Hide and seek
今日も貴方を探してる。
貴方の姿を見つける為、必死で校内を走り回る。
「何処にいるのよ……?」
私はそう呟きながら、今度は南校舎、屋上に向かう階段を駆け上がる。
見つけた!!
屋上へ向かう入り口に座り込み、呑気に文庫本を読む貴方。
早く声を掛けなきゃ、また何処かに消え去ってしまう………。
「流川先生!!」
名を呼ばれ、文庫本から目を離し、私を見つめ、にっこり微笑む先生。
「おう、河合。今日は見つけるの早かったなぁ。頼んだプリント分類とホチキス止め、もう終わらせたのか?」
捜し回っていた先生は、ゆっくり立ち上がり、私の苦労も知らず飄々とした表情で、幼い少女を誉めるように私の頭を撫でる。
……腹立つなぁ……。
私は先生の手を振り払い、キッと睨み付ける。
「ふざけないで下さい!!何故、副会長の私にばかり雑用をさせるんですか、またバイトに遅刻します!!バイト代、弁償して欲しい位です!!」
本当に腹が立つ。私が家庭の事情で、進学校なのに、特別に許可を得てバイトしてるの知っている癖に!!
「まぁまぁ、雑用だって立派な委員会の仕事だろう?将来、仕事が手早いと上司に誉められるぞ?」
「私が目指しているのは弁護士です!!それに私は無駄な事は嫌いです。では、プリント分類、及びホチキス止めは確かに終了させ、先生に報告しましたから。それでは失礼します!!」
私は悔しさを胸に、急いでバイト先に向かう為、昇降口に向かう。
………流川先生の意地悪っ………!!
………河合の足音が遠ざかる。
「あ〜あ、次はもっと見つかりにくい所に隠れないとな。」
俺は文庫本に栞を挟みつつ苦笑する。
…馬鹿だな、河合。少しでもバイトに遅れれば、その分、体を休ませられるだろう?
お前は…もっと休養し、自分を労るべきだ。
いつも真面目に、精力的に生徒会の仕事をし、司法大学進学の為に学年上位を目指して勉学に勤しみ、おまけに…家庭の為、無理なバイト迄こなすお前。
二ヵ月前、河合は………とうとう過労で生徒会室で倒れ、俺が病院まで付き添った。
いつも笑顔を絶やさず元気で、そのくせ勝ち気なお前が救急車の中で瞳に涙を浮かべ………
「先生、申し訳ありません。ご迷惑をお掛けして………。」
と言ったあの瞬間。
俺は…教え子であるお前に心奪われた。
この
「かくれんぼ」
だって…お前に少しでも休んで欲しくて、何より…………
………探してる間だけでも、お前に俺の事だけ考えさせる為に編み出した手段なんだぞ?
次はもっと見つからない所に隠れるよ。
だから、捜し出してみせな、俺を。
そして………いつか、俺の本音も捜し出してくれ。
『お前を愛してる』
と言う………本音を。
〜了〜
私のHPで発表した作品です。元ネタは私と会社のチーフ(♀)の社内探索。チーフ、こんな思いさせないで。でも、ネタを有難う!(笑)もし宜しければ感想など頂ければ幸いです。