◇エルフ始めました!
主人公が微妙なエルフ事情を垣間見る話←
単純に一人うだうだぐるぐるしてるだけのような…。
「ゼン、エルフの方の様子は……」
「おう、ロズ良いタイミングだな。カリナとフィーリー呼んできてくれ」
エルフ地雷疑惑が湧いたところで、今度は扉をノックして若い男性が顔を覗かせた。こっちは問題なくオニイサンだね。
「ちょうど良いから、ウチのパーティーメンバー全員呼ぶぜ」
間もなくロズと呼ばれたお兄さんに連れられて、女性2人が部屋に入って来た。
「あ、起きたのね。良かった~」
「カリナさんてば…挨拶が先ですよ!」
ふむ、前衛職っぽいはつらつとしたお姉さんがカリナさんね。
「カリナよ、よろしく」
「フィーリーです、はじめまして。助けて下さってありがとうございます」
ほわんとした雰囲気のフィーリーさん、衣装的には治癒系の魔法職っぽい。
「ロズと言います、助けて頂いて感謝します」
垂れ目気味のロズさんは…学者?魔法職?どっちだろ?
「ゼンだ。一応パーティーリーダーをしてる、よろしくな」
…敢えて言うなら無精髭は剃った方が良いかと、男前なのに勿体無いなぁ。
4人と握手を交わして今度は私の番。
「名前はリーン、見ての通りエルフだよ。よろしくね、カリナさん、フィーリーさん、ロズさん、ゼンさん」
「わざわざ『さん』なんて付けなくて良いのに。間違い無くエルフの貴方の方が年上なんだから」
「…いや、そこは見た目通りで良いよ?」
見立てでは全員二十代前半から半ばくらいだし、中身の私もまだ二十代なんだし?
…本当は単純に爺扱いが嫌なだけだけど……。
「んじゃ、互いに呼び捨てにしとかねぇか?俺はリーンて呼ぶから、アンタはゼンて呼べばいい」
「ああ、それなら」
呼び捨てはゲーム内で慣れてるから、それでいいならそれでー。
「で、ですが、そんな…エルフの方を呼び捨てになど……」
敬意なのか畏れなのかわかんないけど、そんなビビらなくても…。
って言うか、エルフってだけでどんだけぇー。
「良いから、いつも通りに呼んでよ。畏まられたりすると逆に対応に困るから」
引かれても話進まないしねっ!
「あ、そうそう!あなたの服ね、宿に洗濯頼んでおいたんだけど、大丈夫だった?すごく良い生地みたいだったんだけど…」
言われて気が付いた、そう言えば今着てるの寝間着?…うん、布袋に頭と腕を出す穴開けただけとかは思っても言っちゃダメだ。
「大丈夫、だと思う、よ?」
ゲーム中では着てる物洗濯する必要なんて無かったから…正直、洗濯するとどうなるのかわかんないんだよねー…。
まぁ、初心者向けフィールドをノーダメージで余裕な装備が洗濯したくらいで傷むとも思えないけど。…っていうか、それなりに高価な素材を惜しみなく使った装備なんだから、傷んだら泣くよ?
「胸当てやら籠手は磨いてそこに纏めといたから、心配ないぜ」
ベッド脇には確かに言われた物が置いてあって…ああ、そっか、現実ならセット装備もバラバラにできて当たり前だよね。
「ありがとう、助かるよ」
素直にお礼を言ったら微妙な顔をされた…今の普通の事じゃない?
「何か変な事言った?」
「いやぁ、全くこれっぽっちも変じゃない…が、なぁ?」
「…エルフの方がこれほど友好的に接してくれるとは思ってもいなかったので……」
ちょっと待って、本当にこの世界でエルフってどんな扱いなの!?
まさかアレなの、高慢な自称至高の存在とか、そんな廚二病的種族だったりするの!?あぁぁ、嫌な想像が頭の中に~。
そんなのだったら、私耐えられないから!
「やだなぁ、お礼ぐらい普通に言うってばー」
とりあえず笑って無害アピール!
ふふふ、せめて私に対する認識だけは改めてもらわないと…!
「…そうか、そうだよな。いや、悪い悪い、俺らが見たことあるエルフなんて神殿のお偉い神官様とそのお付きくらいなんでなぁ」
「そう言えば、確かに…」
そうそう、お偉いさんと庶民を一緒にしちゃいけないのですよ!…例えあっちが正解としてもね。
ふう…どうやら、無害アピールは成功した様子…しかしコレ、うっかりした態度取れないわ。
ああ…やっぱりエルフって限りなく地雷っぽい……。
「はぁー…、うし、とりあえず話がついたところで飯にしようぜ。後は腹が膨れてからでも良いだろ?」
「あ、そう言えばもうお昼時すぎてますねー」 ランチのメニューはまだ残ってるでしょうか…とフィーリーが心配し始めた横で、カリナが再び何か思いついたようでぽんと手を打った。
「そう言えば、着替え持ってないでしょ?一応、周りは見たけど荷物らしきもの落ちてなかったし。ロズ、貸してあげなさいよ」
「そうですね、寝間着のままで食堂には下りれないですね」
「俺の着替えでも…」
「却下よ、却下!ゼンのは何か臭いそうだし」
「ひでぇ!今のは流石に傷付くぞ!?」
……荷物?
えーっと…荷物って、ゲームでは全部アイテムボックスに収納してたから持ち歩く必要無かったんだよね。
それは問題ない、ゲームのなかでは当たり前だし、問題は…アイテムボックス使えるの?
「…あ」
「どうかしましたか?」 駄目もとで心の中で「お~い、アイテムボックスや~い」…とか呼んでみたら、本当にアイテムボックス画面出て来たよ…。
「ああ、その…実は荷物持ってるんだよね」
「え、何処に?」
どうやって説明しよう…コレ。