第十話「父と仲間といにしえの塔(上)」
『義勇兵出撃S』、そのミニクエスト2a。
緊張の一夜が今、始まる。
……のだが、そちらはまあいい。
「注目!
夜警組の諸君、ご苦労である。
指揮権を預かる王国騎士団のイグニスランダルだ」
集合場所には私の他に、間に合ったらしいはらぺにょ君の姿もあった。
プレイヤーは私と彼も含めて八名。
「姫殿下は騎士も連れて居られるが、彼らと同じく、アデライード姫殿下の御寝所とした天幕で警護について貰う。
八名は早番遅番に分かれた後、二人づつ組むように。
無論、通常の夜警とは別で、諸君らは姫殿下の警護専属だ。
そのことを忘れぬように」
このままシナリオが派生して、別の任務で宿営地を離れるのだろうか。
自分の事よりも、アキたちが参加するであろう明日のこと───このサーバー初の大規模戦闘───が、少々気に掛かっている私であった。
「こんばんは、ライカさん」
「お帰り、はらぺにょ君」
三人組で唯一こちらに戻ってきた彼と、私はコンビを組むことにした。
今ははらぺにょ君も、私と同じく金属装備で固めている。詳細までは解らなかったが、両手剣に重鎧と典型的なアタッカー装備である。
「三カ所、大変だっただろう?」
「昼の部夜の部にわけましたし、俺は三カ所とも近かったんで。それでもぎりぎりでしたけど。
みかんさんは四カ所、108式は同じ三カ所でも距離ありましたから、苦労してんじゃないですか?」
「なるほどね」
「そうだ、紹介しますよ。
うちのギルド、《へなちょこ参謀本部》って言うんですけど、ギルマスのくるーげ先輩とメンバーのKaa───カー先輩です」
「先輩?」
「ええ、同じ大学なんです。
本鯖だと《ドドイツ軍OKH》っていう結構大きなギルドにいるんですけど、こっちに来たメンツだけで身内ギルド組んでます」
紹介された二人はともに《人間族》でくるーげ氏は軽装の二刀流小剣使い、カー嬢はメイスをぶらさげているが、金属鎧ながら手には指輪もあるので恐らくは回復職だろう。
私も挨拶を交わし、はらぺにょ氏と同じく『義勇兵出撃S』組の鍛冶屋だと告げておく。
「ああ、それで。
僕とカーは『義勇兵出撃R』を受けたんですよ」
「R?」
「敵の陣地越えて、塔の手前までひとっ走りしてきました」
『義勇兵出撃S』が敵陣最前線の斥候なら、『義勇兵出撃R』はその向こう、敵の本隊を探るクエストだった。
ともかくよろしくと、残りの夜警組───私とはらぺにょ君以外の全員が『義勇兵出撃R』の高レベル組、それぞれが攻略ギルド所属の知り合いらしい───とも挨拶を交わし、《へなちょこ参謀本部》と私が遅番、それ以外の面々が早番と決まった。
「フェルキャストの勇士達よ、大義です」
お忍びの黒馬車から降りたアデライード姫───『雷光の姫君』は、さっと手を上げて、居並ぶ騎士や私たちを見回した。
白を基調とした戦装束に、調った容姿とスタイル。物腰も含め、私が若い頃に人気のあった女優ラティファ・ベルグマンにそっくりだ。当人と事務所が許可を出しているということは、容易に想像がつく。
無論のこと現在のラティファは私と同年代の筈で、そこは誰に対してのサービスか、全盛期の彼女を寸分違うことなく再現していた。私としては彼女のライバルであったカヲルコ・エルネスティーネ・クラインゲルトの方が好みで、彼女が『出演』してくれていたらと残念でならない。……まあ、どちらにしても本人ではないだろうが。
彼女が侍女を連れて天幕に消えると、騎士イグニスランダルが太い尾をべしんと地面に叩きつけた。皇国側の騎士もさっと散り、天幕の四方を固めている。
周囲の篝火には、既に火が入っていた。
「皇国側の騎士は天幕の直衛、我らはその周囲だ。
では早番の者はさっそく配置に。
遅番の者はそちらで休憩してくれ。
それからあちらは《アカツキの茶》だ、全員飲んでおくように」
《アカツキの茶》は眠気を吹き飛ばしてリセットするアイテムだが、入手困難かつ高価とあって、ゲーム中盤以降でないとそうそう手を出せない貴重品だったように覚えている。
「持ち帰りたいなあ」
「まったくだね」
姫殿下の天幕から10メートルも離れていない場所に地面の上に天幕と同じキャンバス地の布が敷かれ、そばには焚き火にかかった《アカツキの茶》、ついでに人数分の毛布と支給品のビスケットが置かれていた。何かあればすぐに呼ばれるのだから即応は当然、野宿と同じで装備を身に着けて寝転がれというまさに冒険者の野営そのままの休憩所である。
「さて、武器の耐久度が減っているなら今の内に。
イベント中だから無料にしとくよ」
私は腰のポーチから手入れ道具を取り出し、『店』を構えた。
