私は何となく「K君、なんのパフェ頼んだ?」と聞いてみました。
すると、K君はこう答えました。
「トロサーモン」
…………裏メニューですか?
奏side
まさか、有利君とデートすることになるとは……これ、告白したらいけるんじゃ
と、部活が終わり、有利君を待ちながらそんなことを考える。
いや、ダメよ。有利君は天然ビッチ……誰とでもデートには行くって言ってたもの。ここで勘違いしてはダメ
勝負はこれからよ。ここでいかに有利君を楽しませることができるかがポイントね
けど、折角するならもうちょっとマシな格好がよかったかも……上下ジャージて……
「ごめん、お待たせー」
と、有利君が走ってくるのが見える。ヤバイ……緊張してきた。
「じゃあ、行こっか」
と、二人でならんで自転車で駅まで向かう。
「ど、どういうリュックを買うの?」
会話を途切れさせてはならないと思い、積極的に話しかける。
「決めてないよ。だから見に行くんじゃん」
それはそうだ。私のバカ……もっと他に話の振り方はなかったの?
えーと……えーと……まずい。なにか話をしなければ……ごめんなさい、こういう時、どうすればいいか分からないの。
と、考えているうちに駅に着いてしまい。特に話すこともなくそのまま電車に乗る
「どこでお昼たべよっか? あまり外食しないから詳しくないんだよね」
と、有利君の方から話しかけてくれる……ありがたいけど、自分から話せなかった私が情けないです。
「そうだね……ネットでどこかお店でも探してみるね」
私が知ってるのは、駅前のラーメン屋とか牛丼のすく屋等、女臭いところばかりで、あまり男が好んで入るような店は知らなかったので、スマホを取り出して検索してみる。
事前にデートだと知っていれば、オシャレなお店とか調べれたのに……いや、こういう事も予想して、あらかじめ調べておけば良かった。
「ん、わざわざ調べなくても、奏ちゃんの知ってる所とかで良いよ」
「え、けど私が知ってるのってラーメン屋とかすく屋とかばかりだよ?」
「いいじゃん、あまりお金もないし安く済ませようよ」
……驚いた。まさか、有利君がそういう店が大丈夫だったなんて。
「というか、私がおごるよ?」
デートならば、女性が男性をリードし、女性が男性におごるのは当然だ。
「いいよ、奏ちゃんバイトとかしてないでしょ? 自分の分は自分で払うよ」
なん……だと……。なんてよくできた男子なんだろうか、有利君は。
「そっか……じゃあ、すく屋にする?」
ラーメンか吉見屋かで迷ったが、ここはすく屋で。 ラーメン屋は匂いがキツくて嫌う男子が多いので、ここはすく屋が安全牌で間違いないはず。
「おっけー。じゃあそうしようか(ラーメンが良かったけど……まぁ、牛丼も美味しいからいいか)」
よし。有利君もおっけーだし、正解っぽいかな。
「先に食べるそれとも、少しリュック見てからにする?」
と、私が聞いたところで、有利君のお腹が可愛らしい音を立てる
「あはは……先に食べたいかなー……」
と、恥ずかしさを誤魔化すように笑いながらそう言う有利君
これは可愛すぎるよ! あざといよ有利君! なんかスゴい興奮してきた! あ、ヤバイ鼻血でそう……
鼻を押さえて上を向く。
「どうしたの?」
「気にしないで大丈夫」
ちょっと、欲望が体の端から滲み出て来そうになっただけだから。
◇◆◇◆
「俺、すく屋来るの久しぶりだな……そもそも外食自体久しぶりだよ」
すく屋に入ってきた有利君は、そう言いながら席に座る。
「そうなんだ、いつも家で作ってるの?」
「たまにね……いつもは妹が作ってるんだ。妹が拗ねた時とか、風邪引いたりしたときとかかな、俺が作るのは…………メガ盛り牛丼ってスゴいね。ちょっと見てみたい」
と、メニューを見ながらそう言う有利君
けど、流石に男子の有利君には、メガ盛りは食べきれないんじゃないかな……女子の私ですらキツいのに。
「やめた方がいいと思うよ」
「そうかな……んー、見てみたい。あ、これ頼んで二人で分けようよ」
それほどみたいらしい有利君は、そんな提案をしてくる
……なにそれ、本物のカップルみたい。うへへへへ。
「有利君がよければ」
私の方に断る理由なんてない。むしろしてくれるならば、土下座してでもお願いしたいくらいだもん。
「俺はおっけー……小皿二つ頼んで分けよっか」
「そうだね。じゃあ、私注文するね……すいませーん」
私は手を上げて店員さんを呼ぶ
「ご注文はなんですか?」
店員さんが注文を伺いに来た
「えーっと……小皿二つに分けてください」
ので、私はそう注文をした。
「……?」
「ぶはっ……あはははは」
と、なぜか固まる店員さんと、吹き出して笑う有利君
なにかおかしいことでもしたかな?
「……奏ちゃん、それ小皿割ってる」
と、有利君に言われて気付いた。私は『牛丼メガ盛りください、それと分けるように小皿二つお願いします』と注文をするべきだったのに、間違えて小皿を二つに分けてくださいとお願いしてしまった。
というか、すく屋にきて牛丼頼まずに小皿だけ頼むって……バカじゃないですか……
「あー、奏ちゃん面白い……あ、牛丼メガ盛りと、小皿二つお願いします」
「かしこまりました」
と、私がショックを受けている間にささっと注文を済ませる有利君
……私……今日良いところなしだよ……これ今日帰ったら多分泣く。
「まぁ、奏ちゃん、誰にでも言い間違いはあるよ。そんな落ち込まないでさ」
「……有利君」
その慰めが逆に心に突き刺さる……
けど、いつまでも失敗を悔やんでいても仕方ないし、ここは切り替えて、この先を頑張ろう。
トロサーモンパフェなんて……あなた以外に誰が頼むのでしょうか。




