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ワンダーボックス   作者: 良七
1/10

中身は天使だった。

ある学校の屋上、背が高いフェンスが張っているだけのひどく殺風景なその場所は、校則では立ち入り禁止になっている。

理由は危ないから、実に単純。

しかし、立ち入り禁止されているならば、逆に行って見たくなるのが人の心情であり、その好奇心溢れた先人によって、屋上への扉にかかっている鍵、南京錠はすでにハリボテへと変わって居た。

立ち入り禁止とされているので風紀委員会や生徒会は見回りはせず、教師や警備員などもここまで足を運ばないのだろう、階段の下から見ても南京錠が壊れているのは一目瞭然なのだ、それとも立ち入り禁止と言う校則がすでにハリボテへと変わって居るのだろうか。

そしてそこに、またしても訪問者が現れる。

ひどく殺風景ななにも無い現実を目にするために。


「何にも無い、か……」

三帝 真はそう呟く、男性とも女性とも取れるが名前だが真は女性である、可愛いか美人かと聞かれれば、美人である。

黒髪のショートヘアで、後ろで小さく結んでいる。

後は、けっこうなスレンダー体型である。

「……」

……っと、余談はこのぐらいにして

現在昼休みで、真は学校の屋上に来ている、かといって特にすることがある分けでもない、ただ生徒手著に書いてある校則で屋上が立ち入り禁止と書いてあったので、好奇心で来ただけである。

他の先客も予想していたが誰も居ない、屋上へ向かう真に先生方は特に止めることも無くなんのスリルもなくあっさりついてしまった。

冒険とは、多少のスリルがあってこそやってのけた後の達成感を味わうものだ、それからスリルを除いてしまえばただのお散歩にすぎない。

教室へ戻ろうと扉に向き直りドアノブを回す。


「……あれ? 開かない」

しかし、扉は開かなかった。

押しても、引いても扉が開かずに、真は首をかしげる。

何故扉が開かない? 誰かが押さえている? だけどそんな気配はなくドアノブが回る、真は扉を押して入って来たつまり扉を押さえるにはドアノブを掴んだほうが力が入りやすい。