顔を売る云々もあるが、彼らの武器が完調であれば不安も減り、活躍してもらえればそれだけクエスト全体の成功率が上がるから私もありがたい。
大規模なイベントやクエストなどでは半ばお約束のようなもので、後方支援の基本でもある。イベントの最中は集合地点近辺で店を広げる鍛冶屋、持ち込んだポーションを売る商人などはどこででも見かけた。
……のだが、今の状況は少し違う様子だ。
このゲームサーバーは少々特殊な要素───家族連れと初心者がかなりの割合を占める───のおかげか、宿営地も割合に静かな様子であった。商人プレイヤーは『義勇兵出撃M』にほぼ根こそぎ持って行かれ、私のような前線兼業の数名が僅かに店を広げているだけだ。
私の見る限り、鍛冶屋は皆無であった。はらぺにょ君の話では現行サーバーでさえ、主武器の予備を二、三本用意するプレイヤーがいるという。長期戦が予想され同行が必要なときは、横の繋がりで協力して鍛冶屋や鑑定士、薬草師を護衛で固めたサブパーティーを用意するらしい。
『M2』の頃は自前が基本だったような気もするが、ルールの改訂や戦術の変化などが積み重なれば、プレイヤー側も対応に変化が出てきて当然だろう。
……鍛冶技能を取得して手入れに加えて修理まで行おうとすれば、消費されるスキルポイントは[5]。戦闘中には完全な死にスキルとなる《鍛冶匠》に貴重な[5]レベル分のポイント払うか否かという問いは、本当の『最前線』を駆ける彼らには愚問らしい。
戦闘力にスキルを傾注することで安全と安定を確保することは、ゲームの進め方として王道だと私も思う。
では前線に於ける鍛冶屋の意義と言えば、継戦能力の回復と伸長に寄与することであった。こちらも決して邪道ではない。
「助かります。
結構エンカウントしたんで……」
「わたしもお願いします」
「じゃあ、順番で。
くるーげさんの方から仕上げようか」
設定された野営場所あるいは《休息》、《結界》などの効果がある消費アイテムを使った休憩スペースに限っては、フィールド上でも宿の一室同様道具を広げても良かった。一人で使うには戦果を考慮するとまだまだ帰って寝た方が安上がりで、しばらくはおあずけだろうか。
「はらぺにょ君、悪いけど早番の彼らにも声を掛けてくれるかな?」
「はい!」
くるーげ氏のショート・ソードは《ポラリスの守護刀》という名有り武器で、同じ物を二振り渡された。攻撃力は素のロング・ソードと同じ[8]だが、命中修正の他にも水の攻撃属性がついている。今の時期ならかなりの業物だ。
《二刀流》は《片手剣》の派生スキルで取得に特殊条件があったかなと、あれこれ思い出しながら手入れ油を取り出す。
「同じ物二本って、珍しいね?」
「予備に火属性の武器もあるので、使い分けているんですよ。
《ポラリスの守護刀》はクエスト報酬で一つのパーティーが受けられるのは一回きりだったんですけど、ギルメンに頼んで二回やって貰いました。
代わりに、他のアイテム揃えるクエストも四回やりましたけどね」
「ふふ、そういうの、いいねえ」
VRMMORPGの醍醐味の一つは、プレイヤー同士の協力であると私は思う。
パーティー、ギルドメンバー、戦士と魔術師、商人と客。あるいは、今日のようなクエストで偶然知り合った『仲間たち』。
それは今も変わらないのだなと、小さく笑みを浮かべる。
手だけは止めずに二本を研ぎ終えた頃、今度は《エルフ族》の戦士がやってきた。
はらぺにょ君らとは別のギルドで、アルダシール氏という現役プレイヤーである。
「すいません、はらぺにょさんが代わってくれたんで、今のうちにお願いします」
「ライカさん、わたしは後で大丈夫ですから」
「じゃあ、カーさんは後回しでごめん。
……へえ、アルダシールさんはバッソかあ」
「ええ、スキルは別にして慣れてますんで。
剣道やってたんですよ」
バッソ───バスタード・ソードは、両手でも片手でも使える長剣だ。
片手剣としては攻撃力はあれど重さのおかげで単位時間当たりの攻撃回数が少なくなり、両手剣としては軽いが両手保持による補正はあっても少々威力に欠ける。
しかも《片手剣》と《両手剣》のスキルは別物で、それぞれにポイントと経験を割り振ると考えれば微妙であった。
代わりに人気が低い分同等の補正付き両手剣や片手剣よりも市場で入手しやすいとか、相手や状況に合わせて楯を捨て去るだけで両手剣として使えるというメリットもなくはない。……微妙武器ではなく、戦術の切り替えが身に付いている玄人向け武器に訂正しておこうか。
次に来た《巨人族》の青年から渡されたのは長物で、重量級の斧槍───ハルバードであった。
「へえ、ししし君は斧槍かい?」
「うちはフィールド狩りメインなんで。
ズバっとやってどっかーん!
