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◇荒療治、そして夜は更け

 

 

あ~ああ~…漸く更新出来たよ…!

 

二人がうだうだしてるだけのつまらないお話です←

BLっぽく見せ掛けて実はまだNLでも行けるという罠…故に警告は付けません~。

 

 


 

 

原初に混沌あり

 

その中に降り立った神は己が足下を地と定めた

 

右手の光を解き放ち昼と成し

左手の闇を解き放ち夜とした

 

昼と夜とが幾度となく巡り

海が満ち緑が茂る様を見て神はそれを良しとした

 

疲れを感じた神が眠りに就くと

水の王が遣わされた

 

生命の起源たる水の王の御世

“ウォルティアル”

 

次に遣わされしは火の王

 

繁栄の種火たる火の王の御世

“フレイアル”

 

更に遣わされしは風の王

 

導き手なる風の王の御世

“ウィンディアル”

 

最後に遣わされしは地の王

 

永久なる安寧もたらす地の王の御世

“グランディアル”

 

創世の神代より4の王の世を経て

ここに世界は定められたのである

 

 

「『而して、王は創世の神の下へと還り 混沌たる我等人の世は始まれり』…と続くんだ、今は」

「ゼン?」

 欠伸をしながら裏口から出てきたのはゼンで、私が呟いていた創世記にいまは一文が足されている事を教えてくれた。

「ここ500年で足された一文だから、知らねえだろ?」

「多分…始めて聞いたと思う」

 そもそもゲームの設定そのままの創世記って事から驚きだけど…今は一文足されてるのね。

 …何かしらにつけて500年前が起点になってるなって思ってたけど、私が此処に居る原因もそうなのかな?

 

「ところで、ゼンは何でここに?」

「そりゃ、俺のセリフだ。部屋に居ねぇと思ったら…何やってんだ、こんな所で」

 こんな所と言うのは、宿の裏口横の軒下の丸太ベンチの事?…むしろ見つけたゼンの方が凄いと思う。

「……多分、月見?」

「…ぼーっと月見上げてたって事か。全く、どれだけ此処に居たんだか……」

 溜め息をついて隣に腰掛けたゼンの顔が、何故だか暫くして微妙に歪む。

「……尻が冷てぇ。つか、湿気て絶妙に気持ち悪ぃんだが……」

「ぶっ…そりゃ、夜の湿気たっぷり吸い込んだ丸太だしね」

 私の方は湿気る前から座ってるから平気だけど、その分寝間着代わりのローブがかなり湿気てしまってるし。

 

 居心地の悪そうなゼンを見てにやにや笑っていると、今度は真面目な顔で肩を掴まれた。

「っていうか、本気で大丈夫か?」

「え?何が?」

「何ってなぁ、お前……」

 深い溜め息をついたと思ったら、ひょいとベンチに突いていた手を取られる。

「全く…血の気が失せるくらい冷えちまってる事に気づけよ」

 取られた手を見れば紙みたいに真っ白で、冷え過ぎてゼンの体温程度でもチクチク痛い。

「あ…全然気が付かなかった……」

 月光の薄明かりの下だと、幽霊みたいで不気味ね。

 

「…で、改めて何を思ってこんな事してんだ?」

「え?だから、月が綺麗だなと……」

「そっちはもう良いんだよ!うらっ!」

「うひっ…痛い、痛い!温ったかいけど、痛い!」

 両手で挟まれた頬に温もりが痛い…手を退けて貰おうと掴んだら…あ、手は慣れてあんまり痛くないかも?

「リーン、お前、別に痛いのも辛いのも好きってワケじゃねえよな?」

「ん?何を当たり前な…」

「んじゃ、何でこんな所で一人冷えてんだぁ?」

「……えっと………」

 …あれ?ゼンはとっくにお見通し?

「ワケありのメンバーばっかり抱えてるパーティーのリーダー様を舐めんなよ~?」

 うあぅ、バレバレですか、そーですか……。

 

「その…別に自傷に走ったとかじゃ無くてね?単に頭冷やしたいなと……」

「体の芯まで冷やしてどうする」

 うぅ…それは確かに。

「何かちょっと暴走したというか、気が付いたら何してたんだろうと言うか……」

「暴走?どこらが?」

「言葉に棘があったり、変にテンション高かったり、気が短くなってたり……」

 不安定になって、色々とがむしゃらにやらかしてた気が……。

「何だ、アレでそうだってんなら全く問題ねぇ」

 そんな真顔で……え?いいの?

