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◆荒療治、ただし時には予想外も

 

 

残酷、グロテスク表現がありますのでご注意を。

 

色々と主人公の中の人が酷い目に遭っていますが、仕様です。

 

 


 

「…帰ろっか」

 ギルド証があれば街の門が閉まっている時間帯にも出入り可能と聞いているから、別にこんな所で夜を明かす必要なんて無いし。

 今は木々も静かなもので、何となく月を眺めていただけ。

 

『タイヘン!』

『タイヘン、タイヘン!』

「え?」

 さあ帰ろうかと言うときに、再度出鼻を挫く木々の声…しかも大変って?

「何が大変?」

 問いかければザワザワと揺れる木々。

『チイサイヒト、タイヘン』

『オオカミイル』

『タイヘン、タイヘン!』

『ネラッテル、チイサイヒト』

 ええと…つまり、小さい誰かが狼に襲われてると?

 ダメじゃない、それ!

 

「どっち!?」

『アッチー』

 再び木々の声をを頼りに、全速力でダッシュ。

 殲滅したのに、一方で被害者が出てるなんて冗談じゃない…!

 

 思わずひゃっほーとか言いたくなるほど全速力で駆けても余裕とか、すごすぎる。木の根とか枝とか避けながらジグザグに走ってるのに、トップスピード維持しつつ息切れ一つしないの…相変わらず恐ろしいスペックよね、この体。

 視界は勿論、メートル単位でありそうな段差も一足飛びで軽々と…これが、エルフクオリティか…!

 あ、脳内で馬鹿な事は考えてるけど、至ってマトモに駆けてますのでご心配無く。

 

「居たっ…!」

 木々の間にちらっと見えた明るい毛並み…どうも群れからはぐれた灰ウルフっぽい。

 …狩り残しですね、わかります。

「殲滅できてないじゃん!」

 ゲームだとクリアのフラグが立たない上に、残り探し回らなきゃいけない超面倒なパターンだけど…今回は木々様々ですね!

 狼の向こう側にチラッと人影らしきものも…ヤツを狩らないでか、いいや、狩るべし!

 

「させるか!」

 狼のサイドに飛び出して、勢いを乗せて全力で蹴り上げ…え?あれ?今……。

 

 ボッ…ドパァァァン! 

「ぅえ!?」

 は…破裂!?

 スローモーションのように、蹴り上げた所を中心に狼の体が膨らんで、破裂した。

 血諸共に飛び散り、ぼたぼたと降り注ぐ肉片、主にモツ系…グロい。蹴り上げたせいで至近距離でモロにひっ被った…キモい。

「きゃあ……っ!」

 …ぁ、しかも子供二人だ…うわぁ、最悪。教育に悪いとかいうレベルじゃなくて、トラウマものだわこの光景。

 うっかり全力全開でオーバーキルとかするとこうなるのね…肝に命じておかないと。あ、素手攻撃に乗るスキル群が軒並み勝手にONになってるし…危ないなぁ、即死系のスキルもあるのにヤバいってば。

 あぁ、もう、面倒だからとりあえず全部OFFで。

 

「あ、えっと…大丈夫?」

 手を伸ばそうとしたら引かれた…そりゃそうか。某R18指定のゾンビゲーも真っ青のスプラッタっぷり、指先まで滴るくらいに真っ赤っかだもんねぇ……う゛っ。

「っーー…!!」

 ちょ、だめっ…!目の前に子供、子供!

 嫌ーー!耐えて、自分!今だけは絶対吐きたくないーー!!

 

 

 えー…現在地、現場近くの小川。空っぽの胃に清水が染み渡る…水ウマー。

 ようやく喉のイガイガと、口の中から血の味消えたわ。とっさにとは言え、血塗れの手で口元抑えちゃダメだね…超逆効果。

「お兄さん、大丈夫…?」

「ああ、うん……」

 お陰で子供達打ち解けてくれたけど…一生の不覚!見ず知らずの子供の前でリバースなんて…!

 吐くもの胃液しか無いとは言え、そんなもの免罪符にはならない…っ!

「ごめん、みっともないとこ見せたね」

「大丈夫だよ、酔った父さんもっと酷いから」

 酔っ払いオヤジなんかと一緒にしないで欲しいんだけど…子供には一緒か。ふ、ふふふ…泣きたい。

 

 あのあとひとしきり吐いて、取り急ぎ【ウォッシュ】をかけたら全身の返り血はどうにかなったけど…微妙にスッキリしない。…後で魔法エディタで洗濯専用魔法作ろう、必要だわ。

 外見を取り繕って、目を丸くする子供達を引っ張りその場を離れて今に至る…と。

「さて、落ち着いた事だし事情聴こうか?確か、今は一般人の立ち入り禁止じゃなかったっけ?」

 そう言ったら子供二人揃ってビクッと身を竦ませ…立ち入り禁止の件、知ってたね?

