◆荒療治、ただしゴミは持ち帰らない方向で
残酷描写&スプラッタ警報!
ダメな方はお引き返し下さいませ。
テンプレ的に主人公がぶち当たる壁その1…と、言った所でしょうか。
「『森の加護』化けてるし……」
街を出れば周りはすぐに森だから意外と近場よねー…と思っていたら、森に足を踏み入れた瞬間に予想外の事態が発生して思わず絶句。
『コンバンハー』
『コンバンハ』
『ヨクキタ』
『ヨウコソ』
『ヨウコソ、モリノヒト』
「ああ、うん…こんばんは?」
思わず返事返しちゃったけど、木の声らしきものが聞こえるんですが…ナニコレ。
確か『森の加護』ってフィールドが森の場合に先制攻撃防いだり、敵の接近が察知できたりする補助系の効果だったはずなんだけど…断じて、植物と話が出来るなんてファンシーなスキルじゃなかったのよ?
「うう…思いっきり出鼻挫かれた……」
おまけに、真っ暗な森の中なのに視界が暗視スコープ使ってるがごとくクリアって…スキルの化け具合が半端ないです。
ま、まあ、化けてるものは仕方ない。バックアタックの警戒も敵の接近も木々が教えてくれるだろうし…問題無い、多分。
…この分なら他にも化けてるスキルあるんだろうなぁ…そのうちどこかで色々試してみないと。
「灰色の狼を探しているんだけど、知ってる?」
意思疎通可能ならひょっとして…と聞いてみたら、暫くザワザワと気配が揺れてあっさり答えが返って来た。
『イルヨー』
『シッテルヨ』
『アッチ、イル』
『アッチ』
『コッチ』
『コッチ、コッチイル』
べ…便利ね、これはこれで……。
「そっちなの?」
近づいた声は再び奥に向かって遠ざかり、奥の方から『コッチ』と囁きが重なって聞こえて来た。
案内してくれているっぽい?
「闇雲に探し回るよりは良いけどねー」
木々の声に導かれるまま森の奥に足を進めていて、ふと手に当たった自分の腰に下げてある剣に気が付いて足を止めた。
「そう言えば…うっかり木を傷つけると拙い、かも?」
現在の装備は【エアリアルエッジ】、空気の刃を纏って範囲三倍という雑魚殲滅には便利な片手剣だけど…此処で使うと間違い無く回りの木も巻き添えにするよね?
たたが木とは言え、意思疎通可能な相手を傷つけたら…何かマズい気がしない?
「…威力落ちるけど、【ビーストハンター】に変えておこうかな」
アイテムウィンドウで装備武器を【エアリアルエッジ】から【ビーストハンター】に変更すると、腰に下がっている剣が指定したものにパッと変わった。んー…、ちょっと重量増したけど、まあ大丈夫。
攻撃力自体はやや劣るけど、灰ウルフ相手なら対獣特攻の効果で補えるでしょ。
そして、再び歩き出そうとして、今まで聞こえていた木々の声がピタリと止んでいる事に気が付いた。
代わりに聞こえる低い唸り声と獣の息遣い…多数の気配。
「来たねー……」
闇に紛れてるつもりなんでしょうが、こっちからは姿丸見え。
全く無意味なのにね?
「ねぇ、私…今度は目を逸らしちゃ駄目よ?」
まるでそれが合図のように、一頭が先陣を切った。
「ラスト…ッ!」
飛びかかって来た一頭に姿勢を低くし、タイミングを合わせて確実に首を斬り飛ばす。
半端に斬りつけるとがむしゃらに飛びかかって来て逆にウザイし、脚だと意外と平気そうな場合も…何度かそんな事があった結果、首か胴を両断するのが一番確実だってわかった。でも、正直首が一番楽だったから基本は首。
体が思った通りに動きすぎて笑いそうなる、中身が私なのにここまでハイスペックなんて、何の冗談?
「……はぁ…これで、お、終い……?」
周りを見回してももう飛びかかって来るものは無くて、私を中心に狼のが死屍累々。図らずも群れ殲滅してしまったみたいで…仕方ないよね?
血溜まりとか色々グロいなとは思うけど、見た目だけなら何故だか平気で…意外と現代人ってこういう耐性高いのかもね?