「色々と他にやりようあった気がするんだよね、今考えれば…だけど」

「ああ、あるある。んなもの、しょっちゅうある。なんだ、リーン、お前も後からグダグダ悩むクチか?」

 呆れたようなゼンの口調に何だかバツが悪くなって俯けば、顔を固定していた手が離れてぽんぽんと頭を撫でられた。…やたら手慣れた感じで頭ぽんぽんされたけど、気にしたら負けな気がする。

「最良のつもりで意外とそうでもなかったってのは、割と良くあるから気にすんな。ぶっちゃけ、最悪を回避出来りゃ上々ってな場合の方が多いぜ」

 それは、選択肢の少ない今の中堅レベルの冒険者なら仕方無い事だとは思う…でも、私の前には選択可能な無数の選択肢がある。

 今の私には出来る事と出せる結果がありすぎる上に、そのどれもが意外と簡単に選べてしまう…それこそ街一つ壊滅させるのも街一つ分の怪我人を癒やすのも、難易度的には同じようなもの。

 元々が選べなかった側の人間には、選べ過ぎるのもなかなか辛い。

 

「いいのかなって…このまま自分の思うようにしても」

「エルフの里に戻らない事か?」

「違うよ」

 レベルといいスキルといい明らかに自分は異質、それらを振るって本当に大丈夫?…だからと言って、今後これら無しに生きて行けるかと問われれば否だけれど。

「むー……良いんじゃねぇか?少なくとも、お前にゃ好き勝手に生きれるだけの技量はあらぁな。そもそも、自分で責任持てん無茶はせんだろ?」

「そうだけど…正直使うのが怖いなって」

 もそもそと近づいて軽く額をゼンの肩に…うん、振り払われないから多分大丈夫。

 

「責任やら影響やら考えるから怖くなるんだろうが、そんなもん頭の隅っこにあるだけで十分だ。少々の事は堂々としてりゃ、意外とどうにかなったりするもんだ」

「…そういうものかな」

 もすっと今度こそ背中に顔を埋めれば流石に戸惑われたけど、困ったような溜め息をつかれたっきりで…背中貸して貰って良いって事だよね?

「……あのね、ゼン」

「何だ?」

「ごめん…本当は色々解らないことだらけで……」

「知ってるさ」

「そうじゃなくて…それより、ずっと、もっと、根本的な所……」

「…………」

 私をこの世界に引っ張り込んだあのオジサンの言葉を信じるなら、何かに協力させる為だろうけど…それにしては一切それらしい接触は無い。

 最も不可解なのは、500年以上前に私が存在したと言う記録があること。

「何がどうなって、私はどうしたらいいのか、全然分からなくて……」

 私の中で考えられる事を総動員した所で、答えなんて出てこなくて……。考えれば考えるほど思考はマイナスのスパイラル、考えなかったら考えなかったでふとした拍子に覗く不安感が私を離してくれない。

 

「あー…この答えで合ってんのかわからねぇが、どうもしなくて良いんじゃねぇか?もしくは何しても良し、とかなぁ?」

「…………」

「割と何も考えずにその日暮らししてんのが冒険者だからなぁ…まずは、お前もそれで良いんじゃねぇか?この先、記憶が戻ったり、何か目標が出来たりした時にゃ、それに従えば良いんだ」

 他の職業と掛け持ちできたり、パーティーのシステムが緩いのはそういう理由もあってだと、ゼンは言う。

「行き当たりばったり上等、この稼業は自由が何よりの醍醐味ってなもんだ」

「……そう、かな?」

 なんだろ…全然答えになって無いのに、気付けばさっき燃え上がった不安感が一気に下火になった気がする。

 …ああ、そっか、なんて簡単な事、不安も戸惑いも吐き出してしまえば良かったんだ。積もった塵に火種を投げ込んだから燃え上がった、塵が無ければ火種が投げ込まれてもくすぶるだけでお終い。

 全部は無理としても、少々の愚痴くらいなら聞いてくれる相手が居るじゃない、ねぇ?

 

「つー事で気にすんな、色々と。何すりゃいいかわかんねえなら、取り敢えず付いてくればいいだろ?」

「……え」

「んぁ?」

 …あれ、今の「付いて来い」って普通は告白のセリフじゃない?いや待って私、反応しちゃ駄目!今は男、少なくとも体は男…!

「な…何でもない……」

「?」

 自分の考えが恥ずかしすぎて思わずゼンのシャツ握り締めて顔押し付けたけど…よく考えればこれも大概恥ずかしい事してない?

 うぅ…だからと言って、今顔を離すのはもっと恥ずかしいワケで……。「……ゼンって、中身は悔しいほどイケメンだよねー」

「イケ……何だそりゃ?」

「イケメン。…わかんないならいいよ」

「は?ぅおっ!?締まっ…オマっ、あだだだっ!」

 なんか悔しいから、ギュッとしてあげようじゃないの…そのブレなさとイケメンっぷり私にも分けて?

 

 

 不思議な事に、何故か何処にも“帰りたい”とは思わない現状。

 怒って笑って悩んで、たまには愚痴って…そうやって進んで行けば、何時かは……。

 

 

 


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