(4)『夏芭と田岐先生』
○同・外観(次の日・午後・13時前)
○同・二階の通路~前(午後)
夏芭、出勤のため部屋から出る。
しっかり戸締まりをして階段を下りる。
○同・前の道(午後)
夏芭の前方に田岐先生が歩いて来る。
田岐先生、向かいから来る夏芭に気付いて早めに壁側に寄る。
目線は下向きになる。電柱の前で止まり夏芭が通り過ぎるのを待つ。
電柱の影に隠れている…。
田岐先生「(待つ)…」
夏芭、直視はしないものの田岐先生の行動に疑問。
夏芭「(歩きながら)…?」
夏芭、通り過ぎる時に田岐先生をジーと見てみる。
田岐先生「(それに気付いて)!」
田岐先生、思わず電柱と壁の間に体をシュッ! と納める。
夏芭「!」
夏芭、ますます怪しむ。
通り過ぎても気になってチラ…チラ…と余所見をしながら歩く。
と前方から来た磐田にぶつかる。
夏芭「! すみません!」
磐田「?」
夏芭「(あ)! あのっ」
磐田「?」
夏芭「…この辺に住んでます?」
磐田「…(え)!」
夏芭「あそこにいる人っていつもあんな感じなんですか?」
と電柱にいる田岐先生を示す。
磐田「?」
磐田、その方向を見るがコンタクトレンズを付けていないため見えづらい。
近眼で目を細めて見る。
夏芭「…(と磐田を見ている)」
磐田「(よく見えなくて)? 誰かいるの?」
夏芭「(え)…!」
夏芭、見ると田岐先生は電柱のあそこにちゃんといる。
夏芭「(示しながら)あの電柱の。挟まってる人」
磐田「挟まってる!? どこに?」
夏芭「(え)…」
磐田、挟まっている人を探す。
夏芭「…」
夏芭、でもあそこにっ! と田岐先生を確認…、しようと見ようとしたがやめて
おく。もしかしてあの人は私にしか見えてないのかと不穏がよぎる…。
まさかの幽霊系じゃないよね…?
夏芭、磐田に会釈して足早に去る。
磐田「(去る夏芭に)?」
○和雑貨houseノ倉・外観(午後)
○同・店内(午後)
夏芭、店に入る。
沙苗「(夏芭を客だと思って)いらっしゃいませー! (あ)…! おはよう」
夏芭「(血の気の引いた顔で)…」
沙苗「?」
夏芭「…この辺で、アパートで自殺した人とか事故に遭ったとかっていう、そうい
う話あります?」
沙苗「…(えぇ)?」
倉戸「ここら辺でそういう話はあまり聞かないけど、東京の不動産事情ではよく聞
くよね。部屋探しの時に嫌な雰囲気を感じたけど安かったから気にしないで借り
て住んでみたら…見ちゃった…っていう…。その部屋で自殺した人…。幽霊…」
と面白がって夏芭を脅す倉戸。
夏芭「(真に受けて)…」
沙苗、脅す倉戸と信じる夏芭が面白くて密かに笑う。
○道(夕方・18時過ぎ)
暗いがまだ人気のある道。
夏芭「…(と歩いている)」
夏芭、倉戸に脅されて余計怖くなった。
○工事現場・前の歩道(夕方)
道路整備の鍋山と吉澤が仕事中。
夏芭、そこを通り過ぎる。
○道(夕方)
夏芭、人気のない道に入る(ここから消音)。
緊張しながら早歩き。やっぱり視線を感じる…。
それを断つため急に全速力で走り出す。
× × ×
夏芭、走って来たが息切れしてちょっとタイム。
重かった手提げバックを地面に着ける。
息を整える際に自然と手提げバックから手が離れる。
息を整えながら後ろを気にする。
でも後ろには誰もいない…。
夏芭「……(と前を向く)」
(消音終了で)前方に人がいた! 田岐先生だ。
夏芭「!! (と心臓が飛び出る)」
驚く!!
