◇好奇心は類を呼ぶか
バトルシーンはあるけど残酷表現じゃありませんよ…超ライトな茶番です。
だって試合だし←
「ついて来いって…ギルドに行くのか?」
「うん。あ、仕事受けるとかじゃないから」
翌朝、ゼンとカリナを連れてギルドへ…あ、そう言えば私から誘ったのこれが初?
「仕事じゃないのに私たちと一緒にギルド?」
「そう、仕事じゃないけど重要な事がね」
仕事受けるんじゃありません、パーティー強化計画第二段ですよ…主に前衛二人のね。
材料が手持ちにあるからミスリル製の防具作ろうかと聞いたら、いきなりミスリルの防具に変わったら不審すぎるからさすがに勘弁してほしいと言われちゃいましたよー。
「ソレ使ってみたいでしょ?どこか安心して訓練出来る場所無いか聞こうかなって」
「ああ、なるほどな」
夜に宿の裏でゼンとカリナが二人そろって素振りしてたみたいだけど、それじゃ物足りないと思うのよ…新しい武器手に入れたら使ってみたいと思うでしょう?
流石にゲーム内と同じように、街の外で矢鱈めったら狩り放題とかする訳にもねぇ…レイス狩りが控えてるから下手に怪我させたく無いし。
「どこかに訓練出来る場所あると良いんだけど…」
ゲーム内だと訓練場所っぽい物がギルドに付属してたけど、ここのギルドには無いみたいだったし。
「はい、ありますよ。自警団本部にある訓練所をご利用頂けます」
「へぇ、そうなんだ」
お馴染みとなったギルドの受付嬢に聞いてみたら、街の自警団本部にある訓練場所が使用可能との事。
「ギルド証を提示していただければ、無くても問題無いとは思いますが…一応、紹介状をお渡し致します」
「いや、無くても問題無いならわざわざ……」
無くてもいいと言おうとした矢先に、目が合った受付嬢がものすごくいい笑顔で威圧してきたんですけど…。結局、断りきれずに紹介状渡されました。
たまにはこういうフォーマルな仕事もさせろと言う事らしいけど…この受付嬢もたいがい仕事人間よね……。
「はぁ…これまた予想外に……」
「なんか…大きいわよ?」
「俺もマトモに来たのは初めてなんだよなぁ……」
自警団本部、予想外に巨大な建物でした…街中にあるのに造りが施設というより砦なんですが?
「本当にここでいいんだよね…?」
ちょっと気後れしつつ開けっ放しの扉から中に入ると、受け付けらしき長机に暇そうな青年が一人。
「あの、もし?」
「へい、らっしゃい!自警団本部にようこそ!」
「「「………」」」
人当たりのよさそうな青年がにぱっと笑みを浮かべて景気の良い挨拶をくれたけど…何か、違うよね?
「自警団本部…ですよね?」
「……ああ!悪い悪い、うち八百屋なんだよ。いつものクセでさ!間違い無く自警団本部だよ」
数人は職業団員も居るものの、基本的に街の男性が兼業しているのだそうで昼間はほとんど人が居ないんだそう。
「俺はまだ家継いでないからさ、そこそこ暇があるんでこうやって居るわけ。ところで、あんたたち冒険者みたいだけど何か用事が?」
「あ、そうだった。これが紹介状とギルド証で…ここの訓練場使わせてもらえるって?」
紹介状を渡して三人分のギルド証を見せると目を丸くして次に爆笑…えっと、どの辺りに笑う要素が?
「あははっ、あんた達真面目だな!ギルド証だけ見せてくれれば良いのにさ。せっかくだから、訓練場所まで案内するよ」
ひとしきり笑った所で、わざわざ案内してくれるそうで…とりあえず、初対面の印象はこれでOK?