……気持ちいいですよ」
槍は、当たり前だが長い。
長いから突きの射程も長くて威力も大きいが、ダンジョン内などの狭い場所では取り回しが難しい。極端に狭い場所では別の武器───《ショート・スピア》などの短い物───を使うか、一度アイテムボックスに収納し、再度現出させて方向転換すると言った手間が必要だった。
「《らいおんさんチーム》さんのモットーは、『ダンジョンは考えることが多くていけません』だっけ」
「うん、本鯖とおんなじ。
殆ど全員来てるけど、《ドドイツ軍》さん……じゃなくて、《へなちょこ参謀本部》さんとこみたいに二パーティー出せるほどこっち人数いないもん。
いつも通りフィールドに絞った方が楽ちん」
「うちは本鯖のギルドから学生だけ集めての合宿だけど、元々多いからなあ」
順に早番組の武器、次いでカー嬢のメイスも手入れを終えた私は、断りを入れて敷布に寝転がった。
《アカツキの茶》は飲んだが、多少減ったスタミナの回復もしておきたい。仮眠は許可されていた。
「交代の時間だ。
遅番の者は配置についてくれ」
幾らか寝たような気もする……というところで、騎士イグニスランダルから指示があった。メニューを開けば時刻は深夜一時前、予定通りである。途中で起こされなかったところをみると、襲撃はなかったらしい。
「交代ー」
「お疲れさま」
「ういーっす」
「なんもなかったですよ」
星は瞬いているが、肌寒くはない。
私は鞘ごと抱えていた剣を腰に戻し、配置についた。
結局、襲撃はなく。
夜明け前までは巡回と雑談で時間を潰し、日の出と共に集まってきた人数の多い別部隊───『義勇兵出撃』のSとRを選んだプレイヤーのうち、夜警にあたった我々以外───と交代することになった。
「おー、お帰りー」
「みかん君たちもお疲れ」
「危なくクエスト落とすところでしたよ」
「俺はラス1の陣地で狩ってたんで。結構儲かりました」
「余裕あるなあ」
これもついでかと、店を開いて受け取った武器は二十数本。
流石に数も多くスタミナも半量近くまで減る見込みだが、顔は売れただろう。
「俺は手入れが終わったら自分の天幕に戻るけど、はらぺにょ君たちはどうする?」
「終了待ちは同じですんで」
「だね」
「それにしても……」
「うん?」
「ミニクエスト、終わりませんねえ」
「……そう言えばそうだなあ。
こりゃあ、何かあるかな?」
「かもしれません」
言われて気付いたが、クエスト終了のインフォメーションもなく、次の指示を待つようにと表示されただけで報酬も受け取っていない。
とりあえず解散の指示は出ているし、騎士イグニスランダルは指揮を続けていた。アデライード姫もまだ就寝中の様子である。
ともかく目の前のこれを済ませてしまおうかと、私は次の武器に手を伸ばした。
「フェルキャストより駆けつけし義の勇士達よ、わたくしはディアタンの皇女、アデライードです」
結果から言えば、ミニクエスト2aの派生はまだまだ続くらしい。
仮眠後に呼び出され、連れて行かれた見張り台から見下ろした先の広場では、プレイヤーの義勇兵4000名余りに加え今朝到着した王国のNPC正規兵がほぼ同数ひしめき合っていた。
「現行鯖だと、ここまで人が集まること無いんで壮観ですよ」
「第一次、第二次って分けることもありますしね」
「全体の人数はともかく、全員が同時にログインしていることもないか」
「平日の夜とか土曜の深夜は割に混むんですけど……」
「バイトない日は夕方から潜ります」
「ふふ、そこは昔から変わらないなあ」
彼らを前に檄を飛ばすアデライード姫を後目に、私やはらぺにょ君らも含めた夜警組は初戦からはずされ、宿営地の見張りにあたっていた。
出撃に組み込まれるのかと思っていたが、我々は居残って軍需物資と宿営地の警備が割り振られ、未だクエストの報酬も発生していない。
「クエスト毎の戦闘差分を埋めるためでしょうねえ」
「縛りってところだね。
敵陣地が落ちたら解放かな?」
「あとは……姫様がさらわれるとか?」
「俺は皇国の騎士達が実は敵の間者で、帰り道に馬車が行方不明になると見た」
「いや、姫は無関係と俺は見たね。
もっと別の……例えば宿営地の下から《グレート・ワーム》がくぱぁ! ってな具合でこっちは大混乱!」
「そこに攻撃に出てた部隊がとんぼ返りして、『待たせたな!』ってか?」
参加者の一角だけが楽しむクエストにならないよう、バランスが配慮されているのだろう。
あれこれと盛り上がる彼らを眺めつつ今の内に連絡しておくかとメールを送れば、すぐに返答が帰ってきた。
<あれ!?
お父さん来ないの?
楽しみにしてたのに……>
<ライカくんとは完全にルート外れちゃったね。
残念だけど、アキちゃんのことは任せて>
<おい、今宿営地とやらに着いたぞ。
コーリングの話だとお前は残るそうだが、俺は炊き出しの調理場にいるから暇なら手伝え>
……若干一名好き勝手なことを抜かしている親父もいたが、戻ってきたメールに再び短い返事を付け加えて送り返す。
「全軍、進撃開始!」
メールのやり取りをする内に、NPC将軍の号令で主力の出陣が始まった。流石にレモンやアキがどこにいるのかまではわからない。さながら通勤ラッシュに混み合う駅前のようである。
主力部隊は私やはらぺにょ君らS組が偵察した敵陣地を今日中に攻略し、明日には東部の主戦線突破をはかる皇国軍と示し合わせて敵の大軍が守る《古王国の塔》まで肉薄する予定だった。
お忍びの皇女も出発して静かになった宿営地にて、私たちは昼前まで駄弁りながら交代で見張りを続けていた。
このクエスト2aがラストならアキやレモンとも同行できないし、効率も考えて途中でリタイヤしてもいいだろう。一本道の強制クエストも、成果こそ失われるがキャンセルだけは可能だ。
しかし私だけでなく他のS組参加者も恐らくは何らかの続きがあると言う点で意見が一致していたから、休憩半分に次の動きを待っていた。
「裏かいてこっちが襲われるって線はなしっぽいですねえ」
「じゃあ俺達居残り組が向こうに進んでからか?」
「手で運べとかやだよ俺……」
「あー、あったなあ。
馬車馬が不足してどうのこうのって」
「『馬泥棒と金の蹄鉄』イベントだっけ?」
「あのイベントかあ。
馬に蹴られるか詰め所連れて行かれるか選べとかあったね」
「……どちらにしても、今のところ予定通りか。
っと……すまない、娘からだ」
<お父さん、こっちは無事に敵陣地攻略したよ!
