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夏芭の上京の状況  作者: 西座屋


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(5)『夏芭の部屋にて』

○アパート・夏芭の部屋・居間(夜・19時頃)

  夏芭、グラスでチューハイ(アルコール3%)をゴクゴク飲む。

  その斜め隣に田岐先生が座っている。

田岐先生「(借りて来た猫のようで)…」

  田岐先生、部屋を見回す。

  和柄の雑貨やアイテムが多くて…、

田岐先生「……(と麦茶を飲む)」

  夏芭、麻美子が用意した料理(夕食)を食べている。

  部屋の外から祐香、磐田、友人たちの楽しそうな喋り声が聞こえて来る。

夏芭・田岐先生「…!」

  部屋に入ったらしく隣が騒がしい。

  夏芭、またかーと思いながら飲む。慣れている様子。

  田岐先生、初めてで少しびっくり。ここは壁が薄くて隣からの声や物音がよく

  聞こえて来るんだと知る。

田岐先生「…いつもこんな感じなんですか?」

夏芭「…来たばっかりなのでいつもかどうかは…。でも先週もこんな感じでした。

 二回ぐらいうるさかったです」

田岐先生「…注意とかは」

夏芭「…慣れました」

田岐先生「(えっ)」

夏芭「多分…他の人は迷惑だと思います。けど慣れてしまえば。ホームシックにな

 ると思ったんですけど、隣がこんなんじゃーあまりならないです。まだ、来て一

 週間ぐらいしか経ってないんでこれからかもしれないです」

田岐先生「…」

夏芭「逆に賑やか過ぎて孤独を感じれないです(とまた飲む)」

  夏芭、既に酔いは回っているようだ。

田岐先生「…」

  麻美子、缶ビールとグラスを持って夏芭の向かいに座る。

  台所でスープ料理を作っていた。

  麻美子が田岐先生を招き入れた。

  なぜ田岐先生はいるのか。じつは夏芭の部屋の隣人が目的で来た。

  隣人に少しは接触するヒントが見つかるかもしれないと麻美子の誘いに乗っ

  た。

麻美子「(夏芭に)ストーカーじゃなくて良かったね」

田岐先生「!」

夏芭「ええ?」

麻美子「(田岐先生に)忙しい時に良いタイミングで電話掛けてくるんですよ。最近

 付けられてる気がする。電柱男見た。幽霊かもしれない。って」

夏芭「(ムッ)…」

麻美子「一人暮らし初めてなんで。東京も慣れてなくて、不安なんだとは思いま

 す…。(ニヤニヤして)…けど駆け付けるの遅かったみたいで。(夏芭に)ストーカ

 ーで幽霊?」

夏芭「(ムッ)…」

麻美子「(ニヤリとして)元気で何より」

夏芭「バカにしてる」

麻美子「さすがにストーカーはねー…。ないっ。不倫はあっても(と田岐先生の

 事)」

  もちろん冗談。

田岐先生「(侵害で)…」

麻美子「結構尻に敷かれてるし親バカだよ。授業中に息子の写真よく見せて来る

 し。(田岐先生に)りょうた君でしたっけ?」

田岐先生「うん、そう四歳。(写真)見る?」

  とスマホを取り出そうとする。

麻美子「…あとにします(ときっぱり断る)」

田岐先生「(断られて)…」

  シュン…としてスマホを取り出すのをやめた田岐先生…。

夏芭「(田岐先生に)…ご迷惑をお掛けしました(と謝る)」

  生存する田岐先生を幽霊だと騒いだ事。

田岐先生「! い、いいよ。気にしないで」

夏芭「…」

  麻美子、缶ビールを開けてグラスに注ぐ。

麻美子「タッキーは飲まなくて良いんですか?」

田岐先生「(んっ)、ああ。家で飲むようにしてるから」

麻美子「…」

田岐先生「ここでは…ちょっと飲みづらいかな…」

麻美子「美人局にあったら困りますもんね」

  もちろん冗談。

田岐先生「(密かにドキッ)…」

麻美子「ツッコんで下さいよーっ。ボケてるんですからーっ。アハハハハハハハ

 ッ!」

  と一人だけ明るい。

夏芭・田岐先生「(麻美子に)…」

  麻美子、美味しそうにビールを飲む。

  あそうだった、そうだった! と台所にすっかり忘れていたスープ料理を取り分

  けに行く。

夏芭・田岐先生「…」

  また二人になる。喋る事がないため無言。

夏芭「…(と一口飲む)」

田岐先生「和柄、好きなんですか?」

夏芭「…」

田岐先生「(周囲を見ながら)よく集めたね。(置いてあるリュックを見て)こういう

 デザインのリュックってあるんだ(とバイヤー目線で物を見る)」

夏芭「(あっ…それは)…柄を足したんです」

田岐先生「えっ…自分で? (と縫う仕草をする)」

夏芭「はい」

田岐先生「(へぇーと関心して)見て良い?」

夏芭「(え)…はい…」

  夏芭、リュックを田岐先生に渡す。

田岐先生「…(と見出す)」

夏芭「…」

田岐先生「(見ながら)リメイクとかよくするの?」

  田岐先生、勝手にチャックを開けてリュックの裏生地を見る。

  と乱雑な縫い目が剥き出し。

夏芭「(見られてしまい)あっ! (それはっ)…」

田岐先生「(夏芭を見る)」

夏芭「初めてぐらいにやったので…手が回らなくて…(と言い訳)」

田岐先生「…(とリュックのデザインを見ながら)でも、(柄の)組み合わせは面白い

 (ね)」

夏芭「(え)…」

  麻美子、三人分のスープを運んで来る。

田岐先生「(リュックを返しながら)ありがとう」

麻美子「?」

  夏芭、リュックを元の位置に戻す。

麻美子「(田岐先生に)何してたんですか?」

田岐先生「リュックのデザインを見せて貰ってた」

麻美子「(ふ~ん)どうでした? 感想は?」

田岐先生「…」

夏芭「…」

田岐先生「(少し考えて)違和感」

夏芭「(えっ)!」

田岐先生「(夏芭に)良い違和感。面白いよ。惹き付けられる違和感はあった方が良

 い」

夏芭「…」

田岐先生「それから好きか嫌いか、欲しいか欲しくないかは人それぞれ。僕は好き

 な違和感。あのリュック(と褒めている)」

夏芭「…(と複雑で)」

田岐先生「前からこういうリメイクはやってたの?」

夏芭「…」

麻美子「お祖父ちゃん家が呉服屋なんですよ。遊びに行った時、端切れ貰ってお手

 玉とか巾着作ってたらしいですよ。作り方教えて貰って。(夏芭に)ねっ」

夏芭「…うん…(そう)だけど…。勝手にプライベートな事易々と言わないでくれ

 る?」

麻美子「(え)…何でイライラしてんの?」

夏芭「…(と一口飲む)」


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