後輩に弁当作ってきてもらうって……すっげーいいよな。
後輩ちゃん「おそ松全員言えますか?」
俺「当たり前だろ」
◇◆◇◆
普通にチャリで来たが、結構しんどいわこれ。
「なんだ、チャリで来たのか?」
駐輪場でバッタリと龍之介と遭遇する。
「お前もか」
「ああ」
と頷く龍之介
「あ、有利君と龍之介君」
と、丁度そこに
「……染谷……なんとか」
龍之介、名前覚えてないなら苗字だけでいいだろ。わざわざなんとかって付け加えなくてもさ
「………えっと、奏です」
ほらみろ、奏ちゃんもショック受けてるじゃないか
「おはよう」
「おはよう有利君」
これだよ。これがコミュニケーションの取り方だよ。
愛想よく笑って話しかければ好印象なんだよ。ただしイケメンに限る。
……さて、料理部の顧問に部活やめるっつって、水泳部の顧問に入部届け出さなきゃな。
「じゃあ、俺ちょっと用事あるから」
俺は二人にそう言うと先に教室に向かい、荷物を置いた後に職員室に向かう。
んでもって、そこで料理部を退部するって行って、水泳部に入部届けを出した。
顧問も変わってって、顧問くらい覚えとけと軽く怒られたが……まぁ、大して問題はない。
さて、用事も終わったし
…………キングクリムゾンッ!!
昼休みまでの過程を『省略』するっ!!!!
何せ、二人とクラス違うから何もイベント起きなかったし。
「龍之介、飯食べようぜ。屋上で」
昼休みになったので、弁当を持って龍之介のクラスに突撃する。
「おう。少し待て」
と、黒板の内容をノートに書き写しながらそう言う龍之介。さては授業中寝てたな。
「あ、有利君……水泳部に入るって、本当なの?」
と、たまたま近くにいた奏ちゃんが、俺にそう聞いてくる
「本当だとも。もう入部届け出してきた」
「そっか…………じゃあ今日からよろしくね」
妙に間があったのが気になるが、そう言って財布を持って教室を出ていこうとする奏ちゃん。
と、それを見てこの有利の容赦せん頭脳が、容赦せんアイデアを思い付いた。
コイツに弁当消費させよう。食費も浮いて、弁当も無駄にならず、winwinじゃないか。
「奏ちゃん。お昼買い弁なの?」
「うん、そうだけど」
「俺さ、今朝妹の分の弁当を間違えて作っちゃってさ。弁当二つあるんだけど」
「いただきます」
よかったら一緒に食べない? と、そう聞く前に手を合わせてそう言う奏ちゃん。
「答えるの早いね。まだ質問すらしてないってのに……まぁいいや、それじゃあ一緒に食べようか」
なんとも理解の早い事で……最早エスパーの領域だぜ。
テレパシー少女奏……うん、悪くない。
◇◆◇◆
「一人増えてるな」
屋上で三人で円になるように座り、弁当を食べながら話す。
「うん、俺が誘った」
「そうか……染谷……楓だっけ?」
惜しいっ……一文字違う。かえでやのーてかなでですわ。
「惜しい……奏です」
「……そうか、覚えた」
覚えるの遅いけどな。
「ところで有利……お前、水泳部に入るっつっても、料理部はどうするんだ」
話題は俺が水泳部に入ることについてへと切り替わる。
「やめたけど? 文化部なんかやってられないっす」
俺ちゃんこう見えてなかなかに運動派なのよ。
昨日の事は忘れろ。何もなかった。ボールが顔面にぶつかったとかなかった。
「やめるってお前……マジで料理部から水泳部に入るのか?」
「マジっす」
有言実行ッスよ。
「やめといた方がいいんじゃないか?」
「それは……私も少しはそう思うかも。昨日冷静になった時に考えたけど」
「なんで二人して反対なのさ? しかも奏ちゃん唐突な手のひら返しだね」
あとさあとさ、冷静になった時ってなに? なんか意味深に聞こえるんだけど……
そもそも、今さら言われてもね……無理っす。取り消せないっす。
「あ、いや、入ってくれるっていうなら大歓迎だけど、周りとかどうなんだろうかな? って思って」
焦って弁解する奏ちゃん可愛いッス。
「……ああ、これ以上悪目立ちするのはよろしくないんじゃねーか?」
と、奏ちゃんの言葉に頷く龍之介。
「悪目立ち? 別にしてなくね?」
有利さんは別に悪目立ちしてないと思うんですけど。心当たりないし。
「(……ああ、コイツ天然だったわ)」
「おい、なんかスッゲー失礼な事考えてるだろ龍之介。目でわかるぞ」
「ま、まぁまぁ……けど、有利君がそれでいいなら今日からよろしくね」
「よろしくぅ」
「……まぁ、好きにやれよ」
「……それよりさぁ……ま、周りの女子達の視線が痛いんだけど……」
と、半泣きになりながらそう言う奏ちゃん。
すげーよな。周りの子たち皆こっち見てるし。なんか殺意のこもった目を向けている。
「だろうな」
と、納得したように頷く龍之介
「なんでだろーな?」
俺はさっぱりわからないので、首をかしげる。
「お前のせいだな」
「え? 俺のせいなの?」
なんでやねん。
「そうだねー……まぁ、私もこうなることはわかってたから、自業自得だけども」
え、奏ちゃんまで……なんでや……なに悪いんや。
美女に囲まれて食事してるわけじゃあるまいし……あ、そっか
「ようは、イケメン二人に囲まれて昼飯食べてるからか。周りは嫉妬してるわけね。納得した。」
「うん、そういうことなんだけど、直球だね」
「こいつはそういう奴だ」
「別にさ、ご飯くらい誘われればいつでも行くのにね」
「……流石天然ビッチ……そういうことをいとも簡単に言うとはな」
「え?」
どこがビッチ発言だよ。別に、帰りにラーメンでも食べて行こうぜって誘われたら普通に行くでしょ。
なんか、外野も騒がしくなってきたけど……俺はそんなに変な発言してないからな?
俺は悪くないぞ! だって悪くないもの。
「(なるほど、デートに誘えば簡単に行く……じゃあ、勝負はデートの内容にかかっているわけね)」
「(多分、コイツはご飯=ラーメンやファミレス程度にしか思ってねぇだろうが……周りは普通にデート誘われれば、誰とでも行くって勘違いしてるだろうな。)」
俺「えーと、一松、二松、三松、四松、五松、六松……十四松だろ?」
後輩ちゃん「先輩……多いっす」
俺「けど、十四松っていたよな……」
後輩ちゃん「いるっす。けどそれだと七人になるっす。」
俺「じゃあ、何松がいらないんだ?」
後輩ちゃん「一と十四以外っすね」
俺「それだと二人じゃん……」
後輩ちゃん「二人しかあってないっすから」