援軍が来るまで待機なんだって。
お父さんも来るのかな?>
「あ、こっちもギルドメール来た」
「終わったっぽいですね」
そろそろ動きがあるだろうかと、私は返信の文面を考えつつ司令部の幕舎に視線を向けた。
「で、結局これかあ」
「まあ順当というか波乱がないというか……」
「気楽っちゃ気楽だよ」
伝令の早馬が駆け込んできてすぐ、私たちは荷馬車に乗せられての移動となった。
占領した村に宿営地を進める前段階として、物資と人員の移動が開始されたのである。私たちは『お荷物』兼用の護衛である。
私の乗った荷馬車にサンマも乗り込んできたが、プレイヤーは全員移動らしい。
「そう言えばサンマ、クエストのFは何してたんだ?」
「宿営地に着いて半日、ずっと保存食扱いのパンとか燻製肉作らされてた。レシピも幾つか貰ったぞ」
「ああ、FoodのFか。そりゃご苦労様だな」
「俺はクエストなんて滅多に出ねえからな。
割と新鮮だったぞ」
「出ればいいじゃないか。
お前なら店の宣伝にもなるだろ?」
「逆だ。
イベントの終了直後が一番忙しい。……打ち上げの予約で満席になるからな。
仕込みも大騒動で、ギルドの《料理人》持ち総動員だぜ」
「あー、そういうことか。すまん」
昔と違って料理に『味』があるのだから、ログアウトしてオフ会を行う必要はなかった。代わりにゲーム内の店が繁盛するのだが、どちらにしても北海道から沖縄まで各地から接続しているプレイヤーがそうそうリアルで一堂に会するわけにもいくまい。
基本的に日本自治州の外から接続しているプレイヤーのいない『剣と魔法のサーガ』でも、気軽に現実で会合を持つのは苦しいところだった。
「そこのくるーげさんとこも良く利用して下さるが、大きいギルドさんならお座敷が一気に埋まるからな」
「あはは、本鯖の《ドドイツ軍OKH》は七十人越えますからね」
「《スシ教会》さんにはお世話になってます。
イベントの発表聞いてすぐに予約入れても埋まってるときありますから、いつもってわけじゃないですけど」
「申し訳ないと思いつつも、流石に先着順とさせて貰ってる。
かと言って、同じ王都に二店舗目はちょっと苦しい。
うちの馬鹿息子どもがもうちょいしっかりしてくれりゃ、暖簾分けしてもいいんだが……」
「あ、俺、あっちでコウジさんとフレンドなんですよ」
「ほう、いつも迷惑かけてるだろう?」
あちら───本鯖は本鯖で、なかなかに楽しそうだ。
今ならアキと二人して新たにプレイを始めるのも悪くないかと、私は彼ら現役組の話に聞き入っていた。
奪還した村に到着すると、騎士イグニスランダルから報酬を渡され無事にミニクエストからも解放されたので、レモンにメールを送って入り口まで迎えに来て貰うことにした。
既に先の宿営地同様多くの天幕が張られ、何処に居るのか判別が着かなかったのである。
「ライカくん!」
「よう。
お待たせ」
「サンマさんもお疲れさまです。
コーリング君もいますから、ご一緒にどうです?」
「ああ、世話になる」
「ちわっす、レモンさん」
「こんにちはー。お久しぶりです」
「あら、くるーげ君にカーちゃん。
砦の戦闘でさかなラーメン君たちとすれ違ったからもしかしてって思ってたけど、全員で来たの?」
「うちはギルドクエスト取らずに個人参加にしたんです。
前線組しかいませんから、納品クエは最初から捨てることになりますし」
今回の『義勇兵出撃』ギルドクエストでは、戦闘部隊と後方支援のバランスが取れていないと、全体の成果を上方に持っていくことは難しいとルナから聞かされていた。《ムーンライト・キャラバン》は初心者脱出を謳っていることもあって何事も経験───数字で得られる経験値やアイテムではなく、プレイヤーが体得するゲームとのつき合い方───と割り切っているが、現役組の彼らはそれを既に通り越している。どちらが得かの判断基準が、経験者と初心者では端から異なっているのは当然だった。
次は共闘できればいいなとS組R組の彼らと手を振って分かれ、レモンの先導で混み合った天幕の間を抜ける。
「ともかく、メシ食って一寝入りするか」
「俺もFのクエストは一旦終わったんでな、今は自由時間だ」
「こっちはお決まりの攻略戦だったけど、ライカくんは今日何してたの?」
「日が昇ってからは見張り台の上でぼーっとしてた」
「お姫様とお話しとか、した?」
「いいや。
ああでも、はらぺにょ君とこのギルドの人とか、攻略組の皆とは話が出来たよ」
「……ふーん」
寝るにはまだ早いし、太陽も落ちていない。
ゆっくりと陣地を見回しながら歩けば、戦果自慢や苦労話が耳に飛び込んでくる。
入り口から少し東に外れた一角、その中央よりに《ムーンライト・キャラバン》と私たちの天幕はあった。
「あ、師匠!」
「お父さん、お帰り!」
「おやっさん、お疲れさまです」
「ライカさん、サンマさん!」
「おー。
みんな無事みたいだな」
「うん。
あっちの兵隊さんはあんまり強くなかったよ。
こっちの方がずっと数多かったし」
欠けた顔はないし、隊長を任されたまりあんの父上───フーゲツ氏もほっとしている様子であった。
もちろん、戦闘でやられたとしても死に戻るだけで、ゲームから排除されることはない。王都でビスケットを作っているハヤト・エリン夫妻ならば、死に戻り先も王都でそのままクエストを続行出来る。
しかし王都からクエストの中心である前線までは急いでも船中四日プラス馬車一日と半分、ゲーム後半でも入手困難な移動魔法アイテムでも消費しない限り復帰は難しいように調整されていた。
「お父さんお父さん」
「うん?」
小声で話し掛けてきたアキに、耳を寄せてやる。
「『奥の手』、使わなかったよ」
「……使わなかったならそれでいいよ。
切り札とか奥の手は、無理に使うより隠しておくのがいいんだ」
「ふーん?」
私の用意した『奥の手』だが、勿体ぶって渡したものの実はあまり役に立たないことを経験上知っていた。
そもそも『M2』時代に先輩鍛冶屋から教えて貰った小技が、このゲームでも使えるのか否か試したかった……と云うのが真相である。
