こわいひとにはこわいかも、こわくないひとにはこわくないやん、な実体験
足音
これは、短大生時代の話。
私の部屋は二階にある。
どこの家庭も大抵そうだろうけれど、我が家も二階部分は兄と私の子供部屋で占められていた。
一番西側に兄の部屋、真ん中に私の部屋、階段をはさみ、東側に納戸がある。
廊下は北側にあり、南側は全面窓になっている。
さて、短大に通ってはいたが、ギリギリ実家から通える距離だったため、私は実家住まいだった。
当時3つ上の兄は、関西方面にある大学生であり、当然、一人暮らしをしていた。
つまり、普段、二階は私ひとりきりだ。
短大生というのは、多分、皆が思っているほど、暇ではない(当時の話だが)。
バイトの後、課題を消化して、その後読書なんかしてたりすると、あっという間に1時2時になる。
その日も、2時近くまで起きていた。
睡魔に勝てずベッドに入り、しばらくすると、足音がした。
当時、ベッドは南頭にして、隣の兄の部屋との境の壁につけるように部屋の西にあった。
たったったったったったったったった・・・・・・・・・
軽快な足音は、寝ている自分の右手から左手へ、つまり二階の東側から西側へと抜けていく。
父か母か? それにしては、妙に足音がかるい・・・・
たったったったったったったったった・・・・・・・・・
足音が、部屋の前を通り過ぎる。
たったったったったったったったった・・・・・・・・・
そのまま、兄の部屋に入る。
たったったったったったったったった・・・・・・・・・ふっ
足音が、消えた。
兄の部屋を突っ切った形で。
思い出す。
あの足音は、何処からきた?
階段を上ってきた音はしなかった。
足音の始まりはどこだった?
二階の一番、東側。
納戸の奥からだ。
飛び起きて、確認したかったが、流石にそこまでの度胸はなかった。
無理やり目をつむり、古臭いが羊を数えつつ眠った。
翌朝。
恐る恐る、部屋の引き戸をあけて、隣の兄の部屋の入口を確かめる。
部屋の戸は、閉まっていた。
首を巡らせて、納戸の入口を確かめる。
戸は、閉まっていた。
あの足音は、なんだったのか?
その後、一度も聞いたことはない。
『実家』では。