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◇何時ものイベント?

そしてトリップへ…!

 

「俺の、妹が……」

 話を聞いた後にそう言ってすすり泣き始めたNPC男性に微妙な気分になりつつ、気を取り直して一層霧の濃くなっている細い脇道へと足を踏み入れた。

「うわー…視界1mって感じ……」

 一応、足下に獣道が続いているのがギリギリ確認できるものの、視界はほぼ真っ白で木の影すら見えない状態。初めて来るフィールドなのでマップは当然白紙で、心許ないことこの上ない。

「先制率100%とかじゃありませんように……」

 先制攻撃を防ぐ各種スキルを発動させてはいても、やはり視界がコレだと不安になる。

 戦闘が全て固定のイベント扱いの場合は強制的に先制攻撃でエンカウントさせる事が出来ると弟から聞いている手前、スキル全開でも先制攻撃になる場合はなると知っていてこういう演出をされると尚更。

「う~~…やっぱりこういう緊張感は苦手~……」

 現実ならさぞ心臓がバクバク言ってる事だろうけど、このゲームのアバターボディには残念ながらそんな機能備わって無い。海外のミリタリーなゲームだと実際に心臓バクバクいったり息切れしたりもするらしいけど、そんなリアルは求められて無いからね、このゲーム。

 足下に注意しつつ道なりに一歩一歩進んで行くと、見えなくとも歩みに合わせて周囲の地形がマップに刻まれていく…えらく曲がりくねってますが一本道ですか、そうですか。

「フラグですね、わかりますー」

 如何にもこの先にイベントがありそうな気配がプンプンするよね。

 …それにしても、わざわざこんなに長く歩かせて恐怖心を煽るとは…確かに質悪いよ、弟。

 

「ん?」

 敵とのエンカウントが無いのに気の抜けない一本道を歩き続ける事しばし、周囲の霧が少し薄くなった。

 歩く事に少しづつ薄まって行く霧、これは…。

「イベント、近いかな?」

 表示されている限りでは相変わらず一本道なのにどんどん薄くなる霧、これは道の途中でイベントだなー…と今までの経験から感を働かせて少し歩く速度を緩める。

 そろそろ木の陰が透けて見えてきたところで、唐突に視界に人影が現れた。

「おお、お待ちしておりました……」

 茶色いフード付きのマント姿の、顔は見えないけど声から察するに老人…怪しさ大爆発。

 もうちょっとどうにかならかったの、コレ?

「ないわー…」

「どうかしましたかな?」

 思わずがっくりと力を抜いた私にそんな声がかけられる…おや?

 NPCのはずなのに予想に反して妙に的確で人間くさい反応…ひょっとしてA.I.使ってる?

「い、いや何でもないよ…」

「さようですか、ならばけっこう」

 態度を取り繕ってみたらちゃんと対応した反応が返って来た…やっぱりA.I.使ってるっぽい。

 確か以前は簡易A.I.でもライセンスが馬鹿高いとか反応を制御しきれないとか言ってたはずだけど、やっぱり使うことにしたのかぁ…なるほどね、今回のこだわりはここかな?

「それで、なんで貴方はこんな所に?」

 相手がA.I.ならば、設定されているキイワードもしくは近いセリフを返せばイベントが進行するはず…。

「貴殿をお待ち申しておりました」

 …ビンゴ!

「どうか貴殿の力で、我等を勝利と栄光を…!」

 …………はい?

 

 妹を助けて的なクエストが、何処をどうしておいでませ勇者様的な流れに?

「…何故、引かれる?」

 さあカモーン!!…とばかりに両腕を広げた老人が訝しげに…そりゃ、引くでしょう!?

 いったいどうしてこんな所に空気の読めないNPCが…あ、まさか、隠しクエ?

「ちょ…それはそれでいきなり来られても……」

 一定条件を満たしてるとクエスト中に通常ルートとは別のルートが派生する事があるのは知ってるし、それを狙って行ったこともあるけれど…こんなに唐突で全く関連無さそうな方向に派生するクエなんて初めてで…。

「どうしよう……」

 隠しクエは通常のルートよりかなり難易度が跳ね上がるのが常、元が難易度的には中の中の下くらいだったから…最悪で中の上の上くらい?

 …正直に言おう、そんなのに対応出来るような準備してきてませんから!!

「あぁう、うあぁ~、迷う~~。次にもう一度ぱっと出会えるとも限らないしぃ~~~」

「………………」

 悶える私に、NPCの冷たい視線が突き刺さるけど気にしてる場合じゃ無いし。

 最新のクエで一発目に隠しクエが来るとか美味しすぎるけど、あくまでクリア出来ての話。

 それに勝利と栄光とか、そんな廚二…もとい、どう見ても権利とか陰謀とか面倒くさい事に巻き込まれるフラグが透けて見えてるのに、何の準備も無しにとか、ねぇ?

「あー、もうっ!こんな事ならパーティー組んで来るんだった~!!悔しいけど今回は諦めるしか無いかぁ……」

 流石にこれでリタイアとか無様すぎるので、今回は普通にクリアしておこうとNPC老人に断りを入れるため引いた分一歩近づく。

「今回は受けないから、さよなら」

 NOに該当する否定の言葉を言えばキャンセルされるはず…なんだけど、何で私は腕を掴まれているのかなー?

「え…だから、キャンセルって……」

「……逃がさん」

 やだ…ナニコレ、展開怖すぎ。

「え?あの…受けないって…あ、ちょっと…!?」

 容赦なくグイグイ引っ張られて…予想外にこの人、力強っ…!!

「逃さん…逃すものか…!その力、我等の為に……っ!!」

「ちょっ、やっ…引っ張らないでっ…!止めっ……あ!」

 ほんの一瞬、力の緩んだ瞬間にたたらを踏んで…気が付いたら、体は老人の方へと倒れて……。

 

 

 突き抜け、た……!?

 

 


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