「まあ…案内って言っても、建物抜けるだけなんだけどさ」
入り口真正面から目の前の扉を抜ける事二つ、あっという間に広い中庭に到着。
「建物が広いんじゃなくて、中庭が広かったのね」
「そうだよ、緊急の時は街の人の避難場所にもなるんだ」
前側の三面が建物で、奥は単純に分厚い壁だそう…中庭はちょっとした校庭くらいありそうな広さ。
今は、端の方で素振りしている数名が居る以外は誰も居ない。
「使っていい場所は?」
「何処でも、好きな場所を。見ての通り人居ないし、皆が集まって来るのも夕方以降だしさ」
「じゃあ、それくらいで引き揚げたら問題無いかな」
場所も時間も十分…よし、始めますか…!
「なぁ、思ったんだが…武器の慣らしはわかるが、レイス狩るのにこんな所で訓練必要か?」
「ああ、違う違う。レイス狩る為の訓練とかじゃないから」
目的はレイスとか関係無く、もっと根本的な所だから。
「え、違うの?」
「うん。二人には根本的にレベル上げて貰おうと思って」
「いや、待て待て、レベルなんてなぁ年に3も上がれば良いようなモンだぞ!?今日明日で上がるわけ無いだろうがよ!」
「大丈夫、それに関しては考えがあるから」
むしろ年に3とかしか上がらない方が驚きなんだけど…まあ、リアルの生活をしつつ無茶をせずに手堅くとなるとそんなものかも?
ともかく、ゲーム内の仕様がどこまで通じるのか試してみない事には何とも言えないから、実践あるのみ!
「って、おいっ!それどうした!?」
「え?えっ?着替え…?」
「今着替えたけど?」
事前にセットを組んで登録しておいた装備による、早着替え機能が生きているのは確認済み。
「すごい、キレー…」
「ふふっ、ありがとー」
見栄えはするものね、この『騎士の儀礼鎧』。白に銀装飾の入った重装の全身鎧でフルフェイスの兜も付いて雰囲気は十分、ミスリルベースで中級者向けとして防御力も十分…だだし特殊効果及び防御力以外の能力上昇、一切無し。
状態異常対策や能力補助が必須になってくる中級者向けでこれは無い…と言うことで、普通に格好いい正統派の外見の割にネタ扱いされていた不遇の装備ですよー。
何でそんな装備持ってるかって?あえて言うならご褒美用…コレ着て姫抱きしてあげると喜んでくれる子が沢山居たのよ-…この装備見栄えだけは良いし?ほら、私、公式ネナベみたいになってたから、男性アバでも安全パイって認識されてたから。
「なぁ…嫌な予感するんだかよぉ…そんなモンに着替えて、そんなたいそうな得物構えて…何するつもりだ?」
「大層って、見た目だけだってばー」
ランスと大盾で見た目こそかなり厳つい重装備だけど、両方とも私との相性良くないからまずクリティカルなんて出ないし。これ自体、何の変哲も無いランスと盾だから。
「いーや、お前が装備してる時点で十分脅威だ!」
「ヤだなぁ、単に怪我しないための備えだから。どうせなら、実戦形式で訓練した方がいいでしょう?」
メットの覆いを下げて、【威圧】ONに【挑発】ON…どうよ、命の危険的な物感じない?
「い゛っ…!?」
「ひぇっ……」
試してみたら脳内でオンオフ切り替え可能だったスキル…マップ上のマーカーもまた然り。認識一つでゼンとカリナのマーカーが味方を示す青から敵の赤に。
「さぁ…覚悟を決めて掛かっておいで……?」
ゲーム内で対プレイヤーも経験済みだから、死合いではない試合なら大丈夫!
「【ファイヤーボール】!」
「残念!【マジックバッシュ】!」
「ぅ、わ…あぁあ!?」
そして2日目、今日からはロズも自主参加してくれてます…今、あっさり吹っ飛んだけど。
「えぇい、くそっ!」
「はい【バッシュ】」
「おわぁ!」
こっちも吹っ飛ぶゼン。視界的な死角は私には死角にならないから、そのタイミングじゃ無理よ?
