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復讐の魔王様  作者: ヌタ
1章 魔族の幼児
6/8

戦の鬼vs暗殺者1

 ウィズダム帝国の帝都は大きな混乱の中にあった。とうとう王国からの宣戦布告があった訳だが、そこからの王国の動きが速すぎる。

 なんと、宣戦布告が届いた日に王国は国境に軍を配備し、侵略のための隊列を組んでいる。これは転移魔術で転移してきたとしか説明出来ないのだが、王国軍は総勢5万。これだけの人数を一気に転移させられる程の魔術を使えるのは

「大魔導士バース、か。腐っても魔王を倒した英雄かの。」

 そう呟くのはウィズダム帝国副戦士長ガル・フィードだ。

そんなこんなで帝都中が大慌てで戦争の準備なのである。

 もう、いつ王国軍に動きがあってもおかしくない。

よって、帝国戦士団も帝国騎士団も早急な出動が求められる。









 そんな中、いち早く出撃準備が整った戦士団が帝都正門前にて集合していた。

 戦士団の前に出ているのは若く美しい女性。しかし、黄金に輝く髪と纏うオーラが唯のか弱い女では無いことを物語る。

「みんな準備はいい?これから私達は戦場に出る。私達が負ければ私達の大切な愛する人々がひどい仕打ちを受けることになるの。だから私達は負けられない。だけどね、私の望みはここにいるみんなで帰ってくること。負けることは国が許さないけど、勝つために命を投げうることは私がゆるさないよ。絶対に全員で勝利の凱旋をしよう!」

「「「「「「ウォォォォォーーーーー」」」」」」

「レティシア様に一生ついていきまーす!」

「レティシア様、結婚してくださーーーい!」

 戦士長でさらに若き乙女であるレティシアの檄で男だらけの戦士団はとてつもなく士気が高い。

「ウィズダム帝国戦士団出撃!」

こうして、戦士団は出撃して行った。







 国境についた戦士団は敵を迎え撃つ準備をしていた。

 戦士団が準備を整えるまで王国軍は不気味なほど動きを見せなかった。まるで何かを企んでるかのように。

 「考えすぎだよね」

 レティシアは考えすぎで終わらせようとするがその予感は的中してしまう。

 事が動いたのは戦士団の準備が整ったあとだった。

「レティシア様、お水でございます。」

 部下が持ってきた水をレティシアは受けとる。

「ありがとう。」

 しかし、レティシアはすぐに異変にきずく。臭いがおかしいのだ。本来水は無臭だがこの水からは、ほんのわずかに異臭が漂ってくる。


「あなた、この水をどこから持ってきたの?」

 部下はなぜそんなことを聞くのかと言う不思議そうな顔をしていたが、

「軍備の水です。」

と、答えた。

「これは、私以外の人に出した?」

「は、はい。すでにレティシア様以外の方々にはお出ししました。」

 部下は驚いていたが、そんなことを気にしている暇などレティシアには無い。



 マズイ────毒を盛られた。何者かが軍備の水に毒を盛ったのだ。


 このわずかな毒を見分けられるのはせいぜいレティシアと、数人の精鋭のみ。

 ほとんどの兵が使い物にならないと考えるべきだろう。

 そんなときに、偵察に出していた兵が帰ってきた。

「報告します!とうとう王国軍が動き出しました。」

 何と言うことだろう、完全にやられた。今、攻めて来られても迎え撃つ兵はほとんどいない。




 こうなったらレティシアとガルを初めとする10人の精鋭で迎え撃つしかない。大丈夫、彼らは相当に強い。援軍が来るまでの時間くらいは稼げるだろう。



 しかし、次の瞬間、そんな望みも打つ砕かれる。天幕に傷だらけのガルが入ってきたのだ。


「レ、シ……ア気をつけろ。」

 そう言って気を失った。レティシアはガルの命の炎が燃え尽きていないことを確認すると、偵察から帰ってきた部下に治療を命じた。

 その後、精鋭達の天幕を確認して回ると、毒にかからなかった精鋭達は皆、何者かによって各個撃破されていた。





 レティシアは今度こそ死の覚悟をした。しかし、一人で戦う覚悟もした。どうせ死ぬなら戦い抜いて、奴等を一人でも多く道連れにして、死んでやる。そう思ったのだ。




















 向かい側には述べ5万の王国兵。こちら側はレティシアただ一人。

 敵軍が自分を嘲笑するのを感じた。

 そして、レティシアが動き、1対5万の戦争は開戦した。













 結論から言おう、レティシアは一騎当千の活躍を見せた。一人で5000近い敵兵を葬った。しかし、数の差がありすぎたのだ、レティシアは疲弊し、敵に囲まれ、もう限界を迎えていた。

 死を覚悟し、目を瞑った彼女に止めの一撃はなかなか来ない。

おかしい、そう思って目を開けた彼女の目に映ったのは信じられない光景だった。

 赤い、死の旋風が戦場に吹き荒び敵の命を奪って行ったのだ。



「よく、頑張ったな。ゆっくり休め。」


 レティシアは幼い頃自分に危機が迫ると決まって兄が助けに来てくれたことを思い出していた。

(ありがとう……お兄ちゃん。)

 彼女が意識を手放す前に見た者は、片腕を失いながら次々と敵を葬って行く実兄、『戦の鬼』ガトー・フェルゼンそのひとだった。


(片腕を失って戦えなくなったお兄ちゃんが何で?)

 しかし、彼女の残りの体力はそんなことを考える余裕も与えてはくれなかった。

 敵兵がばたばたとガトーによって倒されていくなか、レティシアの意識はそっと闇へと落ちていった。






あと一回、レティシアの話が続きます。


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