夏芭はこの衝撃で地面に置いた手提げバックの存在を忘れる。
夏芭「(固まっていて)…」
田岐先生「? (と夏芭を見る)」
夏芭「(見られて)!!」
夏芭は逃げる。全速力で逃げる! 来た道を引き返す。
そして手提げバックは完全に置き去りになる…。
田岐先生「…?」
× × ×
夏芭、全速力で戻って来る。
○工事現場・前の歩道(夕方)
丁度敷地内から大型トラックが道路に出るタイミング。
そこに夏芭が走って来る。
道路整備の吉澤、夏芭に気付く。
ライトで一旦止まって下さいと伝える。
夏芭、いきなりガクッと膝を着く。
吉澤「! !」
夏芭「(息を切らせて)…」
吉澤「(心配して)大丈夫ですか?」
夏芭「…(と息を整える)」
吉澤「…(と夏芭の様子を窺う)」
夏芭「…見…ちゃった…」
吉澤「?」
夏芭、すがる思いでガバッと吉澤の片腕を掴む。
吉澤「! (ええっ)!」
吉澤、何が何だか分からない!
夏芭、田岐先生を幽霊だと思い込み動揺。
恐怖で顔が無駄に怖い事になっている。
吉澤「(そんな夏芭が恐怖で)…!」
一部始終を見ていた東北なまりの鍋山。
鍋山「(吉澤に)どぉーしたぁ!」
吉澤、鍋山を見て助けを求める。
鍋山「(いまいち分からなくて)?」
夏芭「あっち…」
吉澤「?」
夏芭「(示しながら)あっちに…いて…」
夏芭、必死に訴えようとするが言葉足らず。
鍋山「(夏芭に)あぁ?」
吉澤「…(と夏芭が示す方向を見る)」
夏芭と吉澤の前に田岐先生が現れる。
田岐先生「あのー」
田岐先生、夏芭が逃げた時に忘れた手提げバックを届けに来た。
吉澤「?」
夏芭「(振り返って)!」
夏芭、素早く吉澤を盾にして警戒。
思わず吉澤を掴む手に力が入る。ギュゥゥーー…と。
吉澤「イ、デーデーデーデー…! (と痛い。結構激痛)」
鍋山「! (と夏芭の反応を見て)…おぉーそわれたのかぁ!」
※訳すると『襲われたのか!』
吉澤「(へっ)!」
夏芭「(下を向いたままで)…」
鍋山「…(と決心する)」
鍋山、田岐先生を取り押さえに行く。
田岐先生「(近付いて来る鍋山に)?」
田岐先生、鍋山から殺気を感じて後ずさりする。
そして鍋山に容易く取り押さえられる。
田岐先生「!」
鍋山「(吉澤に)さつだ、さつ!」
吉澤「!」
鍋山「さつさ呼べぇっ」
※『さつ』とは警察の事。
○交番・内(夜)
田岐先生「……(座っている)」
夏芭、少し離れた所に座っている。
当事者の二人から話を聞いた警察官の武部。
武部「(田岐先生に)あんたも誤解されるような事しない(とだるそうに言う)」
田岐先生「…」
武部「緊急の時じゃないから良いけど、私らも暇じゃないんで」
夏芭・田岐先生「…」
武部「(夏芭と田岐先生に)気を付けて下さい」
夏芭「…」
夏芭、自分が酷く勘違いをしていた事を知る。
○同・外観(夜)
○コンビニ・前の道(夜)
夏芭、落ち着いて帰宅中。
少し離れたその前に田岐先生が歩いている。
コンビニからレジ袋を提げて麻美子が出て来る。
麻美子「(田岐先生に気付いて)…! (そばに寄って)タッキー」
田岐先生「(気付いて、お)!」
夏芭「(麻美子と田岐先生に)…(え)!」
麻美子「(田岐先生に)何してるんですか?」
田岐先生「…(とそれを言うのをためらう)」
麻美子「…(と返事を待つ。見ると夏芭がいて)…! 夏芭」
夏芭「…」
田岐先生「? (と二人が知り合いだと気付いて、えっ)!」
夏芭「…」
お互い共通の知り合いがいてびっくり。
麻美子「(二人に)?」