奥の手などと称していたが、サンマあたりに知られれば呆れられること請け合いで、使わないなら使わないに越したことはなかった。《鍛冶匠》レベルを上げ調整に余力が使えるようになれば、少しはましになるとは思う。
「そう言えばお父さん、お姫様は一緒じゃないの?」
「お姫様は帰ったよ」
「えー……」
「また会うとは思うけど……。
ところでアキ、あれ───」
「義勇兵諸君、休憩中だが少し聞いて貰いたい!」
レモンには『奥の手』を内緒にしてるだろうなと聞きかけたとき、王国軍の士官がやってきて大声を張り上げ、眼前にインフォメーションが現れた。
「明日、敵の本陣たる《古王国の塔》に攻撃を仕掛けることは耳にしていると思う。
既に戦端が開かれている以上、残念ながら今日のような流れには成らぬと司令部は見ている。敵軍も警戒を強めているだろう。
諸君らは各々得意とする技能を最大限に活かし、明日の戦闘を戦い抜いて貰いたい。
また先ほど、宿営地から王軍の鍛冶師たちと従軍神官が到着した。
必要な者は司令部まで申し出るように。
では明朝の出発まで、十分に休息してくれ」
<ミニクエスト3が開始されました。
以下より所属する部隊を選んで下さい。
『主力部隊』、『支援部隊』、『後方部隊』の三種類があります。
選択肢を選ばなかった場合、ランダムに所属が決定されます>
士官が去り、そこかしこで喧騒が大きくなる。
鍛冶屋が居たなら最初から出して欲しかったところだが……あるいは、鍛冶屋不足を見て取った運営側が、バランスを考えて急遽用意したのかも知れない。
夜警も到着した王国軍が引き受ける様子で、お声掛かりはなかった。
「戦闘技能なしの俺は流石に後方だな。
コーリング、俺には気を使わなくていいからお前は気張ってこい」
「はいっす」
と、これはサンマにコーリング君。
ある意味分かり易い。
「隊長、《ムーンライト・キャラバン》は?」
「一応マスターに相談しよう。
でもこれ、選択肢が出てるのは個人だね」
フーゲツ氏はメニューを呼びだして、メールを綴っている。
一塊りになってお互いに援護できるなら、神官もいるしそう酷いことにはならないだろう。だがクエストボスは一番最後のご登場でも、中ボスなり何なりに運悪く遭遇すれば酷いことになる可能性もあった。
フランベルジュたちは主力を選びたそうな表情だが、そのあたりの判断はルナが上手くやるはずだ。
「あ、ライカくんは選択肢ないからね」
「お父さんと一緒に行くのは久しぶりだね」
「まあそうなるだろうな。
コーリング君も入れて、四人で組むか?」
「そうね」
「ういっす、お願いします」
「お父さん、コーリングさんって強いんだよ!」
「へえ?」
「今日も一緒に行ったんだけどね、ずばーん! ……って一撃で倒しちゃうの。
それでね……」
さて、いよいよ『義勇兵出撃』の山場がやってきた様子である。
明日に備えて身内の分だけでも《手入れ》するかと、私はアキの話に相槌を打ちながら店を広げる準備を始めた。
ワインを持って挨拶に来てくれた《帝国騎士団》のマスターや、やはり差し入れを持って現れたはらぺにょ君とその仲間達が、《ムーンライト・キャラバン》の面々に混じって私の周りで酒盛りを始めていたが、それはまあいいだろう。
レモンの耳打ちによれば、気持ちの半分は腕が立つ上に可愛いと攻略組の間で噂になっていたうちの娘目当て、残りの半分はこのサーバーでは貴重な鍛冶屋と多少は繋ぎをつけておきたいんじゃないかしらと言うことだった。
「あら、アキちゃんモテモテで焼き餅?」
「どうだろうなあ」
様子を見る限りはどこにでもいる若者たちで、私が『M2』をプレイしていた頃から何一つ進歩がない。男連中はお互いを牽制しているようだし、女性陣がさり気なくアキを囲ってくれている。
……アキとフレンド登録をするぐらいは、目を瞑ってやるべきか。
無論、そこから先を許す気などまったくなかったが。
明けて翌朝。
夜襲があれば困るなと装備は身に着けていたが何事もなく夜は明け、準備は空振りに終わった。
「……避難訓練みたい」
「遠足にしては人数が多いかしらね」
「この規模のイベント、なかなかあっちでもありませんからね」
目的地である敵陣地、《古王国の塔》までは徒歩の進軍となる。出発してしばらくは列が動くのに合わせ、だらだらと足を進めていた。
『後方部隊』以外を選んだ3000人少々のプレイヤー義勇兵───数百人は既に王都へ死に戻っていた───に加え、新しい陣地の設営や需品輸送の任務に走り回る半数を除いたNPC正規兵が行軍しているのだ。それはもう、騒がしくてやかましい。
「奇襲が無理なら大声出しながら太鼓や鐘を叩いて歩き、示威行動で相手の気を挫く……というのが昔の戦争だったらしい」
「お前、物知りだなあ」
「俺はRPGだけじゃなくて戦略シミュレーションもやるからな。そっちの受け売りだよ」
「『やあやあ我こそは天に聞こえた国士無双の~』なんてやり取りするゲームもあったっけ」
「『戦乱三国中原英雄伝』だ。
あれ、わざわざ名乗り交わさないと一騎打ち扱いにならないんだぜ」
私の周囲にはレモンやアキ、コーリング君、に加え、何故か《へなちょこ参謀本部》、《らいおんさんチーム》、《帝国騎士団『戦乱』支部》など、『義勇兵出撃』参加プレイヤーでも高レベル帯の連中が集まってきていた。何となく知り合い同士が固まった……にしては、豪華な顔ぶれである。
《ムーンライト・キャラバン》は『支援部隊』を選択していた。下手に激戦地へと飛び込んで死に戻りを出すよりは、多少なりとも安全な位置からクエストの最後までを通しで体験しておく方が今後のためになるだろうとのマスター判断である。
出発後に連絡を取ったところ、東に別の街道を進み、国境近くにある村を奪還する任務を与えられたらしい。
「お父さん、期待してるからね」
「そうね、しばらく振りだし」
「おいおい……。
ワエリアの港町で狩りした時とそう変わらんぞ?
