裏切られた勇者
俺、青山 喜一は勇者キイチ・アオヤマとして異世界 に召喚され、魔王を倒して英雄として崇められ、王女と結ばれ、国王に即位する―はずだった。
俺は、今まで何のために戦ったのだろうか。
仲間に―仲間だと思っていた奴等に裏切られ、今、大
聖堂の中でクズどもに囲まれている。
『これより、異世界人キイチ・アオヤマを大量虐殺の罪で処刑する。』
神官の声が大聖堂に響き渡り、俺の横にいた2人の処刑人が同時に剣を抜く。
そして、聖具によって力を奪われた俺に2本の剣が突き刺さり―俺の人生が終わった。
(ああ・・・これが…走馬灯というやつか。)
頭の中を人生の記憶が廻る、最悪だった。
エロい話しが好きで、友達もそこそこ居て、順風満帆とはいかなかったが、平凡な唯の中学生だった俺はある日の帰り道、謎の光に巻き込まれ、1人の友人と共に異世界に召還される。
謎の光に巻き込まれたあと、最初に目に入ったのは、何もない、見渡す限り真っ白な世界だった。
そこには、さっきまで隣にいた友人は居らず、自分と1人の女性が立っていた。
その女性こそが女神であったのだが、その頃は知るよしもなく只、自分が異世界に勇者召還されて、そこが時空の狭間であることだけを聞かされた。
次に目に入ったのは、いかにも王宮という趣の部屋だった。
隣には、友人が居り、そして目の前には、数人のローブを着た、魔術師らしき人物と美しい女性が1人立っていた。
その女性は、美しい赤い髪を肩まで伸ばし、首には、大きな宝石のついたネックレスをして、まるでお姫様のようなドレスを身に纏い、整った顔に歓喜の笑みを浮かべている。
そして、女性はゆっくりと口を開く。
「ようこそいらしゃいました、勇者様方。歓迎いたします。」
その一言ですべてを悟った俺と対象的に隣の友人は状況が呑み込めていない様子で訪ねる。
「おい、ちょと待ってくれ! その勇者とか歓迎とかいったい何なんだ!! というかここはどこなんだ教えてくれ。」
赤い髪の女性は、ハッとしたように答える。
「個々では何ですので、是非とも王との謁見をお願いします。」
特に断る理由もないので、承諾すると、つられたように友人も承諾する。
しばらく歩くとひときわ大きな部屋に着き、その扉の先には、玉座に腰かける中年の男とその横に立つ、大臣のような男だった。
そこで俺は、玉座に座っていた男、人間王に事の経緯を聞いた。
人間が魔族の手よって苦しめられていること 、追い詰められた人間が魔王を倒すために古来から伝わる『異界勇者召還術』という禁術で俺たちを呼び出したこと。
すべてを聞き、俺たちは、彼らに協力する。
ファンタジー作品が好きだった俺はチート能力で俺tueee展開を予想していたが、現実は甘くなかった。
冒険初日、雑魚モンスターのオークにパーティーを全滅させられ、俺は儚い夢を捨てた。
仲間達と世界中の村を救い続け一年半がたった時、とうとう魔王の側近の1人であった最上
級魔族を倒し、魔族に支配されていた古神の塔を解放し、その最上階で俺は、女神と再開する。
その時、女神の加護を受けた俺は今度こそ俺tueeeとなり、半年で魔王を倒し、魔王に加護を与えていた魔神を封印する。
そして世界は平和になり、後は、魔王がいなくなり、統制のとれていない生き残った魔族を駆逐してすべてが終わる―筈だったのに。
そう、ここから俺の人生が狂ったのだ。
ある日俺は、婚約者であった王女
に呼び出された、彼女は、2年前俺たちを呼び出したあの女性である。
てっきり、結婚の相談だと思い丸腰で待ち合わせ場所に行くと20を優に越える戦士の群れに囲まれる。
そして群れの奥には、高笑いしてこちらを見下王女女王の姿があった。
何のつもりか聞くと、驚く答えがかえって来た。
俺たちを呼び出した時に捧げた生け贄50人の命を償えと。
お前は、50人の命を奪った殺人鬼だと。
俺は怒り狂った、勇者として 技を奮い20人を返り討ちにして逃走した。
逃げ続けて3年、既に俺は大量虐殺犯として指名手配されていた。
そんな俺の前に現れたのは当時の仲間、戦士ゼト、狩人ジーク、聖女アルス、大魔導師バースだった。
彼らは、安全な場所に行くと言った。
そして、ついていった俺はまたもや罠にはまった。
最後にゼトがいい放った言葉
「お前は強くなりすぎたんだよ。もはや世界の邪魔でしかない」
仲間だと思っていた奴から言われたその一言に深く傷付いた俺は命かながらその場から逃げ出す。
当時の仲間は、やはり強く、王女の時のようには、いかなかった。
逃げきったはいいが瀕死の重症をおった俺に民家の屋根から1人の青年が、声をかけてくる。
「おい、喜一久しぶりだ
な!! ひっでぇー面しやがって、久しぶりに親友に会えたんだから喜べよな。」
その青年は自分と共にこの地に召還され、自分が旅だった日から国に暗殺者として雇われた久しぶりに合う親友、先の戦いでの影の英雄、ジュンヤ・セキグチ―関口純矢その人だった。
無視して俺に対して純矢はもう一度声をかけてくる。
「そっちに行くと危険だぜ。ついてこいよ、安全な場所で俺と一緒に暮らそう。」
人を信じられなくなっていた俺は、
「誰が国の犬なんか信じるか。俺は、もう騙されない。」
とだけ言ってその場から立ち去った。
そしてその先で 待ち構えていた国軍に囚われ、1年間を経て今に至る。
俺は、最後に俺に味方してくれた人を信ようとしなかった。
その事を心残りに俺の現実世界の15年と、魔王討伐にかけた2年、逃亡生活5年の計22年の人生は幕を閉じた。
目を開けると見たことのある世界が広がっていた。
そこは、俺があの世界に行った時に通った場所、初めて女神とであった場所だ。
そして、俺の正面にはあの日と同じく女神が立っていた。