とりあえず、ふざける
うるさい! 俺は好きなようにやるんだ‼
そんなことよりチミチャンガ食べたい。
どうも世界の様子がおかしい……
異変に気づいたのは朝だ。目が覚め、ジャージ姿のままリビングへ降りると、妹が朝食を食べていた。
ここまではいい。問題はこの後だった
「ん、おはようお兄ちゃん……って、ちょっとなんて格好してんのよ!」
俺が声をかけると、振り向いた妹に怒鳴られる。
「えっ……ジャージ」
下はパンツを履いているが、上はジャージの下になにも着ていない。その状態でチャックを半分程下げているので、多少は胸板が見えているだけだが……別にそこまでとやかく言われるほどじゃない……と思う。女じゃあるまいし。
「お兄ちゃんは男なんだから、そんな格好しちゃダメでしょ」
と言われ、さらに俺の頭は混乱する。
いや……むしろ男だからこういう格好でも平気なんじゃねーかな……あ、男子に慣れていないお嬢様方には、俺の鍛えられた胸筋は刺激が強すぎるって意味か?
なんでお前がその心配をするのか、イマイチ腑に落ちんが……まぁそれなら納得できなくはないが。
「もう、ほら早く食べてよ。ジャージもちゃんと着る!」
少し赤くなった顔をパタパタと手で扇ぎながらそういうエミ
「お、おぉ……」
俺はとりあえずジャージのチャックを上まで上げ、席につくと朝食を食べ始める。
「ん、マンガここに置きっぱなしじゃないか」
「ん、ああ昨日読んでたから」
食卓の上に無造作に置いてある妹のマンガが目に入り、何となくパラパラとめくって見る
「……ん? んん?」
あれ? なんでこいつお色気の術常に使ってんの? 服は着てるけど……つか、サスケ女の子になってんの?
サクラちゃんもカカシ先生も女じゃん……あ、サクラちゃんはもとからだった。
おい! なんでお色気の術で男に戻ってんだよ。そして何故に裸になる! 引くな! ハーレムの術に至っては地獄絵図じゃねぇか!
そしてなんで敵がそれ見て鼻血だしてんだ……訳わかんねぇ。少なくとも、俺の知ってるナ○トはこうじゃないぞ……
「どうなってんだ……はっ! これが噂に聞くボルトか? あ、ちげぇナル○だ……」
読んだことはないが、噂は耳にする例のボルトかと思い、表紙を確認するが……表紙にはでかでかとナルトと書かれてあった……
そこで俺は気付いた。ひとつの結論にたどり着いた。
これは同人誌だっ! あっ、ジャン○コミックスって書いてあるぅぅぅぅ! 同人誌じゃないぃぃぃ!
「お兄ちゃん、マンガ読んでないで早く食べなって……」
そう言いながらソファーに座り、テレビをつける妹。
『昨夜未明、男性下着を盗んだとされる20代女性が逮捕されました……』
なにその痴女……すげぇな。普通は逆だよな
『次のニュースです。男子児童に性的なことを強要したとして、30代の女性教師が逮捕されました』
これも普通は逆だよな……
『近年、男性車両のおかげで痴漢の被害も減っておりますが、それでもその被害は絶えず……』
「いや、待て待て待て! 流石におかしいだろ! なんだよ男性車両って、むさ苦しいわ! いろいろおかしいだろ!」
流石に無視できなくなり、思わずツッコミを入れる。
「お兄ちゃんうるさい……どうしたの? 朝から変だよ?」
すると、妹に叱咤されたので口を閉じる。
と、このようにどうも色々とおかしいのだ。急に世界が変わっていた。
『本日、日本国の女王様がアメリカへの訪問を……』
民主制が王制に変わってたり……天皇どこ行ったよ……
とにかく、いろんな事があべこべになっていた。
「どうせ変わるなら、もっとファンタジー要素多目がよかったぜ」
ファンタジーな世界で、エルフとかダークエルフとか、エルエルフとか居てさ。ギルドとかスキルとか、お前の後ろに答えはある……とか言ってさ。
現実はどうよ。ファンタジー要素皆無じゃん。笑えねーべ。
……ん? ちょっと待ってね……つまり……男女の価値観が逆転してるってことは………………男は全員オネェじゃん…………想像するのやめよ。
「お兄ちゃん、早く準備しなよ。私は日直だから先に行くからね。お姉ちゃん起きてきたら、ご飯チンするように言ってね」
そう言って家を出る妹
「お兄ちゃん、男なんだから女の人には気を付けてね! ちゃんと防犯グッズ持っていくんだよ」
と、顔だけ覗かせてそう言い残す
……防犯グッズとか持ってねーべ。というかいらんでしょ。
「おはよー有利。今日もかわゆすよー」
眠そうな目を擦りながら、階段を降りてくる女性
姉の巴だ。社会人でバリバリのキャリアウーマンをしている。
そしてシスコンでありブラコンだ。まぁ、小さい頃から面倒見てたんだし、当然のように可愛くて仕方ないんだろう。
「ねーちゃん。邪魔や……あとエミが朝飯チンして食べろってさ……まぁ、まだ温かいからチンしなくてもいいけど」
自然な流れで俺に抱きついてきた姉を一蹴し、さっさと朝飯を食べるように言う。
「はいはーい……有利は学校行かなくていーの?」
俺から離れ、そう聞くねーちゃん
「……おう、もうこんな時間か」
姉に言われ、時計を見るとすでに7:30を回っている。そろそろ行かねば遅刻するだろう。
俺は素早く朝食を食べ終えると、自室に戻り制服に着替え、その他の準備を終わらせると、リビングに戻る
「有利、防犯グッズ持った? 催涙スプレーと、スタンガンと、防犯ブザーと警棒とライオットシールドと……」
家を出る前に、姉がそう聞いてくる
「おおう……物騒だな……」
靴を履きながら、そう返事をする俺。というか、なにそのフル装備。どこに殴り込みに行くんですか……
「まぁ、後半は冗談だけど、とりあえず気を付けてね。特に有利は弱そうだし」
「ん、行ってくる。帰ってきたら一発シバいたる」
そう言うと、家を出てバス停に向かう
チミチャンガうめぇ