鍵は南京錠が壊れているし、それに、扉のガタさえなく壁と一体化している気さえする。

だが、こんな状況下にある真だったが、本人は特に動揺する様子もなく、まじまじと扉を見つめている。

「スライド式?」

呟いてドアノブを掴みスライドさせてみようとするが

まぁ、開かない。

「わかった、シャッター式だ!」

これ名案とばかりに扉を上に上げてみようとするが

まぁ、開かない。

「なら、音声システムとか!?」

何故か、徐々にテンションが上がってる。


しばらく苦戦していると真の背後に何か物音が聞こえた。

振り向くと、そこには手のひらサイズで十二面サイコロの形をした黒い物体が床に転がっている。

「あんなのあったかな?」

黒い物体はどこか、威圧感を漂わせている。

ゴゴゴゴゴゴッという感じ、


しかし何はともあれ、この扉が開かない以上あの黒い物体に何かがあるのか、近づいてみるしかないらしい。

物怖じせず近づき黒い物体を拾い上げるた真、女性にしては肝が座っている。

「これは、箱?」

よく見るとその多面に描かれているのは数字ではなく、不思議な模様。

金属の様な表面だが、ガチャのカプセルの様に軽

い、多面の繋ぎ目にほんの僅かに隙間があり、何かの箱だと思われる。

威圧感もいまだにあり、音が聞こえて来そうだっ た。

「……?」


「ゴゴゴゴゴゴゴッ」


……本当に聞こえて来た、箱から。

知らなかった、威圧感ってそうやって出すんデスネ……

急に親近感に溢れる箱になんだか開けたく無くなって来る真、すると今度は屋上の入口が勢いよく開かれた。

「待った! それを開けちゃ駄目だ!」

開かれた扉から出て来たのは知らない男子、制服を着ているのでこの学校の生徒だろう。

髪にヘアピンが無駄に多くつけているのが印象的な美少年

先程までびくともしなかった扉がすんなりと開かれてい

る、それにこの箱と関係があるような物の言い方。

何か事情を知っているだろう男子生徒

だが、見知らぬ相手に迂闊な行動は避けたい

「……君は誰?」

取り敢えず相手の名前を聞く事にする真

男子生徒は真が箱を開ける様子はないことに安堵

し、素直に自己紹介する。

「僕は宝松 界、えーと、実はその箱は僕が落としたものなんだ、中身は見ずに返してくれないか?」

なるべく真のことを刺激しない様に慎重に話しているのが分かる、よほど開けて欲しくないらしい。

しかし、残念なことにこの真は、開けるなと言われれば開けたくなる迷惑な性格だった。

「証拠はあるの? 実はさっきまでその扉が開かなくて、閉じ込められてたんだ、そこに君がその扉を開けて現れた……疑いたくもなるでしょ?」

肩をすくめおどけて見せる。

実際はこの男子生徒、界に閉じ込めたとはほぼ思っていない真だったが色々と事情を聞くのに便利だった。

「証拠はないけど……ここは鍵なんてかかってなかった

し、こっちもそう信じられる分けでもないよ」

「フム、確かにそうだね……」

鍵はかかっていない、確かに南京錠は壊れているのは真もわかっている。

界は嘘は言っていないのだろうが何かを隠しているそして真の詮索を止めさせた。

(どうやら私が動かないと始まらないな)

「……わかった」

真はしぶしぶと箱を開けた。

「わかってくれたか………………………

……って何で開けるの!? 誤字じゃなくて!?」

メタ発言はよろしくない。

「いや、君が開けろって」

「開けるなっつたんだよ!?」

一瞬、きょとんとした真は可愛らしく首をかしげ。

「……? つまり開けろ?」

「どんな誤解してんだ!!」

界は急いで真から箱を引ったくるが、中身は何もなかっ

た。

「……なんだ、人食い箱でもないの?」

人食い箱なら今頃襲われている、界の後ろから箱を覗いて呟く真、界はわなわなと震えている。

「そんな……せっかく捕まえたのに」

そして、界はガックリと膝をついてしまった。

「あぁ、ポゲモンの方か……」


「我はポゲモンではない!」


すると後方から正確には後ろの上空から、男性の声が聞こえた。

真は反射的にその声の方に振り向きそして、絶句する。

人が浮いていた、透き通る白い肌、黄金色の髪の

毛、その背中には白い翼が生えている、腕を組み、神々しくも歪な存在その姿は正しく天使だった。


「我はルシュファー、この世界の神を下し、真なる神になる者だ!!」

「……」


どこか中二病に聞こえ無くもないセリフを吐く天使……ルシュファーはその碧色の瞳を真に向ける。

「小娘よ、よくぞ我の封印を解いた、まったく、三日もあの中にいたら退屈で死にそうだったぞ……なんだ、小娘? 先程から我を見ているが、何故喋らない? 惚れたか?」

色々ツッコミたい所があるが真は何も喋らない、その理由を界が答えた。

「いや、お前その角度だと見えてるからな……」

「へ、変態……!!」

「ちょっ! 見んな!」

説明しよう! ルシュファーは今、布だけを体に巻き付け

た、半裸で変態だったのだ!!

すぐさま屋上に着地すると、なんの予備動作もなく一瞬の内に布一枚から黒っぽい服を身に付け、背かの羽はどこかに消えた。

意外と羞恥心は一般的にあるみたいである。

「見られても、だからどうした? とか言いって動じなさそうだけど」

隣で膝をついている界に思ったことを耳打ちしてみる。

「いや、ただカッコつけてるだけ」

「あぁ……」

何かに思いあたり生暖かい眼差しを向ける真だった。

「くっ、俺のデフォあの姿だから仕方ないけどさ、好きでやってる分けじゃないからな!」

「素に戻ってるぞ?」

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