◇何時もの道中
まだトリップしてませんよ……。
「せめてレアエンカウントしてくれればなぁ……」
希に出て来る雑魚を瞬殺しつつ、霧に包まれた林道を黙々歩く事、体感時間にして30分…正直な所、暇で暇で。
所詮中級者向けのフィールドなので雑魚なら問題無く瞬殺できるものの、フィールドの適正レベルからは差がありすぎてエンカウント自体がそもそも希という状態。一定確率で先制されるというフィールド特性も、エルフの【森の加護】という常時発動スキルで相殺され全くの無意味と来たものだ。
あまりに暇なので、このVRMMORPGのおさらいでもしてみようかな?
このVRMMORPGの名称は『グランディア イストワール』、ファンタジーな世界観でありきたりの体感型MMORPG。純国産…と言うより、単に運営会社の規模が小さいため国内向けサーバーのみで展開しているこじんまりとしたゲームだ。
評価としては悪くはないといえど格付けは下位安定。
グラフィックや細部の作り込みで劣るとは思わないけれど、多人数による万人単位の大規模戦闘を売りにした大手の物とは違い、集団戦の規模などせいぜい数百対数百という地味さ。基本的にPK不可、上限が3000の割にサクサク上がるレベル、課金でどうにかなるステータスなどなどから、一部では『大人のヌルゲーよい子のゆとりゲー』などと言われたりも。 それでもそこそこのユーザー数を獲得出来ているのは、逆にそのユルさがありがたいという社会人プレイヤーが少なからず居るからと言うことだ。本来ならクエストを繰り返して貯めなければいけない資金も種族的に有利不利の激しい能力値も、ちょっとした課金で簡単に補えてしまえるのが良くも悪くもこのゲームがユーザーの支持を得ている重要なポイントの一つなのだから仕方ない。
まぁ、かと言って本当に課金のみの能力値の水増しでどうにかなるような事は無く、最終的にはやはりレベルを上げざるを得ない仕組みにはなっている。大量課金したからと言って無双出来るなんて事にはならないよう、きちんとゲームバランスは調整されているって話し。
そんなゲームであるため、プレイヤーの年齢層は比較的高めでちまちま課金しつつ長くのんびり楽しむプレイヤーが多い。特定のイベント時以外はPKも出来ないので、PK目的のプレイヤーが荒らし回る事も無いし。
さて、では世界観は…と言うとこれは典型的ファンタジーな世界そのもの。モンスターがいて街があってお城があってダンジョンがあって…まぁ、説明するまでもないよねと言うレベルなので略。
プレイヤーが選べる種族はけっこうあって、人間にエルフ、オーガ、獣人、ドワーフ、あとは魔人にダークエルフもあるけれどこの二つは少々能力値に癖がありすぎて人気が無い。種族特徴は…まぁ、これも大体予想が付くだろうから略で。
あえて言うなら人間基準でオーガ、獣人、ダークエルフは前衛向き、エルフ、魔人は後衛向き、ドワーフは生産特化といった所。
後は、スキルとか魔法とか…これはファンタジーなら定番だろうから略。…目新しい物と言えば、魔法エディタが付いてる事くらい。予め用意されている魔法のエフェクトやら属性やらを組み合わせてオリジナル魔法を作る事が出来る機能で、割とハマる人も多いと聞く。
職業は最初から転職可能な通常職と何種類かの職業を経験した後になれる上級職、勿論転職可能な職業は種族依存で色々制限が付く。種族毎の職業解説はややこしいから…必要があれば、ね?
あとは定番のチャット機能やメール機能の他に、モーションエディタや建築エディタという明らかに玄人向けの機能なんかも搭載されてはいるものの、今言った事を頭に入れておけば説明書を読まなくても十分にプレイできる。
キレイなお姉さんNPCがナビゲートしてくれる、驚くほど親切なチュートリアルあるからね!
ふう、脳内セルフ突っ込みも疲れる…ああ、阿呆な事してたら、ちょうど目的地まで来たよ。アップデート前まで無かった脇道と、その入り口で切り株に腰掛けてうなだれているそれっぽいNPCが居るし。
さあ、本格的にクエスト始めましょうか。