中身はお別れだった。
二人が公園から風紀委員の教室、通称本部に帰ってくるともう日が低く、辺りはオレンジ色に染まっていた。
先程まで居た公園は何でも場所の座標は公園だったが、次元が違うとか何とか。
あのあと、二、三分固まって居た界を叩いて、瞬間移動させたのだがその間二人はろくに会話をしていなかった。
そして真が椅子に座り持っていたノートパソコンを机に置いて溜め息をつき、溜めに溜めた一言を言う。
「……結局、私が全員捕まえたのか~」
「……すいません」
そしてお説教が始まってしまった。
この流れは変えられない、このままねちねちと小言を言われて口を挟む隙は無く、ただ相づちを打って謝るしか無い。
それが心理。
「いやぁ、最初の方は良かったんだよ? けどねそれだけじゃあ駄目だよね?」
「……はい」
……以下略
「最後にしたってあれだよ、見えもしないのに……(以下略)」
「もう、勘弁して……」
小一時間ほど説教されて日もすっかりと落ちていて界は教室の電気を点ける。
すると、真がしんみりとした声で聞く。
「……それで、あんたはこれからどうするの?」
真は、ここまで貢献してくれたわけで教え無い、と言う訳には行かず、界はうーむと唸り、答える。
「とりあえず、箱を厳重に二重封印してってなるかな?」
「……そう」
今までの真とはどこかおかしく界は首をひねる。
「どうしたんだ? 」
「別に、さっさと行けば?」
ふいっとそっぽを向きぶっきらぼうにそう言ってそのまま界の方を向こうとしない。
やっとヒロインらしい所が表れて来たが、界の方はこいつ何を企んでいるんだ? と警戒している。
今までが今までなので仕方ない。
「いや、このままはいそうですかと行けるほど精神図太く無いぞ?」
「……じゃあ何かあるの?」
「えっ? んーそうだな……」
そう言われてしまっても界も困ってしまい手を顎に持ってきて考えて、はっとひらめいた。
「じゃあ何かおれいを……」
「よし、来た!! 何が良いかな? こいつ何でも出来そうだし」
「……」
……あ、ヒロインですよ。
界の読みは当たっていて何かご褒美が欲しかったらしい 。
まぁ期待通りと言えばそうだし、当然の権利だろうと界は諦ている。
「ある程度の事は出来るから何でもいいよ」
「じゃあ、男性化!!」
「出来るか!!」
目をキラキラさせてヒロイン捨てる発言をする真。
だが、界は本当の所は出来る、しかし、餌食になるであろう人物のために嘘をつく。
これが優しい嘘。
駄目と言われてものすごい落ち込む真、千夜とのラブラブなんちゃら、と呟いているが聴こえない振りをする。
二人で石破ラブラブ天驚したかったのだろう。
「他にはないのか?」
呆れた様に言う界だったが、真は首を振る。
「無いよ、じゃあさっさとお帰り」
そう言ってしっしっとジェスチャーをする真。
またしても先程と違って本当に速く行って欲しそうになる真に、少しイラッとする界だった。
「分かったよ、じゃあな!」
しかし、真はこうやって界が帰れ易い様に仕向けたのかも知れないが、そこは秘密にしておく。
そして、界が背を向けると真が声をかける。
「あんた、鬼ごっこの最後で、私に抱き付いたよね?」
「ぶふっ!!」
いきなり、あまり触れたくなかった話題をガッツリとわしづかみされて盛大に吹く。
しかしかまわず真は続ける。
「助け様としたんでしょ? まぁ一様、ありがとう、界」
……デレた。
まさか、と界が思わず真の方を見るが、真は背中を向かせていて顔が見えない、が、耳が赤くなっているのは分かった。
「……デレた」
「うっさい!! とっとと帰れ!!」
つい口が滑った様に出てきた言葉に敏感に反応する真。
だが、界の方は向かずに腕を組み怒る真、顔を余程見せたくなかったのだろう。
界はフフッと笑ってから口を動かす。
「分かった分かった、後こっちも、ありがとうな、真」
「……っつ!!」
不意を突かれたのか、びっくとして界の方を睨むが。
「……あ」
界の姿は跡形も無く消えていた。
「……忙しいヤツだったな」
そのまま、界が消えた方向を見ていた真
「……眠い」
鬼ごっこの疲れが来たのか、うとうととし始めた真、少し寝ようと机に突っ伏し顔を腕に埋める。
「……ごめんな」
そんな声が聞こえて来た気がした。
(……今の声、誰だっけ?)
そして、真は眠りにつく。
今日の出来事を忘れながら。