第8話 滅ぼされた神は間違えた
一瞬で。
全く抵抗すらできずに。
存在を抹消されたこの世界を作った神。
確かにポンコツ、しかし。
それは相手が“悪すぎ”という話だ。
だがそうはいってもこの世界を創造した超絶者。
彼はその瞬間に呪いを刻む。
そう。
彼女、魔王エリルギードは囚われた。
※※※※※
数千年前。
この世界ノーズイルドは彼によって創造された。
まだ若く未熟な星。
創造神、オゴルティ・レボーレルが神としての権利を得て初めて創造した世界。
神の摂理はよくわからない。
だが彼は、渾身の想いでこの世界を創造していた。
(…上手くいった…甘いだけの世界ではない…ちゃんと抵抗勢力も…)
彼が愛する弱くも愚かなヒューマン族。
そして抵抗勢力としていくつかの縛りを植え付けた魔族。
さらにはヒューマンの糧となるべく、いくつものギミックを彼は仕込んでいた。
そして数千年。
この惑星ノーズイルドは緩やかではあるが成長曲線を描き――
創造神オゴルティの思惑通り。
多くのドラマを内包しつつ成長を重ねていった。
神はほくそ笑む。
(…見たか。ワシとてもうこの程度の世界…完全にコントロールできる…くくく…)
だがその傲慢な想い。
打ち砕かれる。
※※※※※
およそ10年前。
それは突然産声を上げる。
異常なまでの摂理に反するすさまじい存在。
究極の魔王――エリルギード・ルデラ・イスガイヤ。
世界の思惑かはたまたさらに上位の神の悪戯か。
突然顕現した特異点。
神の想像をはるかに超えていた。
(なっ?…魔王…おかしい――我が創造したはずの抵抗勢力の筆頭…だが…)
当然だが魔王。
彼女ですら神の創造したもの。
甘いだけの世界では革新など起きない。
それを知っていた神は初めから魔王を組み込んでいた。
最悪の事態、万が一魔王が乱心したとき。
その時に御することのできる勇者と言うカウンターまでをもすでに用意していた神。
背中に嫌な汗がしたたり落ちる。
(馬鹿な…なんだこの力…あ、ありえん)
神の懸念。
だがそれはその力を同族である魔族に向けられていた。
悉く滅ぼされる魔族たち。
一気に変わる世界のバランス。
想定していない状況に、大きな出来事は起こっていないにもかかわらず。
神の精神は激しく削られていく。
管理者で絶対者、そして唯一神。
彼は許せなかった。
自分以外がこの世界、そのかじ取りをしてしまう事に。
(許せぬ…このままでは…)
※※※※※
理由は分からない。
摂理を超える力。
ただ確実にそれは存在してしまっていた。
日に日にその覚醒度合いは上昇していく。
すでに神の権能、まったく届かないほどに。
(…まずい…このままでは…)
そして神は――
本来素直で優しいはずの勇者。
それをとことん改造することを決意する。
(最終手段――正解だ…間違えるはずなどない)
彼の作った世界、ノーズイルド。
その歯車――狂い始めていた。
※※※※※
「あーすまん。これからは我がしっかり魔族は管理しよう。…許してくれるか?」
「う、うむ」
恐れおののいていた神。
彼は毒気を抜かれてしまう。
なぜか顕現した超絶の力を持つ魔王。
揉めていた魔族とヒューマン族。
それすらも小さく感じてしまうほどの脅威がなぜか可愛らしい笑みを浮かべ神を上目遣いで見つめていた。
「コホン。…魔王よ、つまりはもう戦争はしない…そういう事じゃな?」
「うむ。ヒューマンが居なくなってしまえば…困ること、多いであろう?」
理知的な返答。
実は魔王エリルギード。
食べるご飯、それが一番の懸念だったのだが…
その答えは、
その存在は既に――
神の権能を凌駕していた。
つまり。
神はここで間違える。
(御せる。…心配はいらない)
そう思えてしまうほど、魔王の発するオーラは穏やかな色に包まれていた。
そして10年。
神は最悪を選択してしまう。
あほな勇者。
だがいじりまくった御する事すらできない悪夢。
解き放つ――
世界は混乱に包まれた。




