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◇荒療治、ただし準備は万端に

 

 

 実際、タイトルほど準備はしてないやね。

 むしろ、職質確定レベルで不審者っぽい行動をする主人公。

 

 


 

 宿から再度ギルドに向かい、ギルドには入らず記憶を頼りにまずはある場所へ。

「……あった」

 不審な行動だって自覚はあるから、流石にカリナ達との買い物中に寄るのは自重したのよねー…。

「ログインポイントの石板…だよね?」

 ゲーム中ではログインログアウトの目印兼転送陣として各地に設置されてたゲーム的機能の塊のような石板だけど、確認程度で探してみたら本当にあるとか……。

 石板の周りは石畳で固められちょっとした広場になっていて、隅の方には憩いの場所らしくベンチまで置いてあって…どうみても石板が使われてるようには見えないんだけど?

 

「使われて無さそうな割に…綺麗なままねー」

 周りの石畳はそれなりにすり減ってる感じなのに、石板自体は刻まれているレリーフも縁もくっきりで全くすり減ってる様子無し。明らかに状態維持の魔法掛かってて何かあるよ的な様子なのに、なんか扱いが…ねぇ?

 ゲーム内で見ていたのと微妙に様子も違うし…。何て言うか…そもそも起動していない、みたいな?

 

「イベント戦の時みたいな移動制限がかけてある時のとも違うよねぇ?」

 移動制限の掛かっている時も光ってたものね、石板自体は。今は光る気配すら無いし。

 流石にゲーム内のような光が舞い上がるエフェクトは期待する方が間違ってるとは思うけど、使える状態ならこうやって上に乗って撫で回していれば何らかの反応はあっても良さそうなものだけど…。

 本当に何も起こらなくて地味にがっかりして、ふと気が付いた。

 …広場のど真ん中にしゃがみ込んで石板ナデナデしている私、不審者じゃない?

 夕暮れ時の人の少ない時間帯で良かった…。

 

「すみませんが、あの石板は…」

「石板?…ああ、広場の真ん中のレリーフの事かい?」

 運良く通りかかったおじいさんに聞いてみても、わかったのはこの街が村だった頃からあるという事だけ。

 おじいさん曰わく、朽ちない不思議なレリーフって…正体不明になるぐらい長いこと使われて無いって事よね?

「ありがとうございます」

 お礼を言っておじいさんと別れ、そろそろ私も行く事にする。

 転送陣の事は今はとりあえず良し。使えたら使えたで便利だけど、さしあたり使えなくても一向に困らないし?

 

 次に、外壁に沿って街を半周。

 何をしてるのかって?街のマッピングですよー。

 白紙状態になっていた地図だけど、自分を中心に一定範囲のマップが書き込まれていくのはゲーム中と同じみたいだから、こうやって地味な作業をしてるって訳。今は時間が無いから、とりあえず街の半分ほどをマッピング中。

 昼にカリナ達と買い物に回ったおかげで街中はかなりマップが埋まったけど、外壁に近いほど治安が悪くなるから止めとけって言われて外壁に近い部分は殆どマップが出来てないのよね。

 マップが埋まって無いと困るって程では無いんだけれど、帰りの目印にはなるし。何より、ゲームで攻城戦を経験した身としては街のマップに欠けがあると落ち着かないのよ…。

 ゲーム内では指定された街がそのまま戦場になってたから、護るにしても攻めるにしてもマップに欠けがあるとそれだけで結構な痛手受ける羽目になったのよね。プレイヤーの年齢層が高めだったせいか、やたらと頭脳戦が繰り広げられて侵入経路がとか、トラップと通路の幅がとかかなり本格的に街の造りを利用してたしね…。

 そんな訳で、新しい街に着いたらまずマッピングする癖がつくんですよ、上級者になればなる程ね。

 

「こんばんはー、これお願い」

 街半分のマッピングが終わって、今度こそギルドへ。

 掲示板から目的の一枚を取って、受付のお嬢さんに差し出す。

 掲示板に張ってあるのが正規の依頼で、掲示板の以外は非正規の依頼だから注意しろ…とはゼンの言葉。

「あら、昼間の…。こんばんは、この依頼をお受けになるのですか?」

「うん、そのつもりなんだけど、パーティー推奨ってあるよね?一人でも大丈夫?」

「お一人で、ですか?そうですね…少々お待ちを」

 受付嬢がカウンター下から取り出した書類を確認してくれる。

 まあ…普通、パーティー登録したその日にソロで依頼受けに来るとは思わないよねぇ、しかもパーティー推奨の依頼とか。

 

「確認した限りパーティー限定とはありませんので、可能です。…そもそも、貴方でしたら此方としてもお止めする理由はありませんが」

「そう、じゃあお願い」

「では、手続きを致しますのでオーブにカードを」

 オーブにギルド証を翳せば、それで依頼の受注も完了…なんだかここだけはゲームより簡単じゃない?

「手続き完了です。一応確認致しますと、依頼の内容は灰ウルフの討伐…今回の群れの規模でしたら10頭ほど狩って頂ければ宜しいかと。討伐証明には尾をお持ち下さい」

「あれ?狩り尽くさなくてもいいの?」

 ゲーム内で群れを狩れって言われたら、基本的に狩り尽くして当たり前だったんだけど…。

「半数以下になると自然と群れは消滅しますので、半数以下に減らして頂ければ依頼内容は達成となります。最も、今回の灰ウルフは北の地域から移動して来た群れですので、狩り尽くして頂いても問題はありませんが」

 なるほどね、確かに数十頭狩れって言うのは現実的じゃ無いよね。

 ちなみに、普段この辺りに生息しているのは茶ウルフでそれの討伐依頼だと狩り過ぎに注意なんて場合もあるとか…森の生態系維持ですね、わかります。

「了解。じゃ、行ってくる」

「え…今からですか?灰ウルフは夜行性ですのでおすすめしませんが…」

「そう?むしろ向こうから出てきてくれるなら楽でいいよね?」

「そっ…そうですか、お気をつけて……」

「じゃあねー」

 受付嬢に手を振って、ギルドを出た。そろそろいい具合に日没ですよー。

 

 しかし、ゲーム内での通称がそのまま使われてるって、笑えるわー。

 灰ウルフは通称なんだよね、正確にはグレイッシュ・ウルフっていう大型犬サイズの狼。群れの討伐クエはだいたい中級の序盤でやる事になるくらいだから…所詮雑魚。茶ウルフに至ってはフォレスト・ハウンドって言って、狼と言うよりもはやワンコだから言うまでも無いし。

 現在はどうみてもこの辺りは初級フィールド相当っぽいなぁ…500年の環境の変化かな?うーん……。

 

 さて、どうでも良いことに意識を逸らすのも此処まで。

 覚悟を決めて、行きましょうか…ねぇ、私?

 

 


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