「あ、あのっ!お母さんが病気で、薬の材料の薬草を取りに……」

 うわぁ、典型的イベントの香り…これ、隠しクエか何か?え、違う?

 ま、発生させないけど?

「だったらせめて大人の人と来るべきだね。出来るならギルドで護衛頼むとかね?」

「そんなお金あるなら、お母さんの薬買ってるよ」

 それはまあ、だからって私も譲らないけど。

 話によると、薬は高くて買えないけど、材料を持ち込めば格安で作って貰えるから自分達で材料を揃えようとして今に至るとの事…でも、夜は無いんじゃない?

「えっと…夜になると薬草の花が咲くんです、それならわたしたちにもわかるから……」

 …見事なまでのテンプレですね、ありがとうございます。

 でも、夜行性相手に夜はナイ、駄目です、絶対。

 

「まあ…どちらにしろ今晩は帰ってもらうよ?さっきみたいな事が起こっても、二度目は無いからね?」

 そう言ったら流石に怖くなったみたいで、青ざめた顔で二人共頷いてくれた。うん、良い子。

 本当なら私が薬草探しに付き合ってあげれば良いんだけど…今は余裕無いのよ、主に精神的に。

「ついでだし街までは送って行ってあげる。

多分、二三日したら立ち入り禁止も解けると思うよ」

 子供達を促して、ようやく帰路につけると軽く溜め息。

 マップフル活用して最短距離で帰りますかねー…。

 

 

「こんばんはー、お疲れ様ですー」

 門の横にある詰所に声を掛けてギルド証を見せれば、夜番の門番さんが出てきて通用口を開けてくれたものの…当然、後ろの子供二人は見咎められるわけで……。

「どうしたんだ、そのチビ共は?」

「あっ、あのっ……」

「ああ、森で迷って帰れなくなってるのを偶然見つけてね。一緒に連れて戻って来たんだ」

 はいはいお子様達、私ならいくらでも言い訳くらい出来るから、ちょっと黙っててねー。

「森でって…今、一般人は立ち入り禁止だろうが。親はどうしたんだ?」

「何か、当の親が病気で上手く伝わってなかったらしくて」

 その言い訳に納得したのか、門番さんが顰めっ面で子供達の頭をワシワシと撫でた。

「ボウズ達運が良いな、人の良い兄ちゃんに見つけてもらって。だが、親が病気なら尚更二人だけで街の外に出るなんて駄目だぞ?親は心配で逆に病気悪化させちまうぜ?」

 手慣れてますね、門番さん!そして、しょんぼりした子供二人よ…ちゃんと反省はしたかな?

 

「じゃあ、この子達は街の中まで送って行くから」

「おー、そうしてやってくれ」

 すんなり言い訳が通ったので、二人を連れてさっさと街の中へ。長居するとボロが出ないとも限らないし。

「…ま、今度からはもっと考えて行動しよう?助けたい人悲しませたら意味ないよ?」

 こくりと頷く子供達は十分に反省できたようなので…鞭の後は飴タイムと行きましょうね。

 

「ところで、薬に必要な材料って薬草だけ?」

「ううん、えっと…カルの実に……」

 …ん?何か、その材料で出来る調合のレシピ、覚えがあるんだけど…?

「…ひょっとして、探してた薬草って『ベル草』?」

「はい、そうです!」

 知ってるんですか!?って女の子が驚いた顔してるけど、これって……。

「万能薬?」

「うん、それ!」

 ゲーム内と必要な材料まんまじゃないの…。

 いや、確かに薬だけど…君達のお母さんが掛かってるのは状態異常?

 

 まあ、必要なのが万能薬なら私的には実に簡単な話で…。

「じゃあ、これあげる」

 女の子の手に、試験管っぽいものに入った濃い黄色の薬品を押し付ける。

「これ…?」

「万能薬。これでお母さん治るんでしょう?」

「「えっ?」」

 飴と鞭の飴の方ですよー。きちんと聞き分ける良い子にはご褒美あげないとね。

「でもっ、これ高いお薬……!」

「大丈夫、材料さえあれば自分でも作れるものだし」

 そもそも万能薬自体がゲーム内ではモンスターのドロップアイテムだったから、最近使わなくて所持数限界まで持ってるのよねー…まさか、持てなくて棄ててたなんて言えない。

「お兄さん…いいの?」

「あそこでちゃんと言うことを聞いて、引き返す事を選んだ良い子にご褒美。早くお母さん元気になるといいね?」

「…うん!」

「はい!」

 薬を大事そうに手提げにしまって駆け出す二人に手を振って、私はギルドへ。

 ほんのり心が緩む感じ…やっぱり、こういうのがいいよね。

 

 

 その理由がたとえ自己中心的なものでも、できるならハッピーエンドが良いじゃない?

 

 

 


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