第13話 起こった事件――魔王の日常、神の大誤算
魔王エリルギードが呪いを刻まれた日。
当然だが…正直本人にその自覚は無い。
「そういうものなのか?ふむ。興味深いな」
その程度の感想だった。
なにより。
あの日魔王エリルギードはアルデミスの国王に懇願され、王城へと転移したのだが。
そこで目にした勇者のあまりの非道。
魔王は取り敢えず声をかけた。
それが全ての始まりとは知らずに。
※※※※※
なぜか黒煙が湧く謁見の間。
そして酷い傷を負い、倒れ伏す多くの衛兵たち。
「…は?」
魔王の口からこぼれた第一声がそれだった。
「ま、魔王陛下!…ど、どうか…お助けを…」
血がしたたり落ちるお腹を押さえ、悶絶しつつも懇願する国王。
そしてそれの前で仁王立ちする、異常な魔力を噴き上げる一人の男性。
意味が分からない。
(えっ?何これ…あれって…ん?勇者?…えっと…)
『うわー。何アイツ…ひうっ?!ね、ねえ、エリ、あれ勇者…あんたの天敵…』
困惑する魔王に、語り掛ける、なぜか恐れおののく元魔王。
確かに目の前のあの男、かつての元魔王よりも強い。
でも。
(…勇者、ね。…“真実の眼”…ふうん。国王が召喚したんじゃないのね)
『あ、あんた!何呑気に…』
焦る元魔王。
そして吹き上がるおそらく勇者の超絶魔力。
「…ん?魔王?…くくく。…お前、俺の女になれ」
振り向き、何故か欲望に染まった瞳を向ける勇者。
あふれ出す異常な魔力、そして完全に壊れているであろうその精神。
魔王エリルギードはため息を吐く。
「…意味が分からぬ。キサマの女?…まずは状況を説明しろ」
「説明…はあっ?!てめえ、言葉判んねえのかよっ!!」
刹那――
魔王がいた場所が、激しい剣戟とともに吹き飛んだ。
「ばあーか。…くくく…いい女だからなああ――俺様の娼婦に…ひぎいっ?!!」
瞬間姿がぶれる勇者。
衝撃波とともに巻き上げられた土ぼこりが徐々に落ち着き、視界を取り戻す。
「く、かはっ」
「…もう一度聞く――状況を説明しろ」
小柄な魔王。
だがそのすらりとした細い腕の先――
ねじ切られそうに指が食い込む首、勇者は魔王の片手ですでに無力化されていた。
「は、はなせ…ぐうっ?!!」
「ふん」
投げ飛ばされる勇者。
つまらなそうに魔王エリルギードは国王に視線を投げる。
「王よ。説明を」
「は、はい…この男――勇者ゼイギルス――数年前に…我が愚かな弟が…召喚しておりました」
衝撃の事実。
この世界、勇者の役割はただ一つ。
魔王の殲滅。
それを知っている魔王エリルギードは、目を細め国の重鎮を睨み付ける。
「…10年だ」
「…え…」
「我は約束をし――ここ10年。…我ら魔族は貴様らを殺していない――そうだな?」
地球で死んで憑依した宮下恵理。
彼女が最初に行ったヒューマン族との和平。
それによりこの世界は確かに幸福に包まれていた。
しかし勇者召喚。
禁忌に触れる、それはまさに裏切り行為。
それを自覚した重鎮たちから、諦めのため息が漏れる。
「…我らは信用されるに至らないもの――そういう事か」
集約していく魔力。
震える謁見の間の大気。
(はあ。まったく…まあいいけど?…取り敢えず威圧、これは必須よね)
脳内とは違う、厳しい表情を浮かべる魔王。
刹那のタイミングで血反吐を吐きつつ、国王が魔王の前で土下座をした。
「す、すみませんでした…どうか、どうか――我が首ひとつで…民を、この国を」
さらには重鎮全てが王にならい土下座。
そのあまりの絵ずらに、魔王の怒りは霧散していく。
(うあ…大の大人が…私に土下座?…なんか――引くわー)
「…ふむ。…まあ良い。貴様らの本意でない事、我はすでに承知した――だが」
そう言い、次に魔王は勇者を視界にとらえ、真実の眼、それをさらに強度を増し発動する。
そして流れ来る、勇者と呼ばれる男のあまりの非道の数々。
魔王はブチギレた。
この男、勇者ゼイギルス。
数年前から突然狂い、多くの罪のなき民を欲望のために虐殺。
そして。
女性に対する乱暴に、年端のいかぬ子供たちまで…
魔王の倫理観、そして沸き上がる経験のない怒り。
「あほうが!消えろ!!」
「ひぐっ、ひぎゃあああああ―――― 」
凄まじい、だが集約され完全にコントロールされた超絶魔力。
まさに破壊の極致。
勇者は消し飛び。
謁見の間には、温かく――心癒される回復魔法に包まれた。
「ふむ。国王よ――貴様の首はいらん」
※※※※※
阿呆な勇者。
その罪過、魔王の超絶スキルで謁見の間にいる重鎮たちは共有していた。
えずく者。
歯を食いしばる者。
怒りに震え、わなわなと震える者。
その様子に、魔王は心の中で安堵していた。
(…ふう。この国…意外といい人たちなのよね…よかった…っ!?)
刹那――
謁見の間に、凄まじい聖気が迸る。
空間が裂け、虹色の光があふれ出す。
(っ!?…この気配――神か?)
ぬるりと顕現する、まさに神。
ヒューマンたちは、あっけにとられ立ち尽くす――
「…ぜじゃ…」
「…は?」
わなわなと震える神。
言葉にならぬ言葉――それを絞るように掃き出し、神は魔王を睨み付けた。
「なぜじゃ!!なぜ勇者を滅ぼした!!この魔王め!…許さぬ!!」
激昂し、極大の神気をたぎらせる神。
反射的にエリルギードは印を刻む。
(不味い!この星――吹き飛ぶ?!)
刹那――
魔王の渾身のビンタ。
神の顔を捉えたそれは――神の存在、そのモノを消し飛ばした。
「あっ…」
加減。
完全に間違えた魔王エリルギード。
(やばいやばい!神の権能、少しでも…『吸収』…)
彼女の脳内に怨嗟の声が響き渡る。
「おのれおのれおのれ!!この出鱈目魔王め――刻む、刻んでやる!!呪いを、この愚か者がああああああっっっ!!!」
静寂。
全てが終わった謁見の間。
「…えっと…もしかして」
ごくりとつばを飲み込む、国王をはじめとする重鎮たち。
「…なんかやっちゃいました?」
魔王の独白。
何とも言えない空気――
それに包まれ、まさにこの星は。
滅亡の危機に包まれた。
『…あんた出鱈目すぎ』
元魔王の言葉。
それをかみしめ、私は後悔に包まれていた。
(…呪い?………ひうっ?!)
そして始まる婚約者探し。
物語はついに始まったのだ。
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