三人には私と言う名の現状では絶対かなわないボス敵に延々挑んで頂いてます…ま、十分に手加減はしてるけど。
「まだまだ行くよー…【連射】5、【ファイヤーボール】!」
「げっ、だぁぁぁ!!」
「きゃぁぁぁ!」
「わわっ……」
本当にステータスが制限される手加減用装備もあるけど、それだと多分予想より経験値入らないんじゃないかと。今回はより強い敵に挑んで、かつ生き残る事に意味があるんだから使いませんよ-。
「逃げてばかりじゃダメでしょー?」
「無茶言うんじゃねえっ!!」
ファイヤーボールは流石に避けるしか無いと思うけど…さっきから避けばかり。スキルも何も使わない単純な“回避”って経験値倍率低いのに。
ゲーム内では戦闘に限らず生産、果ては徒歩での移動に至るまで全ての行動に経験値が加算されていたのよ。強敵に挑んでかなわなくて逃亡しても、生きていればそれなりに経験値が入るから無駄にならなかったのよね…今回はそれを私が強敵役で安全かつお手軽に試してみようって訳。
「ほらほら、攻撃しておいでー、怪我してもちゃんと治してあげるからー…【アイスランス】」
「そう言う問題じゃ無いわよー!!」
うーん、時々使う魔法や技の後の硬直が攻撃チャンスなのに…いつ気付くやら。
「そっ、そろそろ休憩っ……」
さらに数発魔法を撃った所でロズがギブアップ…みんな情けなさすぎ。
「わざわざ攻撃回数控えてあげてるのに」
「アレでか!?」
地面に伸びてるゼン達から大ブーイング…むむむ、コレは一度本気の攻撃回数と言うものを見せておくべき?
「…本当はやりたくないけど、一度本気喰らっとく?」
「げっ…」
「ほう、ソイツはなかなか興味深い」
「…え?」
振り向けば、制服っぽいものを着て大剣をかついだ非常に逞しい中年男性が…。
ええっと…どちら様で?
「あのー…」
「ああ、俺か?自警団の団長やらせてもらってるモンだ。なかなか楽しそうなんで、少し混ぜて貰えないかと思ってなぁ」
楽しそうって…ん?おや…Lv90?うわぁ、レベルだけなら今までで断トツ!
職業が自警団団長はわかるけど、種族がハーフオーガって…わかるけど、流石にびっくり。
「あまり楽しくは無いですよ?」
「はっはっは!そりゃ、手加減して、なお避け一辺倒が相手だとなっ!」
…図星だからって、ゼンとカリナは目を逸らさないように!事実だから。
「で、どうだ、俺が相手ってのは?」
「えぇと、まあ……」
レベル的には十分以上に不足なんだけど、大剣との相性が良くないからまあ、ゼン達相手にするよりは多少はマシかも?
ただ、かなり真っ当に相手をしないとうっかりがありそうで、面倒くささが倍以上だとかはねぇ…。
「正直な所、貴方の場合は半端に実力がある分面倒なんですが…」
「ははっ、そいつは誉め言葉だな。まぁそう言わずに、たまには運動させてくれや」
「あうぁー……」
別に誰か釣ろうとか、全然思ってないのに…何でこの人釣れたかなぁ…はぁ。
「いやいや、予想外な事するな」
「実はコレ手加減用なんですよー」
「そりゃ、ま、重装騎兵用の装備で立ち回るって方が本来は嘘だよなぁ」
振り下ろされる大剣に肩パーツに腰パーツ、最後は胴鎧を脱ぐと同時にぶつけて逸らし、一通り捌き終わる頃にはインナーに腕と脚の鎧のみ残した軽装に。
着替えるタイミング逃しちゃったから応急措置で邪魔な鎧を部分的に脱いでみた次第…装備変更機能を使うとパンイチにアクセサリーという変態装備になると思われるので却下。
「しかし、まさか武器捨てるとはな」
ええ、ランスと盾は真っ先に投げ捨てましたが何か?