ここしばらくは、鍛冶仕事とギルドのことで手一杯だったしなあ」
多少装備は良くなったが、スキルを見ればイベント戦向きとはとても言えない。
私には歯ごたえのある強敵でも、このクエストでは雑魚敵であろう警備兵と連戦してすぐにHPポーションを煽るような余裕のなさは、誇れたものではなかった。……あの時も、奇襲に加えて《狼人族》の強靱さのお陰でごり押し出来たから何とかなったのであって、逃げも隠れも出来ない集団戦でどれほど役に立てるかは疑問符がついてしまう。
「今日のところは、アキの護衛に徹するぐらいが丁度いいだろうな。
耐久力はともかく、攻撃力はちょっと難有りだ」
「んー、基本はわたしとコーリング君のツートップ、ライカくん中衛で回復の時はスイッチ……ぐらいでいいかしら?
アキちゃんはいつも通り、初手に一発範囲攻撃して後は様子見ながら単発か支援かな。
昨日みたいに弓と魔法に気を付けていれば……多分、大丈夫」
「はーい」
「どっちにしても、戦闘はかなり早く決着すると思うわ。
アキちゃん、MPポーション多めにある?」
「はい、大丈夫です」
実はこの義勇軍、まともな作戦がない。
号令一下、全軍突撃で敵を押しつぶすだけである。
……ゲームだからと言ってしまえばそれまでなのだが、まともな司令官の下す命令ではないなと思う反面、義勇軍が冒険者の寄せ集めであることを考えれば統率の取れた行動が取れるはずもなく、実に的を射た判断だと思わないでもない。
《古王国の塔》が森の木々の向こうに見え始めたのは、昼前だっただろうか。
青灰色の石造りでがっしりとしており形状は六角柱、目算尺でもおよそ30階建てのビルよりは高く見える。
「……あんなでかいのが、『最近』発見されたって?」
「イベント絡みで生えてきたって話よ」
「生えてくるとこは、ちょっと見てみたかったかも……」
そうか、生えたのか……。
まあ、イベントならば仕方あるまい。
ここは剣と魔法が根付いている世界だ、魔法の仕掛けが働いて古代の遺跡が息を吹き返すこともあるだろう。
「レモン、そろそろかな?」
「うん、多分。
でも、これじゃ整列なしに突撃かも」
「昨日は将軍さんが降伏勧告? してたよ」
「……すぐに矢が飛んできて、そのまま突撃だったけどね」
本当に行き当たりばったりだなと苦笑しつつ、そのぐらい分かり易い方がプレイヤー受けするかと一人納得する。
『剣と魔法のサーガ』は勧善懲悪が基本、悪い奴を剣で斬って魔法でぶっ飛ばすのだ。
「先頭が接敵したぞ!」
「戦闘準備!」
にわかに騒がしくなり、NPC兵士が槍を掲げた。走り出した者もいる。
だがアキ達は落ち着いたもので、得物は手にしているが歩みは早くも遅くもない。
「さ、こっちも適度に進みましょ」
「先陣争いとか、最近はないのか?」
「この人数だと攻略組とか初心者とかより、位置取りが全てだし。
それにこれ、戦争イベントでしょ?」
「うん?」
「今頃、先頭付近にはものすごい数の矢が降ってきてるんじゃないかしら。
それにほら、くるーげ君たちも慌ててないわよ?」
「そっすね。
第一、中ボス大ボスは流石に初っ端から出ないと思うでんすよ。
この辺の人らは、みんなそっち狙いっすから」
と、こちらはコーリング君。
私も大規模戦闘の絡むイベントに参加したことはあるが、『M2』円熟期には後衛で剣を磨いていたことの方が多く、流れも半ば忘れかけている。
もっとも、大抵はこちらが中盤まで押し込むと、敵の精鋭やら中ボスが出てきて酷いことになったのは何となく覚えていた。
「……こりゃあ、まだまだ頭脳のリハビリが必要かな」
「大丈夫でしょ。
すぐに思い出させてあげるわよ」
にっこり微笑むレモンにちょんと頬をつつかれ、はたして今日はどうなるやらと、私は青空を見上げた。
「うおおおおおおおお!!」
「なんのこれしき!」
「《マジック・アロー》!」
序盤、レモンの言葉通り王国義勇軍は快進撃を続け、帝国軍の設けた塹壕や陣地を次々と突破していった。
最前線では魔法が光り、剣戟の音が遠く響いてくる。
それにしても非常に広大な戦場だった。
幅も奥行きも、優にキロメートル単位はあるだろうと思える。
この戦場では両軍合わせて万を越える人数が相対しているが、私はと言えばそのずっと後方、司令部の傍らで剣を手にしたまま戦況を眺めていた。
随分と余裕の態度だが、本命の中ボス大ボスが出てくる前に消耗を避ける意味と、初心者の多い主力が勢いだけで押せるうち───序盤は大抵、雑魚しか出てこない───は彼らに任せてスコアを稼いで貰えばいい。
出しゃばってもいいことないし役割分担よと、レモン達は割り切っている様子だった。
