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◇交渉始めました!

 

交渉…するまでも無かったり?

「〇〇始めました!」編もそろそろ終盤ですよー。

 

 

 


 

 裏口からぞろぞろと5人入って来たにも関わらず、特に誰にも気される事無くカウンターへ。

 …裏口って言うより、単に裏側にある出入り口って言った方が良いのかも?

「ベヘモットの代金受け取りに来たんだが」

「あ、はい。少々お待ち下さい」

 ゼンが受付け嬢に声をかけると、受付け嬢は一度奥に下がった。

 暫く待つ事になるようなので、暇つぶしがてらにギルドの中を観察してみますかねー。

 基本は木造で、後は木製のカウンターに机と椅子…ってか、宿屋とほぼ同じだから説明の必要ないし、以下略で。違うのは、掲示板どころか壁にまでびっしり貼られた依頼書とおぼしき紙切れ達。

「お待たせしました」 戻って来た受付け嬢の手には、何だかサイズの割に重そうな布袋が。

「確認しますので、ギルド証を翳して下さい」

「ほらよ」

 カウンターに置いてあるオパールのようなオーブにゼンが金属のカードを翳すと、カードの上に光で文字が浮かび上がった。おぉお、ここらへんは流石ファンタジーな世界。

 因みにギルド証、ゲーム中には無かったんだよね。ギルドで請け負うクエストの管理は、ゲームのシステムが全部やってたから。

「はい、確認しました、『草の環』パーティーリーダーのゼルディン様ですね。こちらが代金となりますので、受け渡しの書類にサインをお願いします」

 ん?ゼルディン?そっちがゼンの本名なの?…ま、いっか。

「ほい、これで良いか?」

「ありがとうございます、またどうぞ」

 袋を受け取ったゼンに付いて机の方に移動…は、良いんだけど、何か今になって微妙に視線がチクチクと……。

 む…無視するんだ、頑張れ自分…っ!

 

「分配はお前に任せる、リーン」

 そう言って、そのままずいっと私の前に差し出された袋。

「えぇえ…私っ!?」

「リーンさんが狩られたのですし…」

「ですね」

「ねぇ?」

 他の三人にも異存は無いみたいで、当たり前だと頷きあってるとか…えぇえー…。

 さらにぴらっと渡された紙には『領収書 銀貨150枚 銅貨75枚』の文字…。何故だか文字が読めるのはこの際置いておいて、これを私に分配しろとおっしゃる?

「えー…じゃあ、キリがいい感じに当分割りで一人銀貨30枚でいい?」

 そう言ったら4人揃って溜め息…もうっ、分けろって言ったのそっちでしょうに。

「まあ…何となく予想はついたがよ。悪い事は言わねぇ、ちっとばかしあそこの掲示板の報酬額見てこい、な?」

 そう言って送り出されて掲示板に貼ってある依頼と報酬額にざっと目を通せば、報酬の平均は銀貨10枚くらい。

 一仕事で銀貨10枚…大体10万くらいと考えて、銀貨1枚が1万円弱くらいの価値?その計算で銀貨30枚となると、30万弱ってところ?あらま、中堅サラリーマンの平均的月収ですよ…知った事じゃないけどね。

 

「見てきたけど、別に良いよ?」

「良くねえよ!」

「だったら、ホラ、謝礼とかそんなのだと思って?」

「何処のお貴族様よ!」

「あれ?謝礼とかって無い?だったら心付けとか、単にお礼でも良いよ?」

 どちらにしろ、基準は渡す側の感謝の度合い次第って事は変わらないけどねー。

「そんだけ貰う理由がねぇんだよ。こっちは4人纏めて助けられてんだ、宿代やら何やら払っても十分にお釣りが来るぜ?ベヘモットの素材の代金は完全に余剰だからな、分配を任せるとは言ったが本来は俺らに分配しなくても良いんだ」

「え?いや、そんな事は……」

「そんなものなのよ」

「えー……」

 そう言われても、そっちが思ってるより私ものすごく助けて貰ってるのよ?右も左もわからない状態から一応の常識教えて貰ったりとか…すごく沢山、ね。

「まあ、そんな所だからな、それ踏まえて決めてくれ」

 全く、自主的に大金手にする機会ふいにしても教えてくれるなんて…本当にゼン達良い人過ぎて……。

 

「よし、じゃあ下心コミコミで一人銀貨32枚!」

「増えてどうする!?」

 突っ込みありがとう!あ、でも、理由はちゃんとあるから。

「だから、下心コミコミだって。上乗せ分でお願い聞いて欲しいなって」

 本当に悪いと思うんだけど、その良心に期待しても…良いよね?

「…言ってみろ。だがな、せいぜい出来ても道案内ぐらいだぜ?」

「それでも十分うれしいけど、道案内じゃないよ。…あのね、パーティーに入れて貰うっていうのは、駄目かな?」

 …今まではほぼソロ専だった私だけど、正直無い無い尽くしの現状でソロ専なんて言ってる場合じゃ無い。そもそもほぼソロ専でやってた理由って、テストプレイヤー的な意味以上のものでは無いし…。

 って、何で4人ともそんなに盛大に溜め息を?

 

「あー…どんな無茶言われるかと緊張して損したぞ、全く」

 あからさまにほっとされたんだけど…あれ?

「…けっこう無茶言ったはずだけど?」

 レベル差激しいなんてものじゃ無いし、そもそも私の存在自体が地雷と言うか爆弾と言うか…。

「何処が無茶だ。パーティー登録なんざ、双方が合意したらカード翳して終いだぜ?抜ける時も同じだしな」

「えっ…でも、多分迷惑かけるよ?」

 それはもう、常識が無いだけでも多大な迷惑の筈なのに…どうしてカリナもロズもフィーリーまで、妙に生ぬるい微笑みを向けて来るの?

「迷惑なんて…ゼンにとっては今更よ」

「私は冒険者になる際に既に色々ありましたし…」

「えっと、恥ずかしながら私もパーティーに入りたての頃は常識が無くて色々と…」

「ああ…不本意だが、色々あったなぁ……」

 ちょっと遠い目をするゼンだけど、それで嫌になったとかっていうのは無いみたいで鼻で笑ってる。何か…予想外にこのパーティー訳ありばかり?

「そう言う事だから、迷惑は気にしなくていい。むしろそっちの事情は良いのか?」

 あぅ、そこを突かれると痛いんだけど…訳ありっぽく振る舞ってただけで、事情も何も無いなんて今更言えない…。

「あー…事情ね、あって無いようなものだから大丈夫」

「ならいいんだが…。じゃあ、ま、改めて宜しくな、リーン」

「期待してるわよ!」

「改めて宜しくですねっ!」

「宜しくお願いします」

 順に差し出される手と軽く握手を交わして、その確かさにすごく安心した。

「これから宜しく!」

 私、ちゃんと笑って言えたかな?だって、何か、すごく久しぶりに嬉しくて涙出そうなんだもの。

 

 大丈夫、これならきっと…。

 

 

 


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