(1)『上京1日目』
【登場人物】
鈴木 夏芭 (21) 和柄大好き女子、主人公
田岐 正吾先生 (36) 服飾専門学校の講師
森崎 麻美子 (21) 夏芭の友人、服飾専門学校の三年
広野 祐香 (19) 服飾専門学校の一年
磐田 尚哉 (24) 祐香の彼氏
倉戸 清治 (44) 和雑貨houseノ倉のオーナー
河井 沙苗 (38) 和雑貨houseノ倉の従業員
引っ越し業者の東と嶋田
道路整備の鍋山と吉澤
地域課交番勤務の武部、警察官A、B
磐田の友人たち(男三名、女一名)
祐香の友人の女子学生(二名)
男性 (西藤 友顕 (28))
○交番・外観(1月中旬・午前・11時過ぎ)
東京、町の交番。
○同・内(午前)
交番勤務の警察官の武部と警察官Aがデスクにいる。
武部「…」
入口外で颯爽と走り去る人物(夏芭)。
警察官A「? (と外を見る)」
武部「(気付かず)…」
○工事現場・前の歩道(午前)
鈴木夏芭(21) が荷物を一つ背負って、一つ抱えて走って通る。
和柄を好んでいるためリュックや身なりが和柄ものだらけ。
○アパート・前の道(午前)
古めの二階建てアパート。
アパート前の道路に引っ越し業者のトラックが停まっている。
○トラック・車内(午前)
運転席の東。助手席の嶋田。
東「…(喫煙中)」
嶋田「…(スマホをいじる)」
東「(時計を確認して)20分押し…。きっついなぁー…(渋い顔)。どういう奴だっ
け?」
嶋田「(見積書を見ながら)鈴木夏芭…(住所を見て)栃木から来るみたいですね」
東「…何歳?」
嶋田「(確認して)21」
東「(ふ~ん)…これで美人じゃなかったらどうする? (と煙草を吹かす)」
嶋田「…」
嶋田、見積書を置いて顔を上げると窓越しで夏芭が走って来るのが分かる。
嶋田「…あの人じゃないですか?」
東「え? (と見る)」
夏芭、息を切らしながら「これかな?」とトラックに近付く。
二人にペコッと会釈をする。
東、営業スマイルで煙草を携帯灰皿に入れながら会釈を返す。
嶋田も会釈を返す。
東「(ニコニコしながら)普通だな」
嶋田「僕は好みじゃないっスねー」
東、嶋田のおでこを軽く叩く。
嶋田「!」
東「(ばかっ)聞こえんだろっ」
と帽子を被って外に出る東。
○アパート・前の道(午前)
東、トラックから降りて来る。続いて嶋田も。
東「どうも、こんにちはー(と腰が低い)」
夏芭「すみません、お待たせして」
東「あーだいじょぶですよ。鈴木さんですね?」
夏芭「はい」
東「東京は初めてですか?」
夏芭「…(少し考えて)一人では…二、三度…です」
東・嶋田「…(なるほどと思う)」
東「まぁー。分かりにくいですもんねぇ」
夏芭「(申し訳なさそうで)…」
東・嶋田「…」
夏芭「…」
東「もう運びたいんですけど」
夏芭「(あっ)…どうぞ。お願いします」
東「あ、いやぁ…。お先に…不動産の方と、お部屋のチェックを…」
夏芭「…(えっ)」
夏芭、周囲を確認するがそれらしい人物はいない。
夏芭「不動産の方は…どこにいます?」
東「…」
嶋田「(部屋を示して)いると思いますよ」
夏芭「…! (と納得。二人に)行ってきます」
夏芭、二階の部屋へ行ってみる。
東・嶋田「…」
東と嶋田、荷物を運び出す準備に取り掛かる。
○同・外観(午前)
夏芭、恐る恐る二階の部屋に入る。
東と嶋田、トラック荷台の扉を開ける。
これを背景に(タイトル)T『夏芭の上京の状況』が出る。
○(タイトル)『夏芭の上京の状況』
○同・夏芭の部屋・居間(夜・19時頃)
夏芭「聞こえてる…。聞こえてますっ…」
とムスーとした顔で言う。
夏芭、愛用の和柄模様のグラスを片手に不機嫌。
グラスのチューハイ(アルコール3%)を一気に飲み干す!
つまみを口に掻き込む!
部屋は1DK。
ある程度片付けは済み壁に畳んだダンボールが立て掛けてある。
食料品などの買い出しも済みやっと一息ついているところ。
どどんっとおさがりのミシンが置いてある。
これから和柄の雑貨やアイテムを寄せ集めした部屋になりそうだ。
台所に森﨑麻美子(21) がいる。夏芭の高校からの友人。
今は服飾専門学校の学生、専攻科ファッションビジネスコースの三年。
麻美子、作った料理をテーブルに運ぶ。座る。
つまみがあったはずの皿を見る。
麻美子「(空の皿に)それ、まだ食べてなかったんだけど」
夏芭「…(まずいと思って)ごめん…つい…」
麻美子「…別に良いけど」
麻美子、缶ビールを開けてグラスに注ぐ。
それを見て夏芭も新しい缶チューハイを開ける。
麻美子「(えっ)…大丈夫? ペース早くない?」
夏芭「(グラスに注ぎながら)早い。でも今日は特別」
麻美子「…」
夏芭は既に酔っている。
麻美子は夏芭の話を聞きながら飲んで食べる。
夏芭「今日頑張ったもんっ…。止まって思い出したらなんかムカムカして来た。普
通とか好みでないとか。遅れた自分が悪いんだけど客に聞こえないように話して
よ。バリバリ聞こえちゃってるじゃん。いただきます(と料理を食べる)」
麻美子「(愚痴る夏芭に)…地獄耳」
夏芭「(それを聞いて)耳が良いのっ」
麻美子「(はいはい)」
夏芭「駅の中だけでも結構ウロウロしてたんだから。よくここまで辿り着いたよ」
偉い偉いと自分を褒める夏芭。
麻美子「…」
夏芭「(食べる)」
麻美子「…三月に、ショーあるんだけど観に来ない?」
夏芭「(モグモグ)…」
麻美子「二日間あるからどっちか行ける日に。今回の展示は、最後だから、やりた
い事詰め込んだ。やり過ぎぐらい。賞とかどうでも良いから」
夏芭「…」
麻美子「…行く?」
夏芭「…うん、行くよ(あっさり言う)」
麻美子「(お)!」
夏芭「前行った時面白かったもん。今回も行きたい」
麻美子「…学園祭(の事)?」
夏芭「うん。華やかで眩しかったけど(と食べる)」
麻美子「…もっと早く来れば良かったのに」
夏芭「(モグモグ)…」
麻美子「もっと早く来れば良かったのに」
夏芭「…交通費気になるんだもん」
麻美子「そんなに掛からないでしょ」
夏芭「…」
麻美子「…」
夏芭「…掛かるよ」
麻美子「…?」
夏芭「(ボソッと)エンジン…掛けるの…」
麻美子「? (と夏芭に)…」
夏芭、ゴクゴク飲む。
これが私のガソリンだ! とばかりに。
麻美子「(そんな夏芭に)…」
夏芭、一気に飲んでしまう。
缶に残っている分を注ごうとするが麻美子に取り上げられる。
夏芭「(あ)!」
麻美子「ちょっとあいだ、あけてからにしなさい」
夏芭「…」