「へえ、今はこんなのがあるんだな」
「割と便利よ」
机と椅子しかない司令部の脇には従軍神官の待機する野戦病院の他に、戦況盤と称する碁盤目状に無数の穴が空いた板が建てられ、赤や青の棒を部隊に見立てて敵味方の位置や司令部、《古王国の塔》などを示している。
「味方Kの35、Jの34に移動」
「敵Hの28、全滅!」
伝令が走ってきて報告すると兵士が脚立に上って手で動かすのだが、原始的ながら雰囲気が出ていて面白い。インフォメーションで表示しないのは、ゲーム的な便利さと時代設定の妥協点、というところか。
大軍同士のぶつかる巨大な戦場で勝敗や戦況が見えにくいことを指して『戦場の霧』等とも言うが、上手く考えられている。
しばらく見守っていると、戦況有利な中にも敵がしぶとく粘る様子も見え隠れしてきた。
それを素早く見て取ったのか、くるーげ君がメンバーを集め出す。
「レモンさん、うちは一度東側に出て様子見してきます。
武器新しいのに変えたばっかの奴も居ますし、二パーティー連携なんて久々なんで……」
「うちもちょっと出とくか?」
「そっすね。
……団員集合!」
「レモン姐さんたちはどうされます?」
「んー……もうちょっと待つわ。
四人で組むのはお初だけど、後衛のアキちゃんが専用の自律盾装備しただけだから、組み替えしなくてもいいし。
それにライカくんの強さって、レベルや職業じゃなくてプレイヤースキルとかそっちだからね。
わたしも背中に目が増えたって感じかな?」
「うん、お父さんいたら安心!」
「……」
酷い言われようであるが、その自覚はあるので反論は控えておく。
ただまあ、二人からの絶大な信頼は感じ取ったので、相殺しておこうかという気分ではあった。
「じゃあ、お先です」
「よーし、出撃だ!」
「みなさん、いってらっしゃーい!」
アキの一声に、男共が振り返った。
「む……団員、整列!
アキ殿に剣礼!」
ざざざと靴音も高く、《帝国騎士団『戦乱』支部》のメンバーが一斉に剣を掲げる。
「ほえっ!? な、なに!?」
「おお、剣礼だ!」
「《帝国騎士団》の剣礼が出たぞ!」
「久々に見た!」
「……馬鹿?」
「ほんとにもう、男って……」
アキの声援にわざわざ横列を組み剣を手に騎士の礼を捧げた男所帯の《帝国騎士団『戦乱』支部》に、《らいおんさんチーム》と《へなちょこ参謀本部》の女性陣は胡乱な目を向けていた。レモンは苦笑いしつつも楽しそうである。
「あはは。
ほらアキちゃん、何か声掛けてあげて」
「レモンさん?」
「みんな待ってるわよ」
「ええー!?」
《帝国騎士団『戦乱』支部》の団員十二名は、アキからの『え、えーっと、勝ったらみんなで乾杯しましょう!』との言葉を受け、気炎を吐いて意気揚々と前線に向かった。
ちなみに私も含め、男連中は何とも言えない気分を共有していた。
認めざるを得ない。
彼らは確かに、『騎士』だ。
下衆な態度で娘を貶めたならともかく、いかにもなロールプレイを堂々と行うような愛すべき馬鹿者共は……私も決して嫌いではなかった。
▽▽▽
おまけ お父さん(だけじゃなくてみんな)には見せられないわたしの日記帳(75日目)
▽▽▽
お父さん(ライカ)
種族:《狼人族》LV41
職業
《戦士》LV3/《片手剣Ⅱ》《突き》
《鍛冶匠》LV4/
鍛冶技能《手入れⅡ》《修理》《精錬Ⅱ》《採鉱》《分解》
作成技能《片手剣》《小刀》《生活用品Ⅱ》《農工具》《金属鎧Ⅱ》《投擲具》
《料理人》LV2/《菓子》《飲料》
《商人》LV1/-
装備
《ロング・ソード[+1]》攻撃力[9]
《イゼンア鉄のヘルメット》防御力[4]
《サンジ鉄の胸当て[+1]》防御力[9]、敏捷[-1]
《イゼンア鉄の中盾[+1]》防御力[8]
《青熊のブーツ》防御力[6]、耐性[+1]
レモンさん(レモンティーヌ)
種族:《人間族》LV55
職業
《戦士》LV7/《片手剣Ⅲ》《盾Ⅱ》《突きⅡ》《払いⅡ》《返し刃》
《裁縫師》LV1/《補修》《普段着》
装備
《レギュラスの剣》攻撃力[14]、命中[+2]、[麻痺攻撃Ⅰ]
《小青玉のサークレット》防御力[2]、耐性[+1]
《黒鉄のチェイン・メイル》防御力[12]、敏捷[-2]
《タンコ鉄の中盾》防御力[9]
《黒虎のブーツ》防御力[6]、敏捷[+3]
コーリングさん(コーリング)
種族:《人間族》LV53
職業
《戦士》LV6/《片手剣Ⅲ》《盾Ⅱ》《斬りⅢ》《振りかぶりⅢ》《斬撃》
《料理人》LV2/-
《商人》LV1/-
装備
《ロング・ソード[+2]》攻撃力[10]、クリティカル[+2]
《タンコ鉄のヘルメット[+1]》防御力[7]、敏捷[-1]
