プロローグ
「うそ……だろ?」
母さんに言われたことが信じられず、俺ーーユウヤは、震える声でつぶやいた。
「嘘じゃないわ……ユウスケさんが死んだのよ。」
ユウスケ。つまり俺の父親で魔王を倒した勇者の一人つまりは最強の男。そう簡単に死ぬわけがない。しかし、母が朝からこんな嘘をつく意味もない。
「とにかく、今から葬式なるわ準備してちょうだい。」
いまだ状況が飲み込めでいない俺にそれだけ告げると母は隣の妹部屋に行ってしまった。
「……なんでだよ」
悲しさと嘘であってほしいという気持ちが、俺のなかで渦巻いている。現実を拒否するように様に自分の頭を掻きむしった。
「お兄ちゃん何してるの!?」
どれくらいの間そうしていたのかわからないが、制服を着て準備を終えた妹のカノンが俺の両手を抑えて静かにおろす。
妹が俺より冷静だったことで、ようやく正気に戻ることができた。
「悪い。かなり取り乱していた。」
「お父さんが死んだこと信じられないのはわかるけど、動揺しすぎほら、掻きむしりすぎて、髪ぬけてるよ」
床に落ちている髪の毛を指しながら冷静にいいながら、視線を俺の服の方にむけ。
「ってお兄ちゃん準備できないじゃん。髪もすごいことにってるし、手伝うから早く準備してよ。」
呆れたといわんばかりに、肩をガクッっと落としクローゼットを開けると、ダークスーツをこちらに投げた。そして、そのまま部屋の外にでる。気遣いのできるできた妹だ。
「着替えたら呼んで髪魔法で何とかするから」
「わかった。」
短く返事をしてダークスーツに着替える。一六歳になった記念仕立ててもらったもので、着るのは今日が初めて。
「まさか親父に買ってもらった成人祝いを買ってもらった本人の葬式で、着るとはな。」
ボタンをしめ、カノンを呼ぶ。
母譲りの肩まである金髪をなびかせながら部屋に入ってきた。そして俺の頭に魔法を放つ。
髪のセットに使う魔法は生活魔法と呼ばれる初歩的なものなのだが、細かい作業魔力操作が要求される。俺はあまり魔力操作が得意ではないため、急いでいるときは、カノンにやってもらう。
「はいできた。早くいくよ」
俺の手を引っ張り、急いで階段を駆け下りると、一気に家の外へでた。
カノンに引っ張られるまま通りを走っていて思い出した。
「母さんわすれてるって!!」
「遅いから先行くって言ってたよ」
「なら急ごう」
俺たちは走って中王都唯一の葬式会場の央広場に向かった。
中央広場には一般市民、王国騎士、そして王様の姿がみられ、皆が悲しみにくれているのを見て親父がほんとに勇者だったんだと、実感させられる。
俺の住むヴァギル王国では、火葬が一般的な葬りかたで、親父の棺桶にも火が放たれる。
大きくなる炎を見ても俺はまだ親父が死んだ実感が持てないでいた。
棺桶が燃え尽き、墓に骨が埋められても、信じられない。
とうとう式が終わり暗い雰囲気の中俺は一人家へと戻った。