だってあの装備だと色々小細工できないんだもの、ある意味素手の方がマシ。
「だって、重量級のランスも盾も苦手なんですよー」
「あれだけ動いておいて、よく言うよな…全く!」
「【フォックスステップ】」
発動後の初撃を回避出来れば、その後は最大8連撃目まで確実に回避出来るというスキルですよ。 まぁ、9連撃目以降も続く場合はそれ以降は全部喰らうから使い勝手は微妙なんだけど…大剣は最も連撃の続かない武器で、他の攻撃回数の増えるスキルと併用しないと一番攻撃回数の多いスキルでも最大5連撃だから今回は問題無し。
「ハぁっ…ぅらあぁ!!」
…ん、この動きは【アッパークラッシュ】かな…だとすると、最大4連撃っと。余裕、余裕。
「ちィっ…!」
さらっとかわして懐へ…スキル後の硬直狙うのはセオリーですよー。
というより、一騎打ちで発動後の硬直が長いスキル使うのは普通に自殺行為かと。
「【虎吼波】」
「ゴふっ……」
ペタリと相手の胴体に当てた手から派手な爆音と衝撃波が広がり、2mを越える巨体が吹っ飛んで地面をズザーッと横滑り。
確かに前面への威圧とごく狭範囲に向けた吹き飛ばし効果のあるスキルだけど、威力自体は通常攻撃よりかなり低いはずなのに…ま、まさかクリティカル入った!?うわぁ、ヤバーい……。
「大丈夫ですか!?」
「ゲッホッ…ぅおふ。あー…大丈夫だ。かなり効いたが、死ぬ程じゃねえ」
土埃にまみれた上半身起こして満足そうにヘラッと笑った団長さんだけど…死ぬほどじゃないってのは、聞き捨てならないんですけど!?
「すみません!怪我してるなら、すぐ回復しますからっ!!」
「いや、大丈夫……」
って言うか!ステータス見たら体力残り3分の1とか!!大丈夫じゃないから!
えぇい、とりあえず程度がわからないから大回復行きます!!
「【グランヒール】!」
「おー…おぉお?」
光のシャワーが降り注いで…よっし!ステータス見た限りでは全快!
「痛み残ってたりとか、無いですか?」
「無い無い、むしろ手合わせ前より調子が良い位だ。と言うか、もしかしなくても、上級回復魔法だよな?」
「ええ、とりあえず足りないよりは良いかと思って」
「んなのただのヒールで十分、むしろ上級回復魔法なんざ使ったアンタのが心配なんだが…」
「はい?」
うん?何の心配されてるかよくわからないんだけど?
「いや、上級魔法だろ…魔力の消耗は大丈夫か?」
「…魔力なんて一割も使ってませんけど?」
「「「「………」」」」
しかも魔力の自然回復速度が上がるスキルは常時発動状態だから、雑談している間にほぼ全快してるんですけど?
「流石エルフ、凄いな…」
「一割以下…一割以下って……っ」
「何この不毛感……」
「エルフハンパねぇ……」
好き勝手な事言ってくれちゃって…確かに種族特徴もあるけどどちらかと言えばレベルの恩恵なのに。
「さて、ゼンにカリナにロズ…十分休憩したよね?続きといこうか…ねぇ?」
「げっ!」
鎧はとっくに再装着済みなのよ?
振り返ってにっこり笑えば後ずさ…ちょっと、何で端の方で見物してた自警団の人まで悲鳴上げて後ずさってるのかなー?
スキルも魔法もちゃんと方向とか制御してるのに…失敬な。
「団長さーん…誤爆したらごめんね?」
「あー…まあ、兼業のヤツらだから本業に支障の出ない程度でな」
…ふふふ、言質いただきましたよ!
よし、まずはファイヤーボールの10連射ぐらいバラまいておこうか!…狙いは勿論超適当で。
さてさて、ゼン達には残りの数日で益々励んでいただく予定なので覚悟してもらいましょうか。
大丈夫、薬剤及び回復魔法は各種取り揃えてるからねー!