《赤鉄のチェイン・メイル[+1]》防御力[13]、敏捷[-3]、筋力[+1]
《イゼンア鉄の中盾[+1]》防御力[8]、耐性[+1]
《銀狐のブーツ[+1]》防御力[5]、魔法防御力[+2]、回避[+1]
わたし(AKI)
種族:《エルフ族》LV44
職業
《魔術師》LV6/
《プチ・ファイアⅡ》魔法攻撃力(火)[12]、《プチ・アイス》魔法攻撃力(氷)[10]
《エナジー・アローⅡ》魔法攻撃力(無)[24]、《マジック・ウェポン》魔法攻撃力(無)[+10]付与
《フレイム》魔法攻撃力(火)[18]範囲攻撃
《スリーピング》攻撃強度[15]、難易度[0]
《アンロック》、《トラップ・サーチ》、《ガード・チャイム》
《薬草師》LV2/《薬草学》、《ポーション作成Ⅱ》、《調香》
装備
《バルザック樹のワンド》成功値[+2](エナジー・アローⅡ、スリーピング、フレイムⅡ)
《マジック・リングⅢ》(プチ・ファイアⅡ、プチ・アイス、マジック・ウェポン)
/《マジック・リングⅢ》(アンロック、トラップ・サーチ、ガード・チャイム)
《流れ星の魔法帽》防御力[2]、魔法防御力[+2]
《白の魔法衣》防御力[3]、魔法防御力[+4]
《大角鹿のブーツ》防御力[5]、回避[+2]
えいえいおー!
今日は初出撃で敵の陣地を占領したよー!
お父さんとは離れちゃったけど、お姫様が応援してくれたからやる気じゅーぶんだったよー!!
もちろん、人数多すぎてあんまり活躍できなかった。とほほ。
もー、ほんとに人多すぎ。
レモンさんは王都より狭いところに大人数が集まるからこんなもんだって言ってたけど、巻き込みそうで《フレイム》が使えなくなるほど人が多い。
全部で20ヶ所ぐらいしかない砦に4000人弱のプレイヤーが集まるから、仕方ないのはわかってるんだけどね。
だからって、何も考えないで突撃するのはどうかと思った。矢も飛んでくるし。
目の前で他のプレイヤーが光って消えると、ちょっと凹んで何とも言えない気分になる。
味方は人数多い。
でも、それぞれの砦の司令官はちっこいダンジョンのボスと同じで、強敵なのは考えなくてもわかると思うんだけど……。
それでもレモンさんとコーリングさんは、やっぱりすごかった。
他の人が弓矢攻撃で躊躇ってる中、『行くわよ!』『ういっす!』って反復横飛びみたいにして走って行っちゃう。わたしは『アキちゃん援護!』って言われて魔法撃つか、後から着いていくしかない。
『タイミングがちゃんとあるの。
それに弓矢はね、姿勢低くしてると案外当たらないものよ』
『そっすねえ。
次の遮蔽物までに何発撃たれるか、HPと相談しながら走るだけ。
アキちゃんだってすぐ慣れるって』
三回も砦突入したし。
……今日でもう慣れちゃったよーだ!
《ムーンライト・キャラバン》の人も最初は呆れてたけど、わたしたちが走ってから少し遅れてついていけば被害少なくて済むからって、レモンさんの指示でやっぱり突入。
まりあんちゃんとコンビネーション・アタックもしたよー。
いちにのさん! ……で一緒に魔法撃っただけだけど、ちょっと楽しかった。
頼りなかったフランベルジュくんたちもしっかりしてきてるし、《ムーンライト・キャラバン》はこれからどんどん強くなると思う。ルナさんも、みんな無事って連絡したらほっとしてたけど、王国主催のギルド対抗戦にも出てみようかなって言ってたよ。
そんなこんなで色々あったけど、わたしたちも《ムーンライト・キャラバン》も全員無事で、村の奪還と敵陣地の攻略は成功です。
夕方にはお父さんもこっちに来てくれたよ。今日は見張りと移動だけだったんだって。
サンマおじさんも到着で、ルナさん以外の全員が揃ったかな。
他にもお父さんがSのクエストで仲良くなった攻略ギルドの人とかレモンさんのお友達とか、いっぱい紹介して貰ったよ。
明日は遂に本番、《古王国の塔》まで行く予定。
四人パーティーになったけど、今日よりも敵が強いはずだから気を引き締めていこう。
お父さん、ちょっと自信なさげだったけど大丈夫かなあ。
頼りにしてるからね!
追記っていうか、うーん……。
夕方になって、攻略ギルドの人達からすごい勢いでフレンド登録申し込まれちゃったよ。
前はそんなことなかったのに、なんで?
レモンさんに相談したら、ギルマスさん含めて大体は向こうでも知ってる人達だし、今は保険もあるから大丈夫って。……保険?
でも一気に30人は多すぎ。誰が誰かわかんないよ……。
お父さんの機嫌がちょっと悪くなってたけど、レモンさんが何か囁いたらびみょーな顔になって考え込んじゃった。
……なんだろねー?