まぁ、ただ、返り血は気持ち悪いし、何より臭いが酷い……あ゛。
「うっぷ……!」
うっかり深呼吸なんてしたものだから、何とも言えない生臭さと、空気に味が付いてるんじゃないかって鉄臭さが口からモロに私の中へ。
即座に胃が拒否反応を起こして、当然ながら…吐いた。
ああ、本当に、早めの夕飯とか食べて来なくて良かった…吐く量最小限で済んだわ。
胃液で喉がチクチクする。
「はー……月、綺麗ね」
木に寄りかかって、現実逃避気味に見上げた空には満月に近い大きくて綺麗な月。
…そして周りには積み重なる狼の死体と立ち上る血臭…やっぱダメ、現実逃避しきれない。そこは、新鮮で美味しい森の空気じゃないと…!
ついでに、さっきまで緊張して押し黙っていた木々が『ヤッタネ!』『スゴーイ!』とかはしゃぐものだから…ささくれ立った精神が癒されるどころかどん底。
「…とりあえず、後始末、しときましょ……」
ゆっくりする方が癒されないとか、普通は逆だよね…。
血糊を払って剣を収めようとしたら、握りっぱなしだった指が少し思い通りに動かなくて、放した途端に座り込みそうになって…全身がガチガチだった事に初めて気が付いた。
そんなに緊張してたのね、私。
…どうも、単に必死さが何もかもを上回ってただけのようで…その事実に少し安心。
それと、この事態を仕方ないと許容できる自分が少し、怖くなった。
それはさておき、現状を放置して帰るってのは許容出来ない事柄なもので…どうしよう?
「……やっぱり、火葬?」
単に埋めるだけだとどうにも衛生的によろしくない問題が発生しそうだから、一番はソレだと思うんだけど、森の中で燃やすのは流石に…。
それに、始末しないといけないのは死体だけじゃなくて、周りの血糊と出来れば臭いも。私自身も返り血浴びまくった状態で街に帰るのは遠慮したいし……。
「あ、そう言えば、素材と討伐証明…」
そうよ、処理方法考える前にそれも忘れちゃ駄目だわ。
ああ…問題山積み。
…とりあえず、討伐証明の尻尾の確保。適当なナイフを出して、切った片っ端からアイテムボックスに放り込んで終了。
「後は、素材って言うと……」
ゲーム内で狼の定番素材と言えば牙、毛皮、肉…多分、その辺りで良いんだよね?ただし、今回は肉は却下で。
牙は尻尾と同じく、切って放り込んで…問題は、皮。
ここまでやっておいて今更剥がないって選択肢は無いけど…今まで鶏肉の皮くらいしか剥いだこと無いんだけど?
「えーっと…アラスカの方でアザラシの皮剥いでるのは、テレビで見た気が……」
…不確かすぎる記憶を頼りに、最初の数匹分は駄目にしながらも何とか皮を剥ぐ事に成功…人間、やれば出来るのねー…。
血は飛び散るし臭いはアレだしで、途中に何度か吐いたけど。
その後の始末は、やっぱり火葬を選択。それ以上の良い方法が思い付かないんだからしょうがない。
ただし、山火事がどうしても怖かったから、スキルの【トラップ作成:落とし穴】と魔法を併用して落とし穴の中で燃やすと言う方法で。その後トラップ破壊スキルで埋めれば、落とし穴の処理は完了。
血糊は思いつきで使った【レインフィールド】の魔法が半分成功で半分失敗。一定範囲に雨を降らせて『ウェット』の状態にするものだから、雨のお陰で周囲の血糊は洗い流せたんだけど…。
「げ…滲んだ……」
…まあ、自分まで水浸しになれば当然こうなる訳で。見た目は一層悲惨な事に。
このまま乾かすなんてとんでもないので、考えた末に『ペイント』状態を解除する【ウォッシュ】を使ってみたらあっさり血まみれ状態から元に戻った。最初からソレ使えば良かったんじゃ?って突っ込みは無しで。
だって…『ペイント』なんて特殊な状態異常そうそうなるものじゃ無いから、【ウォッシュ】なんて殆ど使わないんだからね!
その後は【ドライ】で自分のウェット状態を打ち消せば、あら不思議、シャツは真っ白で肌触りも滑らか、装備一式お店のクリーニング仕様に……マジですか?…多分、コレも効果化けてる。
とりあえず目的は達成出来たから今はコレで良し。
振り仰げば、木々の隙間から見える月は中天を過ぎて傾きかけ。どうやら深夜になってしまったようで…まあ、夜が明けて無いなら成果は上々。
深呼吸したら、今度はちゃんと森の香りの空気でしたってね。




