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◇現実(リアル)始めました!

 

主人公が、ごく狭範囲の現状を自覚したようです←


 

 

 んー…何だろ、ちょっと埃っぽい臭い?

 ヤだなぁ、昨日布団は干したばかりなのに…明日は帰り遅くなる予定だから、布団外に干せないし…。

 ああ、何だか周りぼんやりと明るい…明るい?

「今、何時っ!?」

 大慌てで飛び起きたら、全く知らない部屋だった。

「え……あれ?」

 周りをきょろきょろ見回してもその事実は変わらず、内装は全体的に年季の入った木目調…あえて言うなら北欧風?

 窓と扉が2つづつ、ベッドが自分のも含めて3つ、後は棚と椅子が少々…宿屋?

「ここ、何処?」

 首を傾げたらさらりと顔に零れた…って、私の髪って軽くウェーブが掛かってるからこんなにさらさらの筈無いんだけど…?

「金、髪!?」

 無造作に一房掴んだ髪の色に思わずびっくり。

 淡い色合いの綺麗な金髪、細いのに癖の全く無いサラサラのストレート…引っ張ったら当然のように痛かった。

「コレも、日本人の肌色じゃない……」

 髪を掴んだ手は黄味の無いミルク色、おっそろしく肌理の細かい滑らかな肌と爪の先まで冗談みたいに形がいい長い指…ただし、明らかに女性のそれでは無いけれど。

 ほっそりして一見華奢なのに、触ればわかる意外としっかりした骨と関節…男性の手だよね、サイズ的にも。

「コレってアレよね」

 つるっとシャープな顎のラインと小ぶりでツンと形の良さそうな鼻…何より特徴的な先の尖った、耳。

「間違いなく『リーン』のボディ…だよね」

 くっきりと浮き出た鎖骨から続く真っ平らな固い胸板…人並みよりはあると自負していた胸が跡形もない。しかもアバターを標準体形よりやや細めに設定していたせいか、こうやって見ると細いといか貧相。

 それ以上に、服越しに胸に触れた手から感じる鼓動、これは……。

「あはは…もう、間違い無くナマモノだこの体……」

 ゲームの時は行動に違和感を感じない程度の感触までしか無く、こんなきっちり触ってる感覚も触られてる感覚も、ましてや脈や鼓動なんて微細な感覚など無かった。そして、今感じてる喉が渇いたなー…とか、お腹空いたなー…っていう生理的欲求そのものを感じないように意図して設定されていたのがあのゲーム。

「もしかしなくても、ゲーム経由の異世界召喚とかいうオチ?そんな、テンプレな……」

 がっくりとうなだれて突いた手の下には煎餅布団と大差ない固さのベッドとぼちぼちな肌触りのシーツ。この安っぽい感触も逆にリアルなんだよね、ゲーム内だとそう言う設定は逆に手間かかるからやらないの。

「…っていうか、あるのに何で違和感感じないんだろ……」

 確かに3年間サブキャラも作らずに使い続けているアバターの体、違和感無いのは納得できない事もないけれど…あったものが無くなって無いはずのモノが引っ付いてるのに何で私は違和感を感じて無いのかなー?

 流石にわかるよ?わざわざ手突っ込んで確認しなくても、意識すれば感触があるから。

「くうぅ~、こんな事ならせめてアバターも素直に女性にしておけば良かったぁ~……」

 嘆いてもしょうがないのはわかってるけど…あのジジイ、見つけたら絞める…!

 

「はぁー……」

「おっ、起きてたのか」 うだうだ考えてたら、いきなり扉が開いて見知らぬ…うん?この人、ベヘモットから逃げてた4人の内の1人だよね?

 オニイサン?オジサン?見た目だと微妙だなぁ…。

「ああ、えっと…おはよう?」

「昼過ぎなんだが…まあ、良いさ。丸一日寝てたが、気分は悪くないか?」

「気分……」

 その言葉に一瞬脳内にフラッシュした光景…っ、ダメダメっ!今思い出したら、色々駄目っ!今は封印!記憶よ沈め!!

「大丈夫、何ともないから」

 よし、何とか笑顔で言えた!…ほぼ営業スマイルになったけど、動揺は悟られなかったはず!…多分。

「ならいいんだけどな。此処はネーベルの街にある『ミルク色の鍋』って宿だ」

「ネーベル…」

 …あれ?ネーベルって、あのクエ受けた村と同じ名前……。

「あそこから一番近い街だったから、とりあえず運ばしてもらったが…問題無かったか?」

「そうなんだ…っていう事は助けてもらったんだよね?」

 とりあえず話は合わしておいたほうが良いよね、状況わかんないし。

「いやぁ、むしろ助けてもらったのは俺らの方だから気にするな。宿の部屋にアンタを寝かす以外の何かが出来たワケでもねぇしな」

「いや、それでも助かったよ。ありがとう」

 そう言ったら、照れくさそうに頬を掻いて視線をさまよわせた彼…あ、何かこの人すごく良い人な気がしてきた。

 …よし、ここは一つ思い切って聞いてみよう。

「さっき、ここはネーベルだって言ったよね?」

「…ん、あ、ああ、言ったな」

「近くにミルキーフォレストある?」

「ミルキーフォレストなぁ…」

 ありゃ、微妙な表情されたよ…やっぱり街の名前は偶然の一致かな?

「ある事ぁ、あるが…アンタ、そこに行くつもりだったのか?」

「行くつもりって言うか、まぁ、ちょっと……」

 まさかそこでクエ中でしたとも言うわけにもいかず言葉を濁したら、大して気にした風も無く彼は続けて答えてくれた。

「この街が発展する時に殆ど伐採されて、今は霧の森が残ってんのは山の天辺の方だけだぜ?」

 今はそんな様子だからもっぱら『ホワイトハット』と呼ばれているのだとか…っていうかあったんだ、ミルキーフォレスト。

 ひょっとして、ここゲームの平行異世界かな?まあ、全く縁もゆかりもない何処かの異世界と言うよりは筋が通ってる…のかな?

「…そうなんだ」

「まあ、アレだ、気にすんな。な?エルフのアンタがここ数十年の世情に疎いからって、誰も気にしやしねえって」

 そんな良い笑顔で言われても…いや、それ以前にエルフだからって納得されるような事なの?

「…ちょっと待って、エルフに対する認識って……」

「あー…気に障ったら悪いんだが、住処の森に引き籠…隠れ棲んで、人と交流する事を好まないもんだと思ってるが?」

 ヤダ、なにその面倒くさい種族。

 確かにファンタジーではそんな設定多いけどね…ゲーム内ではプレイヤーとして選択可能な一種族以上でも以下でも無かったんだよ?

「えっと……」

「やっぱり気に障ったか…?」

「気に障るとかじゃなくて…悪いけど実感無い」

 聞いて良かったような悪かったような…ああ、でも、きっと一般的な認識なんだろうねコレ。

 察するに、この世界のエルフ事情ってロクな物じゃ無いんだろうなぁ…。

 

 って言うか、ミスったのは性別だとばかり思ってたけど…ひょっとしたら種族も、なの?

 

 

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